ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違いやメリット・デメリット、活用事例を徹底解説
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違いやメリット・デメリット、活用事例を徹底解説

一昔前と比べると、近年では、企業のみならず個人でもウェブサイトやウェブサービスを提供する際に、クラウドコンピューティングを活用するのが一般的になりました。 今回は、そのクラウドコンピューティングの活用方法に違いのある「ハイブリッドクラウド」と「マルチクラウド」について詳しく紹介します。
目次
ハイブリッドクラウドとは
クラウドコンピューティングの1つの活用方法であるハイブリッドクラウドについて紹介します。
ハイブリッドクラウドの意味・特徴
ハイブリッドクラウドとは、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて運用する活用方法のことです。つまり、ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用して活用する方法のことです。
ハイブリッドクラウド = 併用(パブリッククラウド + プライベートクラウド)
「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『パブリッククラウドとプライベートクラウドの違いやメリット・デメリット、活用事例を徹底解説』
「クラウドコンピューティング」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『クラウドコンピューティングとは?意味や仕組み、メリット、課題を徹底的に紹介!』
ハイブリッドクラウドのメリット・デメリット
メリット
・導入コストや運用コストが少ない
・クラウドの負担を分散可能
・高度なセキュリティを構築しやすい
メリットとしては、導入コストや運用コストが少なく、クラウドの負担を分散することができ、高度なセキュリティを構築しやすいという点です。
デメリット
・システム設計と構築が複雑
・運用ハードルが高い
デメリットとしては、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用するため、システム設計と構築が複雑化し、運用ハードルが高くなることです。
ハイブリッドクラウドの注意点
ハイブリッドクラウドの注意点は、前述のデメリットで述べた「システム設計と構築が複雑化し、運用ハードルが上がる」という点です。
はじめに、ハイブリッドクラウドを検討する際には、クラウドコンピューティングの設計に長けた専門エンジニアが設計を行うことが必須です。その後の構築、運用においても、クラウドコンピューティングの開発・運用に長けたエンジニア人材が管理していく必要があります。
また、前述のメリットで述べた「高度なセキュリティを構築しやすい」という点に関しても、少なくとも一部は、オープンネットワークにつながるパブリッククラウドを利用するため、オンプレミスでの運用時と比較すると、しっかりとしたセキュリティの構築と設定が必要となります。セキュリティ面に関しても、セキュリティに長けた人材が設計と構築をする必要があります。
ハイブリッドクラウドの活用事例3選
ハイブリッドクラウドの活用方法は、多岐に渡りますが、その中でも主な活用方法を3つ紹介します。
①BCP対策としての活用
ハイブリッドクラウドは、BCP(事業継続計画)対策として、多く活用されています。BCP(事業継続計画)とは、テロや災害、システム障害など危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意し、事業やサービス、会社を継続し続けられるようにするための計画として、経営の重要な指標の一つとなっています。
このBCPの観点から見ると、「プライベートクラウド」と「パブリッククラウド」を併用するハイブリッドクラウドは、データ分散管理しているため、万が一、パブリッククラウドが危機的状況下に置かれた場合でも、プライベートクラウドにデータバックアップをしておけば、迅速に緊急対応することができます。プライベートクラウドが危機的状況下に置かれた場合でも、同様の対応をすることができます。
水環境分野における大手総合エンジニアリング会社のメタウォーター株式会社では、ハイブリッドクラウドを活用し、災害発生時には、パブリッククラウド(富士通が提供するCloud Volumes ONTAP)を利用することで、クラウド上のデータを元に業務再開を可能にするような対策を講じています。
(参考)ストレージ導入事例 メタウォーター株式会社様|富士通
https://www.fujitsu.com/jp/products/computing/storage/eternus/casestudies/1040/
②システム移行としての活用
ハイブリッドクラウドは、システム移行の場面でも多く活用されています。例えば、CRM(顧客関係管理)をクラウド移行する場合などは、重要度の高い顧客データをHubSpotやSalesforceの専用のCRMツールへ移行し、それ以外の顧客データをAWS (Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどに移行するなどの活用が可能です。
神奈川トヨタ自動車株式会社では、「Windows Server 2003」のリプレイスにあたり、全サーバーのクラウド化を行いました。その際に活用したのが、SalesforceとAWS (Amazon Web Services)のハイブリッドクラウドです。
(参考)クラウド利用の進化形 ハイブリッドクラウド活用事例と導入ポイント|テラスカイクラウドレポート
https://www.terrasky.co.jp/document/_docs/wp_hybridcloud_terrasky.pdf
③システム負荷の分散としての活用
ハイブリッドクラウドは、システム負荷の分散としても多く活用されています。例えば、一度にたくさんのアクセスがウェブサイトに集中したりすると、サーバーがリクエストを処理しきれずにダウンしてしまうことがありますが、ハイブリッドクラウドで負荷分散を行うことで、このような場合にも、リソースの増減が十分に対応できるパブリッククラウドを活用することでシステムの負荷を分散させることができます。
アメリカミシガン州に本社を置くアパレル会社のCarhartt(カーハート)は、オンライン販売と小売店を統合して直接販売を増やすことにより、従来の卸売ビジネスモデルから新たなビジネスモデルへと変革を行なっていましたが、進化の早いテクノロジーの要件に対応するため、SAPシステムをアップグレードしたいと考えていましたが、これまでのシステムではかなりの負荷がかかるシステム設計となっていたためMicrosoft Azureを活用して、ハイブリッドクラウド化を行い、システム負荷の分散を実施しました。
(参考)Microsoft Customer Story-Carhartt gains business agility, supports rapid business growth with SAP solutions on Azure and Teams|Microsoft
https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/848897-carhartt-consumer-goods-azure
マルチクラウドとは
クラウドコンピューティングの1つの活用方法であるマルチクラウドについて紹介します。

マルチクラウドの意味・特徴
マルチクラウドとは、複数の異なるクラウドサービス提供業者のクラウドサービスを組み合わせて、自社により最適な運用環境を構築する活用方法のことです。
例えば、AWS (Amazon Web Services)と、Microsoft Azureを組み合わせて運用環境を構築するという場合は、まさにマルチクラウドにあたります。
マルチクラウドのメリット・デメリット
メリット
・用途に応じたカスタマイズが可能
・ベンダー依存度を低減
・リスクの分散
メリットとしては、用途に応じたカスタマイズが可能となり、ベンダーへの依存度を低減させるため、ベンダーロックインを回避することができ、リスクの分散ができるというのがポイントです。
デメリット
・運用コストが高い
・セキュリティリスクが高い
デメリットとしては、運用コストが上がり、複数社のクラウドサービスを利用することによるセキュリティリスクが高まるという点です。
マルチクラウドの活用事例4選
マルチクラウドの活用方法は、多岐に渡りますが、その中でも主な活用方法を4つ紹介します。
①グローバルビジネスで、リージョンや国ごとにクラウドを使い分け
マルチクラウドは、複数の国や地域に事業展開をしているグローバル企業で、リージョンや国ごとに最適なクラウドを選定し使い分ける方法があります。
アパレルのGLOBAL WORK(グローバルワーク)やniko and…(ニコアンド)、LOWRYS FARM(ローリーズファーム)などを、国内1,342店舗と中国・その他海外などグローバルに展開する株式会社アダストリアの中国リージョンでは、中国国内で活用がしやすいAlibaba Cloud(アリババクラウド)を採用しています。
(参考)マルチクラウドソリューション導入事例:株式会社アダストリア様|株式会社日立システムズ
https://www.hitachi-systems.com/case/distribution/2003/index.html
②提供サービスや事業ごとにクラウドを使い分け
マルチクラウドは、複数の事業やサービスを展開する企業では、事業ごとやサービスごとに最適なクラウドを選択し、それぞれのクラウドを活用する方法もあります。
③社内用と顧客向けサービスでクラウドを使い分け
マルチクラウドは、社内用サービスやデータに専用のクラウドを選択し、顧客向けのサービスや事業には、それに適した専用のクラウドを選択するという方法もあります。
アパレルのGLOBAL WORK(グローバルワーク)やniko and…(ニコアンド)、LOWRYS FARM(ローリーズファーム)などを、国内1,342店舗と中国・その他海外などグローバルに展開する株式会社アダストリアでは、国内各店舗では、社内用や顧客用など利用用途に合わせてメジャークラウド、オンプレミス、データセンターを使い分けています。
(参考)マルチクラウドソリューション導入事例:株式会社アダストリア様|株式会社日立システムズ
https://www.hitachi-systems.com/case/distribution/2003/index.html
④BCP対策としてクラウドを使い分け
ハイブリッドクラウドと同様にマルチクラウドは、BCP(事業継続計画)対策として、多く活用されています。BCP(事業継続計画)とは、テロや災害、システム障害など危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意し、事業やサービス、会社を継続し続けられるようにするための計画として、経営の重要な指標の一つとなっています。
このBCPの観点から見ると、1つのクラウドサービスに依存せずに、複数のクラウドサービスを利用することで、1つのクラウドで大規模障害に陥ったときにも、別クラウドで迅速に緊急対応することができます。
ヤマトホールディングス株式会社は、3つの事業構造改革として、「宅急便デジタルトランスフォーメーション(DX)」「ECエコシステムの確立」「法人向け物流事業の強化」を実践した際にも、クラウドサービスの大規模障害に備えて、1つのクラウドサービスに依存しないマルチクラウドの体制を構築しています。
(参考)マルチクラウド実践企業から学ぶ最新クラウド事情 ──Yamato DX Night #2レポート|TECH PLAY Magazine
https://techplay.jp/column/1404
ハイブリッドクラウドとマルチクラウド
ここでは、ハイブリッドクラウドとマルチクラウドを比較しながら、違いを紹介します。

ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違いやメリット・デメリット
クラウドコンピューティングの活用方法別に「ハイブリッドクラウド」「マルチクラウド」の2種類に分けることができます。
ハイブリッドクラウド | マルチクラウド | |
---|---|---|
特徴 | ・互換性の高く利用することが可能 | ・自社に最適なクラウド環境の構築が可能 |
メリット | ・導入コストや運用コストが少ない ・クラウドの負担を分散可能 ・高度なセキュリティを構築しやすい |
・用途に応じたカスタマイズが可能 ・ベンダー依存度を低減 ・リスクの分散 |
デメリット | ・システム設計と構築が複雑 ・運用ハードルが高い |
・運用コストが高い ・セキュリティリスクが高い |
ハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドとは、上記で紹介したパブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて運用する活用方法のことです。
メリットとしては、導入コストや運用コストが少なく、クラウドの負担を分散することができ、高度なセキュリティを構築しやすいという点です。
デメリットとしては、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用するため、システム設計と構築が複雑化し、運用ハードルが高くなることです。
マルチクラウド
ハイブリッドクラウドに似た言葉としてよくマルチクラウドと間違える方がいます。このマルチクラウドとは、複数の異なるクラウドサービス提供業者のクラウドサービスを組み合わせて、自社により最適な運用環境を構築する活用方法のことです。
メリットとしては、用途に応じたカスタマイズが可能となり、ベンダーへの依存度を低減させるため、ベンダーロックインを回避することができ、リスクの分散ができるというのがポイントです。
デメリットとしては、運用コストが上がり、複数社のクラウドサービスを利用することによるセキュリティリスクが高まるという点です。

IoTBiz編集部
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