今重視される「建設業でのIoT活用」のメリットと具体的活用例
今重視される「建設業でのIoT活用」のメリットと具体的活用例
建設業界におけるIoT活用には、多くの担当者が興味を持っていることでしょう。IoTを導入することで、建設業界は現在の課題を解決し、より効率的な環境を構築することが可能です。この記事では、建設業界がIoTを活用する際のメリットや実際の成功事例などをまとめて紹介しています。また、IoTの概要にも触れており、IoT導入を検討している方々にとって、参考になる内容となっています。
目次
今後の課題解決に重視される「建設業でのIoT活用」とは?
まずは、建設業界でIoTが重視される理由をご紹介します。
なぜ、いまIoTが注目されているのか把握するためにも、チェックしてみてください。
まずは「IoT」について確認しよう
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、家電製品や機械などの「モノ」をインターネットに接続することです。
モノが収集したデータはインターネット経由で送信されて、各種モジュールに蓄積されます。分析されたデータはアプリケーションにより可視化されて、業務環境の改善や効率化
などさまざまな価値を生み出します。
IoTは家庭で使用する電化製品や工場の機械など、あらゆる分野で活用されています。
「IoT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組み、事例を解説』
IoTが重視される理由|建設業界が抱える現状の課題
<課題1>人材の確保・育成が進まず現場作業員の高齢化が進んでいる
建設業界では、現場作業員の高齢化が進んでいます。国土交通省が公表している「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業就業者の約3割が55歳以上であることが分かります。
加えて、29歳以下の若年層は建設業就業者の約1割です。その背景には、建設業就業者数の減少という問題も抱えています。
つまり、熟練した技術を持つ現場作業員は高齢化し、その技術を引き継ぐ若年層が大幅に不足しているのです。建設業界は専門的な技術や知識を要する作業が多く、技術を身につけるまでに時間を要します。
そのため、今後の建設業界を支える人材の確保や育成が大きな課題となっています。
(参考)経済産業省「最近の建設業を巡る状況について」
<課題2>現場作業で起こる労働災害の問題を抱えている
建設業は、現場での事故やケガが多いです。一般社団法人全国建設業労災互助会の「労働災害の現状」によると、2020年の死亡労働災害は全産業の中で建設業が最も多いことが分かっています。
建設現場には倒壊や高温物との接触、落下など日常生活にはない危険が潜んでいます。そのため、危険を回避するシステムや機器などの導入が待ち望まれています。
(参考)一般社団法人全国建設業労災互助会「労働災害の現状」
IoTの活用による働き方改革や「i-Construction」が推進されている
建設業界では現状の課題を解消するために、IoTを活用した働き方改革やi-Constructionを推進しています。
働き方改革は、長時間労働の改善や生産性の向上などが主軸です。例えば、IoTを活用し遠隔での監視や従業員管理のデータ化を行うことで生産性の向上が見込めます。
生産性が向上すると限られた人員でも効率よく業務を遂行できるようになるので、長時間労働の改善や人材不足の解消にもつながるでしょう。
また、国土交通省では、ICTを活用して魅力ある建設現場を目指す「i-Construction(アイ・コンストラクション」を推奨しています。ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術を指します。建設現場にも情報通信技術を導入することで、スムーズなコミュニケーションや納期の標準化が見込めます。
働き方改革やi-Constructionと聞くと取り組みにくく感じるかもしれませんが、IoTを活用することで企業規模問わず円滑に進められるようになります。
(参考)国土交通省「i-Construction」
「IT・ICT・IoTの違い」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IT・ICT・IoTの違いとは?それぞれの意味や活用事例を紹介!』
「建設IoT」の推進で見込める主なメリットは5つある
建設業界の現状が把握できたところで、建設業にIoTを導入すると具体的にどのようなメリットがあるのか気になるのではないでしょうか。
ここでは、建設業界がIoTを推進することで得られる具体的なメリットを解説しています。
「建設・工事現場のAIカメラ」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【建設・工事現場×カメラ】AIカメラ・クラウドカメラ・IoTカメラの活用事例6選』
1. 現場業務の効率化とそれに伴う労働時間の短縮
1つ目は、業務効率化とそれに伴う労働時間の短縮です。建設現場には多くの業務が関わるため、スケジュール管理や現場把握が大変です。
そこでIoTを活用しWebカメラでの監視や現場の把握ができれば、遠隔からの指示や現場の状況確認が実現できます。その結果、建設現場の全体管理がしやすくなり、効率よく業務を進められるようになるでしょう。
また、遠隔での監視や適切なスケジュール管理ができれば工期を掴めるようになるので、労働時間の短縮にもつながります。
2. 現場作業における安全性の向上
2つ目は、建設現場での安全性の向上です。先ほども触れたように、建設業界は労働災害が多く安全性の確保が大きな課題となっています。
IoTを活用すると、作業員や機器の管理がしやすくなり大きなトラブルを未然に防ぐことが可能です。
例えば、Webカメラを使いリアルタイムで建設現場の状況を監視できると、事故の危険性がある作業を行う前に直接指示を出して注意喚起を促せます。
また、衣服や腕などに装着して使用するIoT機器「ウェアラブルデバイス」を導入すると、作業員の健康状態や作業時の動作、作業環境などが確認できます。危険や異変を察知した場合はアラームなどで警告を出し周囲に伝えるので、いち早く気付くことが可能です。
建設現場は可視化できる危険と可視化できない危険の2種類があるため、IoTを導入することで多方面からの危険に備えられるようになるでしょう。
3. 資材や人員に関するコストの削減が可能になる
3つ目は、建設現場のコスト削減ができるところです。IoTの活用によるコスト削減は、資材と人員の2つの視点で実現できます。
(1)資材のコスト削減
IoTを活用すると、図面やデータをパソコンやタブレットで一元管理できます。そのため、ペーパーレスを促進でき、余分や資材を使用する必要がありません。
また、建設現場で使用する資材の在庫管理や建設現場で使用する資材の見通しも立てやすくなります。その結果、不要な資材の購入を防げるため、コスト削減につながります。
(2)人員のコスト削減
IoTを活用すると建設現場の監視や事務作業などを簡略化でき、今まで要していた人員を削除できます。
また、建設現場のスケジュール管理がしやすくなり、作業員の適切な配置が実現するので余分な人件費を削減することも可能でしょう。
4. 品質の安定と品質管理業務の省力化
4つ目は、品質管理と安定した品質の提供ができるところです。パソコンやタブレットを使い建設現場の進捗状況や必要な資材、連絡事項などを一元管理することで、品質管理業務の負担を減らします。
それだけでなく、蓄積されたデータを分析することで、建設現場での品質向上に役立てることも可能でしょう。
また、品質の安定では、下記のようなIoT技術が活用されています。
【品質の安定化の一例】
・測量アプリケーションを活用して、測量品質の均一化を図る
・コンクリートの充填状況を可視化して品質の安定を図る
・コンクリートの品質データを蓄積、分析して品質の均一化に役立てる
・コンクリートやケーブル配線などの合否判定の自動化
建設現場での品質の均一化は、作業員の技術や目視だけでは難しい側面があります。IoTを活用してデータ化や分析を行い各工程に反映させることで、品質を保ちやすくなるでしょう。
5. 熟練作業員の持つ技術を見える化して継承できる
5つ目は、技術の伝承や教育に役立つところです。建設業界では、熟練した技術を持つ作業員の技術伝承が課題となっています。IoTを導入することで、難しい技術や知識の共有がしやすくなり技術伝承がしやすい基盤を構築できます。
例えば、熟練した職人の動きを映像化し共有するバーチャルトレーニングを実施すれば、近くに該当技術を持つ職人がいなくても知識や技術の習得が可能です。VR(仮想現実)を活用すれば、熟練した職人の動きを疑似体験でき、具体的にどのように動けばいいのかよりリアルな研修が実現するでしょう。
習熟度に応じて繰り返し映像を見ることも可能なので、反復練習がしやすいところも特徴です。このように、IoTを活用することで効率よく知識や技術の伝承ができ、職人の育成や教育にも役立ちます。
建設業に取り入れたIoTの具体的活用例を紹介
建設業界にIoTを導入するメリットが把握できたところで、実際にIoTを導入している「鹿島建設株式会社」の事例を見てみましょう。
鹿島建設株式会社のIoT活用事例
鹿島建設株式会社では、生産性の向上や建設業界全体の魅力向上を目的としてIoTを導入しています。具体的には、他社と連携しながら下記のような取り組みを実施しています。
・機械の遠隔操作システムや場内搬送管理システムの導入
・ドローンの活用
・溶接ロボットや清掃ロボットの活用(竹中工務店と相互利用)
また、建設済みの建物管理にも建物管理プラットフォーム「鹿島スマートBM(Kajima Smart Building Management)」を開発して、導入しています。
「鹿島スマートBM」では機器の運転状態などを把握するセンサーの設置と遠隔での監視を組み合わせて、建物の異変やトラブルをいち早く察知します。
(参考)鹿島建設株式会社プレスリリース「ロボット施工・IoT分野における技術連携について」
(参考)鹿島建設株式会社プレスリリース「新たなプラットフォームを活用した建物管理サービスの提供を開始」
「日本のドローン活用」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『日本のドローンスタートアップ企業7社とドローン業界の現在と未来』
建設業のIoT化は世界中で取り組まれている
市場調査プラットフォームの「MarketsandMarkets」が実施した「建設分野におけるIoT市場予測」によると、2019年の建設業界のIoT市場規模は78億米ドルです。
2019年から2024年の間には16.5%市場が拡大する見込みで、2024年には168億米ドルに達すると予測されています。この背景には、生産性と安全性の向上や工期の適正化へのニーズが高まっている現状があるようです。
日本だけでなく海外の建設業界でもIoTの導入は求められており、今後も拡大していくと考えられます。
(参考)MarketsandMarkets「建設分野におけるIoT市場予測」
まとめ
建設業界ではIoTを導入することで人材不足や安全性などの課題を解消して、働きやすい環境を構築できます。すでにIoTを導入している建設現場も出てきており、今後さらに活用が拡大するでしょう。
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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