物流DXとは?物流DXの意味や具体的な取り組み内容、導入事例、支援企業を紹介
物流DXとは?物流DXの意味や具体的な取り組み内容、導入事例、支援企業を紹介

人が荷物を運ぶという行為は、数百年、数千年前から存在しましたが、1960年代以降に「物流」という概念が広まり、すでに半世紀以上もの時が流れました。そんな物流業界では、現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)という大きな変革が起きています。 本記事では、物流業界でのDXについて詳しく紹介します。
目次
物流業界が抱える課題
物流業界が抱える課題は、「長年続く人手不足」「EC市場の急成長による小口配送の増加」「世界情勢や世界経済による燃料費の変動」の3つです。ここでは、その3つの課題について詳しく紹介します。
課題①長年続く人手不足
物流業界の大きな課題の1つ目は、「長年続く人手不足」です。
国土交通省の物流政策課が公表している『物流を取り巻く現状について』によると、6割以上の企業が物流業界の仕事の中でも特にトラックドライバーが不足していると感じています。
この人手不足を加速させている要因の一つが物流業界の仕事のネガティブなイメージです。
物流業界以外で働く人からの物流業界のイメージとして、「肉体労働や長時間労働、深夜労働などの肉体的にも精神的にもハードな仕事」と見られることが、人手不足を加速させている要因の一つです。
課題②EC市場の急成長による小口配送の増加
物流業界の大きな課題の2つ目は、「EC市場の急成長による小口配送の増加」です。
世界中でのインターネットやデジタルテクノロジーの普及により、人々の購買行動に変化が起きました。それが、「ネットショッピング」です。インターネットで商品や製品を購入する「ネットショッピング」という購買行動は、10年以上前から存在しましたが、ここ数年で一般的な消費者にも多く浸透しました。
株式会社GVが2021年4月8日に公表した『巣篭もり需要で急増のネットショッピング!1番利用されているサイトはどれ?』によると、ネットショッピングでより多く購入されている商品のランキングは、以下のような順位となりました。
1位:日用品、雑貨
2位:衣類・服飾雑貨
3位:趣味用品
4位:家電
5位:食品
(参考)巣篭もり需要で急増のネットショッピング!1番利用されているサイトはどれ?|まねーぶ
https://www.money-book.jp/50094
これまでの一般的な購買行動では、1位〜5位にランクインしているほとんど全ての商品を店舗で購入し、そのまま持ち帰ることが多かったですが、現在では、これらの商品をネットショッピングで購入し、家に配送するようになりました。
このような人々の購買行動の変化とEC市場の急成長により、物流業界では小口配送の需要が年々増加したことで、出てきたのが再配達という問題です。
基本的にこれまでの小口配送では、発送時に時間の指定などができず、不在時に宅配員が家に来るということがたくさんありました。そのことで、配達員の配送業務はかなり非効率なものになってしまいました。
近年ではその非効率な配送の効率化を図るために、「時間指定配送」や「置き配」などの工夫によって多少は小口配送の効率が改善されましたが、すべてのネットショッピングで「時間指定配送」や「置き配」が選択できている状況ではなく、依然として、この配送問題が続いています。
課題③世界情勢や世界経済による燃料費の変動
物流業界の大きな課題の3つ目は、「世界情勢や世界経済による燃料費の変動」です。
物流業界にとって欠かせないのが、ガソリンです。しかし、このガソリンや原油は、世界情勢や世界経済の影響を強く受けるため、価格が安定しないというのがとても大きな問題となっています。直近では、「コロナ」や「ロシアとウクライナの戦争」などの影響で急激に原油価格が下落と高騰を続けています。
物流DXとは
前述した物流業界が抱える3つの課題を含めた様々な課題の解決策として注目を集めているのが「物流DX」です。ここからは物流DXについて詳しく紹介します。

そもそもDXとは
物流DXについて紹介する前に、まずは、簡単にDX(デジタルトランスフォーメーション)についてご紹介します。
DXとは、英語で「Digital Transformation」の略で、日本語訳では、「デジタルトランスフォーメーション / ディーエックス」と訳されます。
日本では、2018年12月に経済産業省が発表した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)』にて、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しています。
(出典)デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)を取りまとめました |METI/経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html
「DX」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や定義、事例をわかりやすく簡単に解説!』
物流DXの目的と目標
物流業界におけるDXの普及は、DXを推進する他の業界と比べて遅れているのが現状です。物流業界では、DXの前提となる初歩的なIT化やデジタル化も進んでいない状態といえるでしょう。いまだに紙を用いた作業を中心に事業を展開している企業が多く存在します。
物流DXの目的
国土交通省が定める『物流DXについて』を参考に考えると、データや機械、デジタル技術を用いて他の産業に対する物流業界の優位性を高めるとともに、日本だけでなく、世界に通用する国際競争力を身につけることが物流DXの目的です。
物流DXの目標
物流DXを実現するための目標として、下記の2つをあげることができます。
①データや機械、デジタル技術を用いて既存の業務改善や働き方改革を実現する
②物流システムの規格化などを通じ、物流産業や物流ビジネスのイノベーションを実現する
世界を見渡すと、物流業界では、AIやIoT、ドローンなどの最先端テクノロジーの活用が進んでいます。しかし、日本では既存の法規制などの影響もあり物流業界全体で最先端テクノロジーを存分に活用することができていない状況です。物流業界でのDXを実現することで、業務の効率化をはかり、労働力不足や長時間労働の緩和を目指すことができます。
(参考)【参考資料3】物流DXについて|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/content/001379775.pdf
物流DXの主な取り組み内容
国土交通省が定める『物流DXについて』を参考に考えると、物流DXの主な取り組みは、「機械化」と「デジタル化」の2つです。

機械化の取り組み
物流DXの「機械化」の取り組みとして挙げられるのが以下の3つです。
①幹線輸送の自動化・機械化
ある輸送拠点にその周辺エリアの荷物を大量に集めてから別の拠点に、大量輸送機関で運ぶ幹線輸送にトラック隊列走行を導入したり、まだ実現はできていないが、自動運転トラックを導入したり、自動運航船を導入することで、幹線輸送業務を自動化・機械化することが、物流DXの取り組みの1つです。
②ラストワンマイル配送の効率化
最終拠点から顧客への物流サービスのことを「ラストワンマイル」と呼びますが、このラストワンマイル配送にドローンや自動配送ロボットを活用することで、人手不足の解消と配送業務の効率化を行うことが、物流DXの取り組みの1つです。
③倉庫内作業の自動化・機械化
物流倉庫内での自動化や機械化の一環として、自動ピッキングロボットの導入やパレットから荷物を降ろすデパレタイズやパレットに荷物を積みつけることをパレタイズに機械を導入することも物流DXの取り組みの1つです。
デジタル化の取り組み
物流DXの「デジタル化」の取り組みとして挙げられるのが以下の6つです。
①手続きの電子化
運送状やその収受、請求書や特車通行手続きなどをデジタル化(電子化)することが、物流DXの取り組みの1つです。
②点呼や配車管理のデジタル化
点呼や配車管理は、アナログで管理されていることが多く、これをクラウドソリューションツールを用いてデジタル化することも物流DXの取り組みの1つです。
③荷物とトラック・倉庫のマッチングシステム導入
荷物の量やトラックの利用状況、倉庫の利用状況などの管理に紙などを用いたアナログ管理からクラウドのマッチングシステムを導入することで効率化を図ることも物流DXの取り組みの1つです。
④トラック予約システム導入
物流業界の課題であるトラック待機時間を削減するために、トラック予約システムを導入することも物流DXの取り組みの1つです。
⑤SIP物流(物流・商流データ基盤)や港湾関連データ連携基盤の構築
SIP物流(物流・商流データ基盤)や港湾関連データ連携基盤を構築することにより、サプライチェーン上の様々なデータを蓄積・共有・活用することで業務の効率化を行うことも物流DXの取り組みの1つです。
⑥AIを活用したオペレーションの効率化
AIを活用した配送業務支援やAIを活用した配送ルートの自動作成などを行うことも物流DXの取り組みの1つです。
物流DXの支援企業3選と事例6選
ここでは、物流DXの支援企業3選とその事例6選を紹介します。
凸版印刷
凸版印刷株式会社では、物流IoTを加速する次世代タグ「ZETag」管理クラウドプラットフォーム「ZETagDRIVE™(ゼタグ・ドライブ)」とピッキングシステムによる倉庫・物流DXのサービスを提供しています。
【物流IoTを加速する次世代タグ「ZETag」管理クラウドプラットフォーム「ZETagDRIVE™(ゼタグ・ドライブ)」】
物流IoTを加速する次世代タグ「ZETag」とは、最長で約2,000m離れていても通信が可能な資材管理向けアクティブタグです。そして、100万個以上の「ZETag®」の位置情報を管理するクラウド型システムプラットフォームが「ZETagDRIVE™(ゼタグ・ドライブ)」です。

(参考)凸版印刷、長距離通信が可能なアクティブタグ「ZETag®」を開発|凸版印刷
https://www.toppan.co.jp/news/2021/10/newsrelease211005_1.html
【ピッキングシステムによる倉庫・物流DX】
ピッキングシステムによる倉庫・物流DXとして、「デジタルピッキングシステム(DPS)」「シャッターアソートシステム(SAS)」「プロジェクションピッキングシステム®(PPS)」の提供をしています。
「デジタルピッキングシステム(DPS)」は、表示器を利用したピッキング支援システムです。
「シャッターアソートシステム(SAS)」は、最新型のシャッター付き表示器(ポカヨケゲート表示器)を使用したデジタルピッキングシステムです。
「プロジェクションピッキングシステム®(PPS)」は、画像処理技術を応用し、様々な形状の棚やラックに合わせ柔軟に構築できるピッキングシステムです。
(参考)ピッキングシステムによる倉庫・物流DX|TOPPAN SECURE
https://solution.toppan.co.jp/secure/service/picking_system.html
<DX導入事例>
DX導入事例①株式会社永岡書店
ピッキング作業の効率化のため、デジタルピッキング表示器約1,600台を導入し、熟練作業者に属人化していた作業を標準化したことで、作業負荷軽減・作業品質の向上に成功しました。
(参考)「ピッキングシステムによる倉庫・物流DX」永岡書店様導入事例|TOPPAN SECURE
https://solution.toppan.co.jp/secure/contents/picking_system_jirei01.html
DX導入事例②株式会社ムロオ
病院や工場の食堂向けに商品を発送している株式会社ムロオでは、上下左右の入れ間違い防止が付いた移動式ラックを導入したことで、入れ間違いミスによる誤出荷の削減、物量や繁閑期に応じたラックの移動による倉庫内のスペース有効活用に貢献しました。
(参考)ピッキングシステムによる倉庫・物流DX|TOPPAN SECURE
https://solution.toppan.co.jp/secure/service/picking_system.html
ESRIジャパン
ESRIジャパン株式会社では、物流業界向けに「地図情報システムソリューション」を提供しています。
【地図情報システムソリューション】
地図情報システムソリューションでは、「GISによる位置情報管理」「GISによる可視化」「ラストワンマイルの効率化」「物流センターの拠点分析」「配送・配達エリアの最適化」「配送・配達エリアの見える化」「配送エリアの管理」を行えます。
<DX導入事例>
DX導入事例①大手運送会社
運行管理・運送現場において異常気象といった災害リスクにより事故の危険性が高まるときがあるため、リスク検知による注意喚起を行いたいという課題を持つ大手運送会社に対して、防災気象情報の把握により、リアルタイムな状況を地図で可視化して、運転者・運行管理には音声・メールでの通知による注意喚起を実現しました。

(参考)リアルタイムな防災気象情報を活用して、現場管理者・運転者に運送経路上の危険通知を行い、運行管理・運送現場に対する注意喚起を実現|物流・配送・ロジ地図システム選定.com
https://logistics.map-system.com/solution/494/
DX導入事例②物流不動産(倉庫会社)
営業の提案資料として自社の物流拠点からリーチ可能な距離を可視化するレポートをまとめていたが、その提案資料の説得力が弱いという課題を抱える物流不動産(倉庫会社)に対して、GISを活用することで、ミルクラン方式も含めた多様な配送ルートパターンの提案が可能になりました。

(参考)物流倉庫提案におけるGISの活用、様々なネットワーク解析による、提案力の向上|物流・配送・ロジ地図システム選定.com
https://logistics.map-system.com/solution/162/
MeeTruck
ソフトバンク株式会社と日本通運株式会社が、物流業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するために立ち上げた共同出資会社のMeeTruck株式会社では、「MeeTruck(ミートラック)」を提供しています。

【MeeTruck(ミートラック)】
MeeTruck(ミートラック)は、未配車・車両空き情報が可視化され、必要な配車業務が明確になり配車ミスを防ぐことができるマッチングサービスです。
<DX導入事例>
DX導入事例①オーエスディー合同会社
オーエスディー合同会社では、会社規模が大きくなるにつれて、配車台数が増えるようになり、そのことで、紙やエクセルを用いた事務作業に要する時間が増えていました。この課題を簡単に解決するために、MeeTruckを導入したことで、データの二重に入力がなくなり、入力業務の負荷を分散することができ、一日あたり30分かけていた請求書作成のための入力業務の時間がゼロになりました。
(参考)導入事例:オーエスディー合同会社|MeeTruck(ミートラック)
https://www.meetruck.co.jp/case/tms/case09/
DX導入事例②ライフテック株式会社
ライフテック株式会社では、配車業務に紙やエクセルで管理していましたが、既存の配車システムは導入費用が高く、導入できていなかったがMeeTruckを導入したことで、配車表は、スマホアプリで配車状況の確認や変更も簡単にでき、お客様から詳細な指示を正確に伝えることができるようになりました。
(参考)導入事例:ライフテック株式会社|MeeTruck(ミートラック)
https://www.meetruck.co.jp/case/tms/case01/

IoTBiz編集部
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