日本のドローンスタートアップ企業7社とドローン業界の現在と未来
日本のドローンスタートアップ企業7社とドローン業界の現在と未来

空中や水中での撮影は、メディアや現場作業など、多岐にわたる業務で大いに活用されています。特に小型UAVであるドローンを用いた空中撮影が注目を浴びています。この記事では、国内のスタートアップ企業がドローン業界でどのように活躍しているかを紹介し、さらにドローンの活躍分野と今後の展望についても解説しています。興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
今おさえておきたい日本のドローンスタートアップ企業7社
現在、あらゆる分野でドローンを使った空中撮影が活用されています。ドローンを導入して自社で空中撮影を行う企業もあれば外部委託する企業もあるように、各社で異なる動きを見せているのが特徴です。特に後者はドローンを使って撮影・解析を実施する「ドローン企業」が対応しており、企業から注目が集まっています。
そこで、今おさえておきたい日本のドローンスタートアップ企業7社の特徴やサービス概要をご紹介します。
テラドローン株式会社
テラドローン株式会社は、2016年に設立されたドローン企業です。次のような幅広い業務でドローンの技術提供を行っています。
▼業務分野
・測量業務
・インフラ点検業務
・画像処理・解析業務
・ソフトウェア・ハードウェア開発業務
国内土木・建築業界からの受注を中心に、世界でも活躍するトップクラスの実績を持つ企業です。特に点検分野では、ヨーロッパのドローン点検技術開発企業の「Terra Inspectioneering」を完全子会社化したことにより、次々と活動の幅を広げています。
(参考)テラドローン、オランダのドローン点検技術開発Terra Inspectioneeringを完全子会社化|ドローンジャーナル
株式会社FLIGHTS
株式会社FLIGHTSは、2016年に設立されたドローン企業です。ドローンの販売を中心として、次のような業務を実施しています。
▼業務分野
・測量業務
・インフラ点検業務
・直販・卸販売業務
・運用代行業務
・導入・コンサル業務
・ドローン保険・保守業務
・アプリ開発・提供業務
メイン事業はドローン代理店と提携したドローン販売を行っています。また、ドローンを用いた空中撮影に特化したカメラマン「Drone Agent(ドローンエージェント)」の派遣や導入コンサル、撮影代行など、多方面で活躍をみせています。
株式会社センシンロボティクス
株式会社センシンロボティクスは、2015年に設立されたドローン企業です。ドローン運用の他、管理・解析を含む次のソリューションを実施しています。
▼業務分野
・インフラ点検業務
・災害対策業務
・現場管理業務
・アプリ開発・提供業務
大規模プラントや電力設備といった「ライフラインの点検業務」を中心に事業展開を行っています。また、日本で慢性的に発生する災害対策へのドローン活用や、クラウドシステムを利用した現場管理など、国土の安全を目的としたドローンサービスにも力を入れている企業です。
中でもアプリ開発・提供業務では、点検分野ごとのユーザビリティを研究し、分野特化型のアプリを提供しています。また利用者のニーズに合わせたプロダクトが展開されているのも特徴です。
株式会社FullDepth
株式会社FullDepthは、2014年に設立されたドローン企業です。ドローン企業の中では珍しく、水中ドローンを活用した次の業務を実施しています。
▼業務分野
・直販・卸販売業務
・運用代行業務
・導入・コンサル業務
・クラウドサービス提供業務
高性能な産業用水中ドローンを販売する他、導入サポートなどを実施しています。また独自のクラウドサービスの提供を行い、遠隔操作やデータの記録・採取の活用など水中ドローンサービス全般に特化しているところが特徴です。
他にも解析用のソナー・音波の装着やアームの取り付けができるなど、カスタマイズ性に優れる水中ドローンを扱っています。調査・施工など幅広い業種から注目を集めています。
株式会社ナイルワークス
株式会社ナイルワークスは、2015年に設立されたドローン企業です。農業分野に特化したドローンの提供やアプリ開発を行っています。
▼業務分野
・直販・卸販売業務
・アプリ開発・提供業務
農業分野の効率化を図ることを目的として、農薬散布機能が搭載されたドローンの販売および、自動散布の操作状況を確認するアプリケーションの提供を実施しています。GPSを活用した圃場マップの作成・管理やドローンで撮影した画像から作物の生育状況解析を行うなど、農業分野のDXに貢献するドローンの提供が特徴です。
また、関係者とリアルタイムにデータを共有できるクラウドサービスを提供しているなど、人材不足が問題となっている農作業に貢献する企業として注目を集めています。
株式会社CLUE
株式会社CLUEは、2014年に設立されたドローン企業です。ドローンアプリの提供を中心に、企業ニーズに合わせたサービス提供を実施しています。
▼業務分野
・直販・卸販売業務
・導入・コンサル業務
・ドローン保険・保守業務
・アプリ提供業務
屋外点検のドローン撮影をサポートするパッケージサービスの「DroneRoofer」や、定期空撮を行い施工管理を行う「ドローン施工管理くん」を提供しています。あわせて工事現場で利用する機体の確保や飛行許可申請の代行を実施するなど、幅広い業務サポートを行う企業です。
中でも「DroneRoofer」は、日経アーキテクチュアで特集された「注目のプロダクト15選」に抜粋されて、多くのメディアから注目を集めています。
株式会社エアロネクスト
株式会社エアロネクストは、2017年に設立されたドローン企業です。幅広い分野に特化した産業ドローンの提供をサービスの主力として業務拡大を進めています。
▼業務分野
・直販・卸販売業務
・物流業務
・インフラ点検業務
・空路ビジネス業務
・導入・コンサル業務
特に注目されているのが、高重量への耐荷性能をもつ「フライングロボット」を利用した物流・点検・測量など多様な業界の課題解決を行うドローンの提供です。
また、物流・宅配に特化したエアモビリティの開発や、空路ビジネスにも力を入れています。ドローンを活用したい企業向けにコンサル業務を実施するなど、長年蓄積した技術を活かしたサービス提供が特徴です。
日本で現在ドローンを活用している主な4つの業界の状況
日本を拠点とするドローン企業の中でも、特に活躍を見せるのが農業・土木・物流・防犯の4分野です。
それぞれドローンを活用する場面に違いがあります。ここではドローン登場から成長が進む4つの業界について、活用状況を見ていきましょう。
農林・水産業界での活用状況

「農林・水産業界」は市場規模が大きく、様々な場面でドローンが活用されています。
中でも農林・水産業界は以下に示す課題を抱えており、すでに国土交通省では課題解決に向けて「スマート農業」を掲げ、ドローンの普及を推進しています。
【農林・水産業界の課題】
・従事者の高齢化
・農薬や肥料、種まきといった散布作業の手間
・目視による収量管理の手間
農林水産業界では、広い土地を利用した一次産業(農業・漁業)で大規模収穫・養殖を効率的に実施するためにドローンが活用されています。
ドローンに取り付けた散布機を使った肥料やエサの散布、カメラ機能を活用した成長管理を行うことで、データから収穫時期の判断が可能です。
また、林業では森林調査や植林地への苗木の運搬、樹木の成長確認など広い用途で活用されています。他にも、ドローンで取得したデータをクラウドサービスで管理し、関係者間で情報共有されるなどさまざまな工程で導入されています。
こちらは、テレビ大阪ニュースによる農業・林業でのドローン活用の事例動画です。
進化が高齢化、後継者不足の「農業」・危険伴う「林業」を救う? 産業用ドローン最前線
建築・土木業界での活用状況

「建築・土木業界」はICTによる現場効率化を目的として、ドローンが活用されている業界です。
主に測量・調査といった屋外での作業で活用される場面が多く、次のような方法で地形・建物の状況把握を行っています。
【建築・土木業界でのドローン活用事例】
・写真測量
・レーザー測量
・写真点検
日本の住宅及びインフラ設備の多くは老朽化が進行しており、点検による効率的な対策措置の確認が必要です。
特に高所作業が必要な橋梁点検やビルメンテナンスなどにドローンが活用され、搭載された高画質カメラによって構造物・建築物に問題が生じていないか確認をしています。
こちらは、大分県商工観光労働部新産業振興室による建築現場でのドローン活用の事例動画です。
ドローン活用による建築物劣化診断調査の実証実験(株式会社黒川建装・株式会社ネオマルス)
物流業界での活用状況

「物流業界」は近年市場規模が大きくなりつつある業界のひとつです。
自動車を利用した従来の運送手段をDX化する新たなビジネスとしてメディアに取り上げられることが多く、海外を中心にドローンによる配達・輸送の研究が進められています。
中でも、カリフォルニア州とテキサス州では、ドローンを活用した配送サービス「Prime Air」の導入が2022年後半に予定されています。
こちらは、テレ東BIZによる物流業界でのドローン活用の事例動画です。
国内初 レベル4のドローン配送(2023年3月24日)
警備・防犯業界での活用状況

「警備・防犯業界」でも、ドローンが活用されています。
ドローンに暗視装置を装着した夜間の巡回警備や、安定飛行を活用した屋内巡回警備に利用できます。ただし、天候の影響で飛行制限を受けてしまうことや、屋内インテリアが障害となり衝突・落下してしまう危険性について問題視されています。
また、365日24時間の警備対策ができないため、警備・防犯業界への浸透に向けて研究開発が行われている状況です。
過酷な警備業務の人材不足を解消するカギを握ることから、活用増加が期待されています。
こちらは、【公式】KDDIスマートドローンチャンネルによる警備でのドローン活用の事例動画です。
【ドローン警備】広域施設の遠隔巡回警備に成功
日本でのドローン活用が今後発展・拡大する見込み
国内のドローン市場は2016年の段階では200億円程度と小規模でしたが、IT化・DX化の推進によって、2022年になると約10倍の2000億円程度まで市場が拡大しています。
今後さらなる市場拡大が予想されているドローン業界について、発展や拡大の見込みがある業界や分野について見ていきましょう。
点検分野|サービス市場における拡大が見込まれる
高度経済成長期に建築・建造された建築物・構造物の多くが、老朽化による補修を迫られている状況です。その一環として補修優先順位を決める点検作業で、ドローン活用を含む市場拡大が見込まれています。
従来の人による点検作業では、高所作業車の利用や足場設置など大がかりな点検準備が必要でした。一方、ドローンは狭い空間・高い場所で利用でき、簡単に高画質な写真撮影を行えるため、点検効率を向上させるニーズがあります。
点検における費用削減や高所作業による事故を回避できることはもちろん、写真解析による損傷判定といった効率的な点検作業を実施できます。安全性を確保しつつ効率的な作業を行えることから、さらなる市場拡大が見込まれています。
計測分野|建設業界のみならず自然観測の分野に発展
建設業界では、写真測量やレーザー測量から取得した位置座標を使用し、距離や面積といった情報をデータ上で計測できます。これに伴い、今後は建設業界の枠を超え、自然観測分野に発展すると予想されています。
この技術は林業の樹木成長管理や植生の経年変化の確認などに活用可能です。またGoogle Mapを扱うようにドローンを使って定期的な自然観測を行うことで、地形の変化などを簡単に把握できるようになります。
ドローンの活用は普遍性のある計測分野に柔軟な対応ができる力があることから、自然を対象とした観測や分析などにも活用される見込みがあります。
アプリ・ソフトウェア開発分野|ドローンの進化を下支え
ドローンの普及に欠かせないのが、計測・撮影したデータを分析するアプリ・ソフトウェア開発分野です。アプリ・ソフトウェア開発分野は、ドローンの進化を下支えする力を持つことから、ドローンの普及に並行して伸びていく分野だといえます。
ドローンで取得したデータはそのままでは利用できないため、アプリやソフトウェアを使った可視化が必要です。
近年ではAI技術を導入したアプリ・ソフトウェアを用いて、ドローンが撮影した画像から情報処理を行うサービスが登場するなど、人力作業を削減できる事例も登場しています。今後も多くの業種で、ドローンを活用したアプリやソフトウェア開発が進展していくでしょう。
人材育成・人材派遣分野|操縦の専門技術を備えた人材にニーズ
多くの分野でドローンが普及していくことに伴い、ドローンを操縦する専門操縦者の需要が高まると予想されます。
ドローンの操縦には、度重なる操縦実績が欠かせません。自動操縦機能を持つドローンですが操縦する場所や立地、周辺の植生状況によっては任意操縦が欠かせないポイントもあります。
このとき、ドローン操縦資格を取得したプロの操縦士を求める企業が増えると予想され「人材育成」「人材派遣」の分野のニーズが高まっていくでしょう。すでに、ニーズを先読みして人材育成サービスも提供されています。
2021年のドローン業界の市場規模と今後の展望

様々な分野で著しい成長をみせるドローン業界ですが、今後どのような発展をみせていくのでしょうか。
最後に2021年に起きたドローン業界の市場規模の動きと、2022年以降どのように変化していくか今後の展望について解説していきます。
日本における2021年の市場規模は推定2308億円
インプレス総合研究所発行の「ドローンビジネス調査報告書2022」の調査結果によると、2021年の市場規模が推定2308億円に上ると試算されました。
ドローン市場が生まれた当時の市場規模が200億円程度であったことから、ここ数年で10倍近い市場拡大を見せ、様々な業種がドローン業界に参入していることがわかります。
画像や動画撮影という枠を超え、調査や分析、運搬など様々な場面で活用が進みます。近年のIoTの動向から見ても「現場の認識」が関わる分野として、確実な地位を築いています。
また、業務に欠かせないドローン機器のスペックの上昇も見受けられます。より高性能な操作性と高画質の撮影が可能になることで、より多くの分野で力を発揮できるようになると予想されます。
(参考)「ドローンビジネス調査報告書2022」インプレス総合研究所
2021年の世界の市場規模は221億米ドルに達した
株式会社グローバルインフォメーション発行の「ドローンの世界市場 (2021-2026年):産業動向・市場シェア・市場規模・成長予測・市場機会」を見ると、世界全体における2021年のドローンの市場規模は221億米ドル(約3.1兆円)を上回ると試算されています。
国内の市場規模を大幅に上回ることはもちろん、特にアメリカや中国といった大規模産業が盛んな国では積極的にドローン技術が活用されている状況です。また近年では軍事や防衛分野における市場が拡大するなど、幅広い分野への需要拡大が見込まれています。
世界規模で見たドローン市場の動向についても今後大きな伸びを見せていくと予想されており、研究開発の加速が期待されるでしょう。
(参考)「ドローンの世界市場 (2021-2026年):産業動向・市場シェア・市場規模・成長予測・市場機会」株式会社グローバルインフォメーション
ドローン業界の今後の展望は明るい
ドローンには「機体」「サービス」「周辺サービス」という3つの市場があります。現在、それぞれの市場が拡大していることはもちろん、これに付随するビジネス分野の発展も加速している状況です。
また、娯楽や映像撮影といった小さなニーズから生まれたドローンは、今や業務分野として活躍しています。近年では安価で高性能なドローンが登場するなど、導入ハードルが低くなっていることも市場拡大の一因となっています。このことから、今後のドローン業界の展望は明るいものになっていくと予想できます。
まとめ
今回は、小型UAVである「ドローン」に焦点を当てて、国内で注目されているスタートアップ企業や活用されている業界、そして市場規模や今後の展望について解説してきました。
様々な業務の自動化に貢献するといった枠に囚われず、分析や解析を活用したIoT技術の発展にも効果を発揮する機器として、今や無くてはならない存在となっています。またドローン業界だけでなく、ドローンを活用する業界も市場が拡大中です。

IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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