IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組み、事例を解説
IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組み、事例を解説
IoT(Internet of Things / アイオーティー / モノのインターネット)は、私たちの生活にも浸透し始めているスマートスピーカーやスマートウォッチなどの技術です。最近では、ビジネスシーンだけでなく、一般生活でも頻繁にIoTという言葉を耳にすることが増えました。しかし、IoTについて詳しく説明できる人はまだ少ないのではないでしょうか? この記事では、IoTの意味や仕組み、そして私たちの生活がどのようにIoTによって変わるのかについて詳しく解説します。近年、注目を集めるIoTについて知識を深めましょう。
目次
IoT(Internet of Things / アイオーティー / モノのインターネット)とは
IoTの意味や注目される背景について紹介します。
IoTの意味
IoT(アイオーティー)は、「Internet of Things」の略であり、「モノのインターネット」とも呼ばれます。簡単に言えば、これまでインターネットに接続されなかった物体がインターネットに接続されるようになったということです。現在、眼鏡や時計、自動車などのさまざまなモノがインターネットに接続され、私たちの生活を便利にしています。
IoTが注目される理由と背景
では、なぜIoTがこれほど注目を集めているのでしょうか?「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに接続できる「ユビキタスネットワーク社会」の概念は、2000年代の初めから提唱されてきました。日本では、2004年5月に総務省が発表した「u-Japan政策」により、この考え方が広まりました。
(参考)u-Japan政策|総務省
しかし、当時はまだIoTを構成する要素である「デバイス」「センサー」「ネットワーク」「クラウド」などが現在ほど普及していませんでした。そのため、当時の技術では「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに接続できる「ユビキタスネットワーク社会」を構築することは困難でした。
現在では、IoTを支える5GやLPWA、Wi-Fi6、AI、ビッグデータ、エッジコンピューティングなど、さまざまな要素技術の急速な進歩とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、これまでインターネットに接続されていなかったモノがインターネットに接続される社会の実現が近年急速に進んでいます。
「DX」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や定義、事例をわかりやすく簡単に解説!』
(参考)ユビキタスからIoTへ|総務省
IoTの市場規模
IoTの日本の市場規模
IDC Japanが2022年4月に公開した『国内IoT市場 産業分野別 テクノロジー別予測、2022年~2026年』のレポートによると、2021年の実績では、国内IoT市場のユーザー支出額は5兆8,948億円であり、2021年から2026年までの年間平均成長率(CAGR)が9.1%で成長し、2026年には9兆1,181億円に達するとIDCは予測しています。
2021年(見込み値):5兆8,948億円
2025年(予測):9兆1,181億円
(出典)国内IoT市場の産業分野別/テクノロジー別市場予測を発表|IDC Japan
IoTの世界の市場規模
2019年に米IDCが行った調査によれば、IoTに対する世界の総支出額は、2019年に7450億ドル(日本円に換算すると、約85兆円)に達する見通しだと発表されています。また、2018年の支出額6460億ドルを15.4%上回り、2017年~2022年の予測期間中、全世界のIoT支出額は2桁の成長率を維持するとみられております。
そして、来たる2022年には1兆ドル(日本円に換算すると、約115兆円)の大台に乗ると予測しています。
2019年:7450億ドル(日本円に換算すると、約85兆円)
2022年:1兆ドル(日本円に換算すると、約115兆円)
(参照)Worldwide Internet of Things Spending Guide|IDC
IoTとM2Mとの関係性や違い
IoT(Internet of Things / モノのインターネット)とよく混同される技術として、M2M(Machine to Machine)があります。M2Mとは、ネットワークに接続されたモノとモノ同士が直接通信を行い、データの送受信や機器の自動制御などを行う技術のことです。
「役割」「データ活用」「デバイス」「ネットワーク」「連携」の5つのポイントで比較すると、下記のような違いがあります。
IoT Internet of Things |
M2M Machine to Machine |
|
---|---|---|
連携 | 人・モノ・コトの相互連携 | モノとモノの連携 |
連携 | 人・モノ・コトの相互連携 | モノとモノの連携 |
ネットワーク | ・クローズドな独自ネットワーク ・オープンなインターネット |
・クローズドな独自ネットワーク |
デバイス・センサー | ・膨大なデバイス数 ・高いスケーラビリティ |
・限られたデバイス数 ・増大は限定的 |
データ活用 | 自社業務の枠を超えたデータ活用 | 主に自社業務に特化したデータ活用 |
役割 | ・既存ビジネスのブレークスルー ・新たなイノベーションの創出 |
・特定業務の効率化、品質向上、安全管理 |
「M2M」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『M2M(Machine to Machine)とは?意味や仕組み、IoTとの違い、事例を簡単に紹介!』
IoTの3つの機能
IoTは、基本的に3つの機能で構成されています。以下にそれぞれの機能を説明します。
(1)情報の収集・転送
センサーやデバイスに搭載されたセンサーから情報を収集し、インターネットを介してクラウドに転送します。
(2)情報の蓄積
収集されたデータはクラウド上でビッグデータとして蓄積されます。
(3)情報の分析・活用
蓄積されたデータはAIによって分析され、その結果に基づいてモノにフィードバックされ、活用されます。
IoTを支える4つの技術要素
IoTの3つの機能を実現するために、重要な4つの技術要素が存在します。以下では、「モノ(デバイス)」「センサー」「ネットワーク(通信手段)」「アプリケーション(情報処理)」がどのような役割を果たすのか説明します。
(1)モノ(デバイス)
最初に挙げるのは「モノ(デバイス)」です。
ここでの「モノ」とは、さまざまな物体を指します。例えば、スマートフォンや時計、メガネ、洋服などの身近なものから、家庭用電化製品やパソコン、自動車なども含まれます。また、工場の機械や装置、産業機器なども対象となります。
(2)センサー
次に「センサー」です。
センサーは、モノとその周囲の状態を検知し、データを収集するために重要です。
センサーにはさまざまな種類があり、物体の形状や位置を検知するものや光や音を感知するもの、温度や湿度を計測するものなどがあります。IoTでは、「モノ」と「センサー」を組み合わせることで、さまざまなデータを取得できます。
(3)ネットワーク(通信手段)
3つ目は「ネットワーク(通信手段)」です。
モノに搭載されたセンサーが収集した情報をパソコンなどの端末に送信するための通信手段です。
現在では、Wi-FiやBluetoothをはじめとしたさまざまな通信手段があります。通信手段はデータの重さや送信速度、距離に応じて選択されます。
(4)アプリケーション(情報処理)
最後に「アプリケーション(情報処理)」です。
ネットワークを介して端末に送られる情報は、暗号化されている場合や大量のデータである場合があります。そのため、データの抽出、整理、分析、最適化などの処理が必要となります。
ここでAIが活躍します。AIは人間が気づかなかったデータ間の関係性を解析し、予測や最適化を行うことができます。
IoTを支えるその他の要素技術
IoTを支える要素技術は多岐にわたり、上記で述べた4つの要素技術だけではなく、様々な要素技術がIoTを支えています。ここでは、その様々な要素技術を紹介します。
IoTを支える通信方式「5G(第5世代移動通信システム)」
IoTを支える通信方式の5G(第5世代移動通信システム)とは、移動通信システムの一種で、2022年現在、最新の移動通信システムのことです。第5世代というのは、これまでの移動通信システムの中で第5世代目にあたる最新のバージョンということです。
5G(第5世代移動通信システム)の特徴は、「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」の3つです。
「5G」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『5Gとは?5G(第5世代移動通信システム)の特徴や仕組みをわかりやすく解説!』
IoTに欠かせない低消費電力で長距離通信を可能にする「LPWA」
IoTに欠かせない低消費電力で長距離通信を可能にするLPWAとは、LPWA(LPWAN)とは、「エルピーダブリューエー(エルピーダブリューエーエヌ)」と読み、「Low Power Wide Area(Low Power Wide Area Network)」の略で、低消費電力で遠距離通信を実現するデータ通信方式または無線通信技術のことです。
LPWA(LPWAN)の特徴は、「広範囲・遠距離通信」「低消費電力」「低速度」「低コスト」「複数デバイスの同時接続性」です。
「LPWA」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『LPWA(LPWAN)とは?IoTに最適な通信方式LPWA(LPWAN)の特徴や種類、周波数、メリット・デメリットを紹介』
IoT時代に適したWi-Fi規格「Wi-Fi 6」
IoT時代に適したWi-Fi規格Wi-Fi 6は、「wifi6」「WI-FI6」「11ax」などと表現されることがありますが、正式には「Wi-Fi 6」または「IEEE 802.11ax」と表記します。
Wi-Fi 6の特徴は、「Wi-Fi 5と比べて、約1.4倍の高速通信」「混信が起きにくく、複数通信に強い」「消費電力が低く、バッテリーが長持ち」です。
「Wi-Fi 6」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『Wi-Fi 6とは?次世代Wi-Fi規格の特徴やメリット、対応ルーター・スマホ・PCを紹介!』
次世代コンピューティングシステム「エッジコンピューティング」
次世代コンピューティングシステムであるエッジコンピューティングとは、スマホやタブレットをはじめとするIoTデバイスとその利用者の近くに分散設置されたサーバーでデータの処理や分析をおこなうコンピューティングモデルのことです。
このコンピューティングの処理のことを「エッジ処理」とも呼び、インターネットに接続されているIoTデバイスをクラウド上にデータ送信せずに、リアルタイムに処理することができるため、IoT時代に重要となる通信遅延やシステムへの負担が軽減される技術として注目を集めています。
「エッジコンピューティング」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『エッジコンピューティングとは?意味や仕組み、メリット、課題を徹底的に紹介!』
IoT活用に必須「IoTプラットフォーム」
IoT活用に必須のIoTプラットフォームとは、IoT(モノのインターネット)サービスを提供する上で欠かせない機能を様々な形で提供するサービスの総称です。また、IoTプラットフォームは、IoTを活用する上で、必要な機能を一つにまとめて、システムとして提供するサービス基盤、とも解釈されます。
例えば、これまで膨大な時間と人手が必要だった、ハードウェア・ソフトウェアの設定からライブラリやデータベースの構築、データ解析、さらには、人工知能、機械学習などの機能をIoTプラットフォーム上で簡単に行うことができます。
「IoTプラットフォーム」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoTプラットフォームとは?意味や機能、メリット・デメリット、解決できる課題、導入時のベンダーの選び方や比較ポイントを徹底解説』
様々な業界のIoT活用事例
ここでは、様々な業界でのIoT活用事例を紹介します。
農業
農業分野では、スマート農業という文脈でIoTの導入が盛んに行われています。その中でも有名なのが「ドローン農薬散布」です。
ドローン農薬散布
農薬散布用のDJI Agras MG-1は、液体の農薬、肥料および除草剤の様々な散布を高精度に適正な割合で行うために設計されたオクトコプターで、農業分野において効率性と管理等力がさらに向上します。
(参考)DJI Agras MG-1 -「日本の農業を変えるドローン」|DJI JAPAN
「スマート農業」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【スマート農業】DX化の進む農業でのIoT/M2Mの活用事例や製品を一挙紹介!』
漁業
漁業分野では、スマート漁業という文脈でIoTの導入が盛んに行われています。その中でも有名なのが「海洋ブイ(IoT)」です。
海洋ブイ(IoT)
北海道奥尻町では、磯舟漁業者の高齢化に伴い、後継者の確保と早期育成が急務の課題となっていました。この課題を解決するため「ベテラン漁師の勘と経験の可視化」として、IoT活用を行なっています。「潮の流れの向きや速さ」「水温」などといった海洋環境に関するデータを、海洋ブイ(IoT)から収集し、クラウドにてビッグデータ化し、AIを活用することで、ベテラン漁師の勘と経験の可視化を行なっています。また、その可視化されたデータをもとに、後継者や若者への教育に活用しています。
(参考)漁業におけるIoT活用事例紹介|総務省動画チャンネル
「スマート漁業」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【スマート漁業】DX化の進む水産業・漁業でのIoT/M2Mの活用事例や製品を一挙紹介!』
製造業
製造業分野では、スマートファクトリーという文脈でIoTの導入が盛んに行われています。その中でも有名なのが「自動運転フォークリフト」です。
自動運転フォークリフト
花王株式会社は、スキンケアやヘルスケア製品を中心に生産する豊橋工場を生産・物流機能一体型サプライチェーン拠点(「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」)へと変革すると2022年3月3日に公表し、自動運転フォークリフト実証事業と連携して積卸し作業の自動化・無人化を行なっています。
(参考)豊橋工場に柔軟で効率的な生産体制と新たな物流モデルを構築|PRTIMES
「スマートファクトリー」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
『スマートファクトリーとは?製造DXでのスマートファクトリーの意味やメリット、課題やIoT/M2Mの活用事例を紹介します!』
小売業・流通業
小売業・流通業分野で現在急激に進んでいる、IoT導入の事例といえば、「無人レジ」や「警備ロボット(セキュリティのDX化)」が有名です。
無人レジ
米国では、Amazonが無人店舗の展開をはじめ、日本のコンビニエンスストアでも、セブンイレブンやファミリーマートが無人レジの導入を進めています。
これまで、店舗で買い物をする際には、必ず店員がレジで商品の「読み取り」「精算」「袋詰め」といった一連の作業を行なっていましたが、この無人レジでは、その一連の作業を消費者が行えるようにした仕組みのことです。
この無人レジを活用することで、下記3つのメリットがあります。
①人件費の削減と人手不足を解消
②感染拡大の防止
③店舗スタッフの定着率向上
警備ロボット
商業施設や店舗などで活躍するのが警備ロボットです。これまで、大型の商業施設などでは、警備のためにたくさんの人の警備員を長時間配備する必要がありました。しかし、この警備ロボットは、電力があれば、24時間365日警備業務にあたることが可能です。
この警備ロボットを導入することで、下記3つのメリットがあります。
①人件費の削減と人手不足を解消
②警備員の負担軽減
③警備の質向上
「小売業・流通業のIoT活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【小売業・流通業IoT】DX化の進む小売業・流通業でのIoT/M2Mの活用事例や製品を一挙紹介!』
物流業
物流業分野で急激に進んでいるIoT導入の事例といえば、「自律自走ロボット(ピッキングロボット)」が有名です。
自律自走ロボット(ピッキングロボット)
世界中で物流革命を起こした第一人者のAmazonは、物流倉庫での単純なピッキング作業をロボット化しています。インターネットショッピングの先駆者でもあるAmazonでは、注文日の翌日配送をはじめとする最速での配達を実現するために、自律走行ロボット(ピッキングロボット)が自動的に商品を載せた棚を棚だしエリアに運び人に渡すという業務を行なっています。
(参考)アマゾン茨木FCの「Amazon Robotics」で自律走行ロボットが棚を載せて棚だしエリア運んでくる様子|GIGAZINE(ギガジン)
「スマートロジスティクス」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートロジスティクス(スマート物流)とは?意味や定義、メリット、活用事例を紹介』
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。
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