M2M(Machine to Machine)とは?意味や仕組み、IoTとの違い、事例を紹介
M2M(Machine to Machine)とは?意味や仕組み、IoTとの違い、事例を紹介
近年、IoTと共に注目を集めているのがM2M(Machine to Machine)です。本記事では、M2Mの意味や仕組み、活用事例をわかりやすく紹介します。また、よく意味を間違えられるIoTとの違いについても紹介します。
目次
M2M(Machine to Machine)とは
それでは早速、M2Mの基本的な意味からM2Mが注目される理由、市場規模やIoTとの違いを紹介します。
M2Mの意味
M2Mとは、「エムツーエム」と読み、「Machine to Machine」の略称で、「人間を介在することなく、モノ同士が相互に情報のやり取りをする仕組み」のことです。
M2Mの特徴として、専用のネットワークだけに限らず、インターネットを介した接続をすることで、モノ同士のやりとりをすることもあります。
M2Mは、機械(モノ)同士が制御を行うため、高度な操作も可能になります。この技術を応用して、自動運転システムを実現したり、住宅の電力を自動制御したりと、あらゆる場面での活躍が期待されています。
M2Mが注目される2つの理由
M2Mの技術そのものは、2000年代よりも前から存在しますが、なぜ今注目が集まっているのでしょうか?その理由は、大きく分けると「①DXの流行」「②技術の向上」の2つです。
①DXの流行
日本のみならず世界中で、IT・ICT・IoT・AIなどの技術を用いたデジタルトランスフォーメーションが全産業で行われています。
その流れの中で、これまでうまく応用しきれていなかった技術にも注目が集まるようになりました。その一つがM2Mです。
②技術の向上
(1)センシング技術
センシング技術とは、センサーを使用して、物理的・化学的・生物学的な特性の量を検出して情報を取得し、付加価値の高い情報に変換する技術のことです。つまり、センサーを用いてさまざまな情報の計測と数値化をする技術のことです。
このセンシング技術が近年急速に向上し、小型で高性能な製品が安価に入手できるようになりました。
そして、センシング技術の向上が、M2Mの注目の一つの要因になりました。
(2)ICT(情報通信技術)
ICTとは、「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では、「情報通信技術」と訳されます。つまりICTとは、通信技術を活用したコミュニケーションを意味し、情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称です。
そして、ICTの中でも特に、携帯電話網・Wi-Fi・LPWAの技術の発達が、M2Mの注目の一つの要因になりました。
M2Mの市場規模
ここでは、注目されるM2Mの現在の市場規模や今後の市場規模予測を紹介します。
矢野経済研究所が2022年4月に『IoT/M2M市場に関する調査を実施(2022年)』の中で、日本国内のM2Mの市場規模を下記のように発表しています。
2016年に1,670億円だった市場規模が、2025年には2,910億円になる予測が立てられ、M2M市場は今後も拡大し続けると予測されています。
2016年度 1,670億円
2017年度 1,870億円
2018年度 2,010億円
2019年度 2,100億円
2020年度 2,130億円
2021年度 2,190億円(見込み)
2022年度 2,440億円(予測)
2023年度 2,610億円(予測)
2024年度 2,760億円(予測)
2025年度 2,910億円(予測)
(参考)IoT/M2M市場に関する調査を実施(2022年)|株式会社矢野経済研究所
M2MとIoTの違い
M2Mと似たような概念としてIoTがあります。
M2M(Machine to Machine)とよく混同される技術として、IoT(Internet of Things / モノのインターネット)があります。IoTとは、「アイオーティー」と読み、「Internet of Things」の略で、日本では「モノのインターネット」とも呼ばれています。もっとわかりやすくいうと、「これまでインターネットに繋がらなかったモノがインターネットに繋がるようになった」と解釈することができます。
M2MとIoTは、「役割」「データ活用」「デバイス」「ネットワーク」「連携」の5つのポイントで比較すると、下記のような違いがあります。
IoT(Internet of Things) | M2M(Machine to Machine) | |
---|---|---|
連携 | 人・モノ・コトの相互連携 | モノとモノの連携 |
ネットワーク | ・モノ同士に限らずすべてのデバイスが接続連携 | ・モノ同士がクローズドやオープンなネットワークを介してやりとり |
デバイス・センサー | ・膨大なデバイス数 ・高いスケーラビリティ |
・限られたデバイス数 ・増大は限定的 |
データ活用 | ・自社業務の枠を超えたデータ活用 | ・主に自社業務に特化したデータ活用 |
役割 | ・既存ビジネスのブレークスルー ・新たなイノベーションの創出 |
・特定業務の効率化、品質向上、安全管理 |
「IoT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
『IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組み、事例を解説』
M2Mの業界別の活用事例
これまでは、M2Mの意味やIoTのと違いなどを紹介してきましたが、ここでは、実際のM2Mの活用事例を業界別に紹介します。
【自動車】自動運転システム
M2Mの技術といえば、最初に挙げられるのが自動運転システムです。
自動運転システムの中で、車載レーダーやカメラなど路上の歩行者や障害物、先行車・後続車、対向車線など様々な情報を認識し、周囲の自動車と相互に通信し合うことで、適切な車間距離を保ったりする技術にM2Mが活用されています。
そのほかにも、信号機と通信することで決められた位置で停止したり、決められたタイミングで発車したりするという、AIの判断に基づいたハンドリングやアクセル、ブレーキなどの操作をすることにもM2M技術を活用しています。
この自動運転システムを社会実装するには、様々なレベルや段階を乗り越える必要があります。
JSAEが公表している『JASOテクニカルペーパ 自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義』によると、完全運転自動化には、下記のようなレベル区分があります。
レベル | 名称 | 運転主体 | 走行領域 |
---|---|---|---|
0 | 運転自動化なし | 人 | 適用外 |
1 | 運転者支援 | 人 | 限定的 |
2 | 部分的運転自動化 | 人 | 限定的 |
3 | 条件付運転自動化 | システム | 限定的 |
4 | 高度運転自動化 | システム | 限定的 |
5 | 完全運転自動化 | システム | 限定なし |
(参考)『JASOテクニカルペーパ 自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義』|JSAE(公益社団法人自動車技術会)
さらに、このM2Mが活用される自動運転システムの開発企業のランキングもNavigant Researchによって発表されています。
2020年 自動運転車リーダーボード ランキング
1位 Waymo
2位 Ford Autonomous Vehicles
3位 GM Cruise
4位 Baidu
5位 Intel-Mobileye
6位 Aptiv-Hyundai
7位 Volkswagen Group
8位 Yandex
9位 Zoox
10位 Daimler-Bosch
(参考)自動運転企業ランキング:トヨタは9位、1位は?米調査会社がトップ10発表|自動運転LAB
「スマートモビリティ」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートモビリティとは?意味や特徴、メリット、事例を紹介』
「スマートカー」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートカーとは?IoT自動車の仕組みや特徴、自動車との違いをわかりやすく解説』
【公共インフラ】バスの位置情報管理システム
私たちの生活に、身近なM2Mの活用事例といえば、バスの位置情報管理システムです。
NTTコミュニケーションズ社
M2M導入のプロフェッショナル企業であるNTTコミュニケーションズ社とバス・鉄道用機器の製造および販売を行うレシップ社の取り組みでは、GPSの搭載されたバスの位置情報を収集し停留所やスマホ・PCに、バスの到着予測時刻を提供しています。
(参考)Arcstar Universal One(導入事例:レシップ株式会社様) | NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま|エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
京成バス株式会社と株式会社YE DIGITAL
京成バス株式会社と株式会社YE DIGITALは、高速道路の遠方バス停での利用を検証するために「スマートバス停」を導入しました。この検証は、2023年8月から千葉県市川市の本八幡駅1番のりばで行われています。目的は、遠隔地のバス停から最新情報を提供し、バス事業者の負担を減らすことです。高速バスの利用者が増加している中で、遠方のバス停での情報提供に課題があったため、この試みが行われました。
検証の内容は、スマートバス停の実用性を確認することで、バス停の視認性向上と時刻表やお知らせの迅速な表示が含まれます。検証が成功すれば、今後、他の場所にも導入が検討される予定です。検証は、2023年8月から約3カ月間、本八幡駅1番のりばで行われ、スマートバス停は省エネで視認性の高い楽々モデル Type-Dを使用しています。
株式会社YE DIGITALは、ビジネスソリューションとIoTソリューションなどを提供しており、このプロジェクトを支援しています。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
『【京成バス】スマートバス停の実用性検証を開始〜高速道路の遠方バス停での活用を確認へ〜』
【電力・家電・不動産】住宅の電力自動制御
現在は、まだ住宅の全てに導入されている技術ではないですが、今後急速に導入されることが期待されているのが、住宅の電力自動制御です。
住宅の電力自動制御をすることのメリットは、電力や使用している電気量が目視できることと、無駄になっている電気を自動で止めたり、電気を効率的に使用してくれるところです。
この住宅の電力自動制御システムがあることで、CO2の余分な排出を抑え、SDGsな暮らしが実現すると期待されています。
Panasonic社の提供するHEMS(Home Energy Management System)が、一つの例です。このHEMSは、エネルギーを見える化するだけでなく、家電、電気設備を最適に制御するための管理システムです。
(参考)HEMS(ヘムス)って何?|パナソニック株式会社
「スマートハウス」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートハウスとは?有する設備やメリット・デメリットを解説』
「IoT住宅」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoT住宅とは?メリット・デメリットやスマートハウスとの違いについて解説』
農作物の自動監視システム
M2Mを活用した農作物の自動監視システムでは、センサーが土壌の湿度、温度、光量などの情報を収集し、それを基に灌水や施肥の自動制御を行います。また、異常な状態が検出された場合には、農家に自動的に通知が送られます。
「IoT・ICTを活用した農業」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoT・ICTを活用した農業のメリットや課題、導入事例をわかりやすく解説』
「スマート農業・農業DX」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【スマート農業】DX化の進む農業でのIoTの活用事例や製品を紹介』
「農業でのカメラ活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【農業】AIカメラ・クラウドカメラ・IoTカメラの活用事例4選』
太陽光発電監視システム
M2M技術を利用した太陽光発電監視システムでは、太陽光パネルの発電状況や異常をリアルタイムで監視することができます。センサーやモニタリングシステムがパネルの発電量や効率をモニタリングし、必要に応じて保守や修理の予定を立てることができます。
「太陽光発電所でのIoT/M2Mの活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『太陽光発電所でのIoT/M2Mの活用事例とおすすめSIMを一挙紹介』
デジタルサイネージ
M2M技術を活用したデジタルサイネージでは、広告や情報を効果的に配信することが可能です。センサーやカメラを使用して、周囲の状況や視聴者の属性を把握し、それに応じた広告の表示やコンテンツの変更を行います。
デジタルサイネージに特化したSIMをお探しの方は、こちらからIoTBizが提供する「デジタルサイネージ専用のSIMプラン」に関する案内資料をご覧いただけます。
『【SIMプラン】デジタルサイネージ』
駐車場管理
M2M技術を駐車場管理に活用すると、駐車スペースの空き状況をリアルタイムで監視することができます。センサーが車両の駐車・離脱を検知し、その情報をサーバーに送信することで、ドライバーは空きスペースを素早く見つけることができます。
「スマートパーキング」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『駐車場の新しい形スマートパーキングの仕組み・必要性・メリット』
その他のM2M活用事例
上記で紹介した事例のみならず、様々な場所でM2Mは活用されています。その他の活用事例を下記にまとめています。
クレジットカードの決済端末
M2Mを利用することで、クレジットカードの決済端末がネットワークに接続され、支払い情報をリアルタイムで処理することができます。これにより、支払いの迅速化やエラーの削減が可能になります。
エレベーターの遠隔監視
M2M技術を利用して、エレベーターの遠隔監視システムを構築することができます。エレベーターが異常な振動や故障の兆候を示した場合、監視センターに自動的に警告が送られ、適切な対応が行われます。
踏切監視
M2M技術を用いた踏切監視では、踏切の状態を監視し、列車の接近時に自動的に警報を発することができます。センサーやカメラが列車の接近を検知し、その情報を踏切制御装置に送信することで、交通安全を向上させます。
これらはM2M技術を活用した一般的な事例の一部です。M2Mは様々な業界で利用されており、IoT(Internet of Things)とも関連しています。
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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