5Gが加速するIoTの進化|生み出される効果や課題、活用事例を紹介
5Gが加速するIoTの進化|生み出される効果や課題、活用事例を紹介
5Gの本格的な普及により、生活の利便性や効率性が向上し、より快適な暮らしを期待できます。本記事では、5Gの概要や効果について解説し、さらに、5GとIoTの連携による具体的な活用例とその課題についてご紹介します。5GとIoTの組み合わせがもたらす可能性について、ぜひ参考にしてみてください。
目次
これからの社会を作る技術「IoT」と「5G」の基礎知識
まずは、IoTや5Gの概要についてご紹介します。どちらも名前は聞いたことがあるけれど、詳しいことは知らない方もいるかと思うので参考にしてみてください。
「IoT」とはインターネットを利用した、モノと通信する仕組み
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、さまざまな「モノ」をインターネットに接続することを指します。モノから発信されるデータを収集、蓄積して分析し、生産性や利便性の向上に活用できるところが大きな特徴です。
例えば、室内の電気を消し忘れたときにスマートフォンからの操作で消灯できるのもIoTを活用した事例の一つです。
4GやBluetoothなどの通信技術が発達し、さまざまなモノとの接続が可能になりました。しかし、「モノ」から発信されるデータの獲得、活用までは至らなかった背景があります。
人々の暮らしやビジネス活動の発展につながることから、デバイスからインターネット経由で情報を得る動きがIoTにつながりました。
「IoT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組み、事例を解説』
「5G」とは電波の第5世代目の通信規格を指す
5Gとは、第5世代移動通信システム(5th Generation)の略称です。5Gは次世代の通信規格と言われており、今まで以上に快適なインターネット環境を実現できるところが特徴です。
通信規格は、下記のように進化を遂げてきました。
2G | 3G | 3.5G | 4G | 5G | |
---|---|---|---|---|---|
最大通信速度 | 9,600bps | 64~384kbps | 3.6~14Mbps | 110Mbps~ 約1Gbps | 10Gbps |
主な用途 | パソコンに接続をして外出先からメールを送る | 文字ベースでのホームページの閲覧ができる | 画像を含むホー ムページ・動画の閲覧ができる | ホームページ・動画だけでなくライブ配信ができる | 多数同時接続・IoTの活用ができる |
(参考)総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」
通信規格が変化した背景には、スマートフォンやインターネットの普及があります。多くの人が快適にスマートフォンや動画を楽しむには、より高速な通信速度と大容量の送受信の実現が欠かせません。
総務省の『第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望』の公表によると、通信規格の変化に伴い、最大通信速度は30年間で約10万倍となりました。5Gでは最大通信速度は10Gbpsと高速化し、一度に複数の機器をインターネット接続ができます。その結果、IoTの普及や活用を後押しすると期待されています。
「5G」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『5G(第5世代移動通信システム)とは?特徴や仕組み、事例をわかりやすく解説』
「5G」の3つの特徴をおさえよう
5Gの概要が把握できたところで、気になるのは具体的な特徴です。5Gには、3つの大きな特徴があります。
特徴 | 内容 | |
---|---|---|
1 | データを高速で送受信できる | ・最大速度10Gbps ・2時間の動画を3秒でダウンロードができる |
2 | 信頼性が高くタイムラグを最小限に抑えられる | ・通信の遅延が限りなく小さいためゲームや遠隔操作のタイムラグを極限まで減らせる ・安定した接続ができ信頼性が高い |
3 | より多くのデバイスを同時に通信できる | ・約100万台/1km²の同時接続ができる ・家電製品や管理システムなどさまざまな機器をインターネット接続できIoTの活用を促進できる |
5Gは28Ghzなどの高い周波数帯を利用することで、通信速度と通信容量を向上させています。ただ速いだけでなく、タイムラグが少なく信頼性が高い特徴があります。4Gと比較するとタイムラグは1/10に抑えることが可能です。
また、一度に複数のデバイスと同時通信ができるため、目的に応じてIoTの活用を促進できます。
5Gの弱点を補う「ローカル5G」
通常の5Gは、通信キャリアが構築しているネットワークです。利用エリアは拡大しているものの、ネットワークの設備が整い5Gに接続できる環境下でしか利用できません。
この弱点を補うのが「ローカル5G」と呼ばれるネットワークです。企業や自治体などが通信キャリアに依存せずに独自の5Gネットワークを構築し、データの送受信を行うことを指します。「プライベート5G」と呼ばれることもあります。
ローカル5Gは外部環境に左右されず、安定した利用ができるところが大きな魅力です。また、外部のネットワークから遮断された独自のネットワークとなるので、セキュリティを強化できる側面もあります。
5GというインフラがIoT機器の進化を加速させる
先ほど述べたように、5Gは通信速度や通信容量が向上しているため、タイムラグを抑えながら複数の機器と接続できます。
そのため、IoT機器の進化を促進します。例えば、下記のようなシーンでの活用が期待できるでしょう。
・事故の予防やドライバーの負担軽減につながる自動運転
・タイムラグの少なさを活かした遠隔医療
・VRやARを活用した商品開発やサービス展開
・エネルギー循環につながるスマートハウスの実現
これらのIoTは、安定したインターネット接続や高速通信ができるからこそ実現します。5Gならではの特徴は、IoTの進化に欠かせないポイントとなっています。
「5G×IoT」が生み出す効果・メリットは主に3つ
5GとIoTの連携により、どのような効果が引き出されるのでしょうか?ここでは3つの効果・メリットを解説します。
効果1. IoTから得られる大量のデータ通信を可能にする
5Gは高速でデータの送受信ができるため、IoTから得られる情報をすぐに有効活用できます。
大量のテキストや画像を読み取り、情報収集や分析を行う場合も、5G環境下では効率よく進められるでしょう。そのため、IoTから得たデータをすぐに活用でき、商品やサービスの分析や改善につなげられます。
効果2. 増加するIoT機器を同時接続できるキャパシティができる
5Gでは、1平方キロメートル内に約100万台の同時接続が可能です。コンサートやスポーツなどでは中継映像を生配信し、大勢の人がリアルタイムで臨場感を味わうことができるようになりました。
また、工場全体や車内全体など広範囲にIoT機器を配置することも可能です。そこから得られる情報を一括管理することで、情報の分析や生産性の向上に役立てられます。
効果3. IoT機器との通信遅延が生じづらくなる
5Gは通信の遅延が少なく、IoT機器と安定した接続ができるところが大きな魅力です。
例えば、テンポの速い組み立てラインの作業やリアルタイムでの遠隔監視作業などは、数秒の遅れが大きなトラブルにつながります。大量のデータをリアルタイムで送受信できる5Gを活用すれば、安定した運用が可能です。
また、緊急を要する手術では遅延なく高画質な映像を送受信できることで、遠隔で手術や処置の指示が実現できるようになりました。
「5G×IoT」の活用はすでに進んでいる|これからの活用例
ここでは、5GとIoTを組み合わせて活用したいシーンを6つご紹介します。機器の遠隔操作やリアルタイムで制御、人材不足の解消など、5GとIoTを組み合わせることで実現できることをチェックしてみましょう。
1. インフラの管理
1つ目は、インフラの管理です。従来は、インフラの調査や管理に大きな負担がかかっていました。
IoTと5Gを使えば道路や橋梁などのインフラを、遠隔から監視することが可能です。何らかの異常があった際には通知を受け取ることもでき、迅速な対応ができるようになります。
例えば、5G対応のセンサー付き監視カメラを橋桁や橋脚に取り付け、橋の状態の確認や分析をするために活用されています。わざわざ現場まで行かなくても監視カメラの映像や振動の分析を基に現状の診断ができるようになりました。
2. 農業および畜産業
2つ目は、農業や畜産業での活用です。農業では農産物の生育や土壌などのデータを集計し、温度や農産物の管理に役立てています。遠隔地から栽培の技術指導をするなど農業の生産性向上にも貢献しています。
畜産業においては牛の首にセンサー付きデバイスを取り付け、牛の動態データを収集している事例があります。AI解析により牛の異常をいち早く感知することで、牛の疾病予防や発育の観察に役立てています。
「畜産業でのIoTカメラ活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【畜産×カメラ】AIカメラ・クラウドカメラ・IoTカメラの活用事例4選』
「農業でのIoTカメラ活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【農業×カメラ】AIカメラ・クラウドカメラ・IoTカメラの活用事例4選』
「スマート農業」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【スマート農業】DX化の進む農業でのIoTの活用事例や製品を紹介』
3. 製造業
3つ目は、製造業での活用です。製造業では、スマートファクトリーが推進されています。スマートファクトリーとは、IoTや5Gの活用により生産性の向上や業務プロセスの改善を行う工場のことです。
例えば、機器の稼働状況や作業員の労働状況をデータとして蓄積できれば、工場全体の動きを可視化できます。このデータを基に工程や作業員の配置を見直すことで、業務効率化や生産性の向上につながるでしょう。
また、製造業の作業内容によっては、重量のあるものや非常に熱いものを扱わなければなりません。IoTと5Gを活用したロボティクスや自動運転の技術を導入すれば、安全性を確保しながら効率よく作業を進められるようになります。
「製造業でのIoT活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『製造業でIoT化を推進するメリットや課題、事例を紹介』
4. 医療・介護分野
4つ目は、医療や介護分野での活用です。医療現場では、緊急医療や遠隔医療にIoTと5Gの技術が使われています。
例えば、往診や緊急対応時には、画像を共有しながら専門医がリアルタイムでサポートをすることが可能です。また、患者さんの検査データやマイナンバーカードのデータを共有することで、緊急時にも適切な対応ができるようになります。
介護分野では、遠隔で監視ができる見守りシステムや高齢者とコミュニケーションを取る介護ロボットなどが導入されています。スタッフの働きやすさと充実した介護の提供の両立ができるシステムにIoTと5Gが活用されています。
「介護でのIoTカメラ活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【高齢者介護×カメラ】老人ホーム・介護施設におすすめの見守りカメラの活用事例7選』
5. 土木・建設分野
5つ目は、土木や建設分野での活用です。建設業界は、人手不足や安全性の確保に問題を抱えています。土木や建設分野の課題の解消に、IoTや5Gが活用されています。
例えば、服や腕などに装着するIoT機器「ウェアラブルデバイス」を導入すると、作業員の健康状態や作業時の動作、作業環境などがリアルタイムで確認できます。危険や異常を察知した場合はアラームなどで知らせてくれるので、いち早く対応することが可能です。
人材不足はIoTと5Gの技術を使い業務効率化を図ることで、最低限の人員で稼働できるようになるでしょう。それだけでなく、技術の向上に遠隔でのトレーニングやVRが活用でき、スムーズな技術伝承にも一役買ってくれます。
「建設業でのIoT活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『今重視される「建設業でのIoT活用」のメリットと具体的活用例』
6. スマートシティの構築
6つ目は、スマートシティ構想の実現です。スマートシティとデータの活用やデジタル化を推進することで、地域や都市の課題を解決し暮らしやすい街づくりを行うことです。
・下水道や電気などのエネルギー循環やリサイクルの最適化を管理する
・遠隔での教育やトレーニングの導入
・災害時の情報ができる基盤の構築
などが当てはまります。5GやIoTを活用することで、地域や都市全体で情報を共通し必要に応じた活用ができる基盤が整います。
「スマートシティ」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートシティ(Smart City)とは?定義や課題、日本と海外の事例を紹介』
7. 自動運転の実現
7つ目は、自動運転の実現です。自動車に搭載したセンサーが走行状況や位置情報を収集します。このデータを基にAIが現状を分析し、その結果を自動車が受け取ることで自動運転ができる仕組みです。
自動運転を実現するには大量のデータを遅延なく送受信しなければなりません。まさに、IoTと5Gの技術が必要なのです。
自動運転が実現すると、事故の予防や渋滞の緩和が期待できます。走行中のデータを収集し蓄積することで、事故や渋滞が起こりやすい場所の情報を獲得しドライバーへの注意喚起を促すこともできるようになるでしょう。
「スマートカー」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『スマートカーとは?仕組みや市場動向、これまでの自動車との違いをわかりやすく解説』
「5G×IoT」は課題も抱えている
5G×IoTの活用事例などを通じて、大きなメリットを理解できたかと思います。しかし、スタートしたばかりの5Gには普及への課題が存在するのも事実です。どのような課題があるのか、確認しておきましょう。
セキュリティ対策の必要な場面の増加
IoTと5Gを活用してあらゆるデバイスをインターネットに接続すると、サイバー攻撃など外部からの攻撃によるセキュリティリスクが高まります。
万が一、サイバー攻撃を受けたりコンピュータウイルスに感染したりすると、個人情報の漏えいや機密情報の流出につながる可能性があります。場合によっては、企業の信頼や安全性を損ねてしまうかもしれません。
IoTと5Gを活用することはセキュリティ対策が必要であることを念頭に置いて、ウイルス対策ソフトの導入や定期的なアップデートなどを実施しましょう。
「IoTセキュリティ」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoTセキュリティの意味や必要性、ガイドライン、対策チェックリストを完全網羅』
5Gへの対応が可能な環境への整備
5Gが利用できる地域は少しずつ広がっていますが、まだすべての地域で利用できるとは言えません。5Gを利用できる環境の整備が課題となっています。
また、5G対応となるのと同時に5Gが利用できる機器への移行が必要です。先ほど触れたように、5Gは28Ghzなどの高い周波数帯を使用しているため、スマートフォンやパソコンなどの通信機器によっては対応していない可能性があります。
そのため、5Gが安定して利用できる地域の拡大と5G対応の機器の導入が課題となっているケースもあります。
5Gのコスト低減と省電力化
5Gは従来の通信規格に比べると、消費電力量が大きいです。積極的に5Gを活用すると電気代が高騰する可能性があります。5GとIoTを有効活用するためには、あらかじめ省エネ対策を検討する必要があるでしょう。
また、IoT機器やIoTと5Gが活用できる環境を整えるには、導入コストとランニングコストがかかります。手軽に導入することが難しいところも、課題の1つとなっています。
まとめ
5G×IoTは企業や自治体において、生産性の改善やDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の1つとも言えます。それだけでなく、環境に配慮した社会基盤を構築するために欠かせない要素だとも言えるでしょう。
今回ご紹介したように、すでに5GとIoTはさまざまな分野で活用されています。
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。
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