スマートカーとは?IoT自動車の仕組みや特徴、自動車との違いをわかりやすく解説
スマートカーとは?IoT自動車の仕組みや特徴、自動車との違いをわかりやすく解説
注目を集めているスマートカーについて、その仕組みや技術、機能について分かりやすくご紹介します。また、なぜスマートカーが注目されているのかについても、市場の動向やマーケットの規模に基づいて解説します。従来の自動車との大きな違いだけでなく、技術的な側面だけでなく、社会的な役割や変化するリスクについても言及いたします。
目次
スマートカーとは
「スマート◯◯」というカテゴリーの機器や装置が、主にスマートフォンを代表として増加しています。音声指示によって音楽再生や家電制御を担当するのが「スマートスピーカー」であり、Amazon EchoやGoogle Homeなどが一般的な例です。同様に、「スマートウォッチ」もApple Watchなどを通じて普及が進んでいます。こうしたプロダクトはAIとIoTを結びつけたものであり、「スマート◯◯」として知られています。
その中でも、「スマートカー」は自動車に関連する概念であり、スマート(smart)は賢明で洗練されたデザインや外観を指します。そのため、多くのスタイリッシュなデザインのスマートカーが存在します。スマートカーへの関心の高まりは、デザインだけでなく、市場の大きな規模にも起因しています。
スマートカーと類似する「スマートモビリティ」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートモビリティとは?意味やメリット、事例を紹介』
スマートカーの市場動向
スマートカー自体は次世代の自動車の包括的な概念です。もう少し絞ってV2X通信機能と自動運転システム(レベル4:高度運転自動化)を搭載したEV(Electric Vehicle)をスマートカーとしてマーケットを見てみます。
V2XとはVehicle to X、車両とX(自動車、歩行者、インフラなど)との相互連携の総称です。
(参考)スマートカー世界市場に関する調査を実施(2020年)|矢野経済研究所
スマートカーの世界の市場動向
新しい分野の市場なので、市場調査会社や政府の各種委員会でもマーケットサイズの予想数値に開きがあります。
積極的な予測では2035年に1,141万台(出典:矢野経済研究所調査)、慎重な予測では148万台の世界生産台数をみています。
このような大きな隔たりが出てくる背景は、MaaS(Mobility as a Service)と言う、人や物の移動についての単位(トリップ単位)の扱い方が従来と異なるためです。移動ニーズを捉える考え方に、新しい動きが出て来ました。
今までのように個人所有車の自動車の生産台数や販売台数を見ていればマーケットの動きがわかった時代は終わりました。社会的所有車(カーシェア)なども加味して市場動向を考えなければならない時代に入りました。
MaaSサービスによるトリップ単位が変化した場合、スマートカーの生産や販売に大きな増減が出ます。
そのため先進国、新興国、途上国のMaaS普及度合いによって、市場予測値に8倍近い開きがでてくるのです
(参考)MaaS とは|国土交通省
スマートカーの日本の市場動向
2021年四輪自動車の世界の販売台数(出典:日本自動車工業会)は8,268万台、日本では445万台でした。
近い将来の世界的予測としては、2031年が成長のピークで約9,650万台、その後9,550万台前後で低下していくとの予測もあります(『自動車産業2040』日経BP)。
経済産業省は「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%」と言う目標を出しています。
2035年の電動車はスマートカーとみて間違いないと考えられますので、2021年と同等の販売数と考えても400万台以上のマーケットとなります。
スマートカーの平均単価を330万円と見積もっても14兆6,850円の市場です。
(参考)供給不足のクルマに値上げの波 国産普通車、平均価格が330万円超え|日経ビジネス
スマートカーの仕組み
スマートカーを人間の機能や仕組みと比較して解説してゆきましょう。
人間の代表的な感覚には5つあります。この五感による知覚の割合は、視覚83.0%聴覚11.0%嗅覚3.5%触覚1.5%味覚は1.0%と言われています。
また五感には活用できる優先順位があります。
触覚>聴覚>視覚>嗅覚>味覚、です。
スマートカーの目と耳がIoTデバイス
将来はまだわかりませんが嗅覚と味覚は当面スマートカーに実装予定はありません。他の3つの感覚をIoTデバイスでデータ収集します。
路面情報は重要な触覚情報として処理されます。視覚・聴覚情報の収集は、高解像度カメラやミリ波レーダー、超音波センサーを用います。車間・障害物の有無を検知しIoTデバイスが自分の位置情報を正確に特定します。多くの場合、通信衛星の力も借りて3次元的に処理されます。
スマートカーの心臓はアクチュエーター(駆動装置)
スマートカーが走るためには、モーターやエンジン(水素エンジン)の駆動系と操舵輪、ブレーキなど制御系のアクチュエーターが必須です。これらもIoTシステムで制御、データ収集が行われます。
電気モーターには、内燃機関エンジンにはマネできない大きなメリットがあります。
その一つがケタ違いのトルク応答です。スタートダッシュをジェット機と競走する動画を見たことがあるかもしれません。
このパワーをコントロールするのがIoT化モーターです。
そして分散配置です。内燃機関エンジンを複数以上搭載するのは非現実的ですが、モーターは各車輪に配置が可能です。ただし4輪を正確に制御できなければ、真っすぐ進むことすらできません。これを支えるのがIoTとAIです。
スマートカーの頭脳はAI
さて、最も大切な部分がAIです。
IoTデバイスからのデータを高精度に高速で処理するのがAIです。インターネット上の渋滞情報などのデータ以外にも、スマートカーが独自収集するローカルデータの機械学習の実現によってエッジコンピューティングを可能にします。これらの処理によって各種の予測実行を実施します。
実際に走行するスマートカーでは、多くのノイズやイレギュラーデータのスクリーニング(ふるい分け)をしなければなりません。閾(しきい)値の設定もAIが状況判断して最適化する必要があります。
例えば、舗装道路と雪道、ドライ路面とウェット路面の駆動力係数の閾値などです。
これまでの自動車とスマートカーの違い
自動車の歴史〜蒸気・電気・ガソリン
自動車の進歩の歴史は他の論稿に譲るとして、注目したいのは駆動エネルギーの活用の順番です。
水(水蒸気)→電気(蓄電)→石油(ガソリン、軽油)→電気(発電と充電)→水(水素)
これらのエネルギー源は自然界の埋蔵量にも関係しています。自動車の歴史はエネルギーの変遷そのものです。
(参考)世界のクルマの進化と文化をたどる博物館|トヨタ博物館
これまでの自動車とスマートカーの違い
スマートカーは化石燃料に対する依存度がこれまでの自動車に比べて低いのが特徴です。
エネルギーの生成も太陽光やバイオ発電、水素など多岐に渡っており化石燃料の使用割合を低くできます。特にCO2の発生率はガソリン自動車に比べて圧倒的な優位性を持っています。
持続可能な社会の形成に親和性のあるのがスマートカーの大きなメリットです。
また、これまでの自動車は単独で走行することが前提でしたが、スマートカーは「コネクテッドカー」としてネットワークの一部として機能しています。
(参考)総務省|平成27年版情報通信白書|コネクテッドカー
スマートモビリティの土台となるスマートカー
スマートモビリティとは「トリップ単位」を変える新たなテクノロジーの総称です。自動運転車システム、IoTを使ったセンサー、MaaSなどもこれに含まれ、いずれも人や物の移動を「スマート」にしてくれるものです。
この土台となるのがスマートカーです。移動手段(自家用車やバス・電車、船舶、航空機など)が単独で機能するのではなく、連携しながら共同で機能することが従来の自動車と全く違う点です。
(参考)スマートモビリティチャレンジ|経済産業省・国土交通省
まとめ
スマートカーのもたらす社会はスマートモビリティと言う新しいシステムを持つ近未来です。
ビジネス的には、AIとIoTに支えられた巨大なマーケットの出現です。
従来のような交通事故が個人責任を中心にその責を問われた時代から、製造物責任と社会システムの不具合にリスクも移行する時代になります。
ますます企業の社会的責任が問われ、行政や立法府の責務も重くなる社会です。
そのためにスマートカーを利用するユーザーもその仕組みや市場動向をよく知ることが重要になります。
ドライバーは自動車の運転から、新しい社会の運転者になる必要があります。
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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