クラウドコンピューティングとは?仕組みやメリット、課題を徹底的に紹介!
クラウドコンピューティングとは?仕組みやメリット、課題を徹底的に紹介!
最近、私たちは「クラウドコンピューティング」という言葉をより頻繁に耳にするようになりました。これはIoT時代の到来を示すものであり、多くの人々がその言葉を知っているものの、正確な意味を説明できる人はまだ少ないかもしれません。 現在、クラウドコンピューティングは、企業だけでなく個人の日常生活にも大きな影響を与える技術となっています。この記事では、クラウドコンピューティングの基本的な意味から仕組みや特徴について詳しく紹介します。
目次
クラウドコンピューティングとは
はじめに、クラウドコンピューティングの基本的な意味や仕組みなどを紹介します。
クラウドコンピューティングの意味と定義
クラウドコンピューティングの意味
クラウドコンピューティング(cloud computing)とは、「クラウド」「クラウドサービス」「クラウドコンピューティングサービス」とも呼ばれ、インターネットなどのネットワークを通して、クラウドサービス提供事業者の提供するサービスを利用する仕組みです。
提供される機能には、サーバーやストレージ、データベース、アプリケーションなどがあります。
クラウドコンピューティングの提唱者
クラウドコンピューティングという概念は、1997年に南カリフォルニア大学のラムナト・チェラッパ(Ramnath Chellappa)教授によって提唱されましたが、この時はまだこのクラウドコンピューティングという概念が一般社会には普及していませんでした。
それから約9年後の2006年、当時のGoogle(現:Alphabet)の CEO(最高経営責任者)であったエリック・シュミット(Eric Emerson Schmidt)が再びこの概念に着目し、検索エンジン戦略会議(Search Engine Strategies Conference)など数々の場面で「クラウドコンピューティング」という言葉をスピーチで活用したことで一気にこのクラウドコンピューティングという概念が一般社会に広まっていきました。
クラウドコンピューティングの仕組みと特徴
クラウドコンピューティングは、サーバーをインターネット上の仮想空間(クラウド)で保有し、ストレージやデータベース、アプリケーションなどをクラウドサービス提供業者から利用する仕組みです。
クラウドコンピューティングが登場する前は、オンプレミスと呼ばれる、自社内に物理サーバーを設置し、ストレージやデータベース、アプリケーションなどを自社で構築し、利用する方法がとられていました。
クラウドコンピューティングが登場するまでのコンピューターの歴史としては、大きく4つの時代に分けることができます。
1950年 ~ 1990年頃 メインフレーム時代
1990年 ~ 2000年頃 クライアント / サーバー時代
2000年 ~ 2010年頃 Webコンピューティング時代
2010年頃 ~ クラウドコンピューティング時代
そして近年の急速な技術発展とIoTの登場により、現在では、エッジコンピューティングへの注目が集まっています。
「エッジコンピューティング」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『エッジコンピューティングとは?意味や仕組み、メリット、課題を徹底的に紹介!』
「IoT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組みを事例を交えてわかりやすく簡単に解説!』
クラウドコンピューティングの市場規模
MarketsandMarketsが2021年10月に公開した『Cloud Computing Market by Service Model (Infrastructure as a Service (IaaS), Platform as a Service (PaaS), and Software as a Service (SaaS)), Deployment Model (Public and Private), Organization Size, Vertical, and Region - Global Forecast to 2026』によると、クラウドコンピューティングの世界市場規模は2021年で4,453億ドル、2026年に9,473億ドルの市場規模となり、想定される平均年成長率は16.3%に達すると予測されています。
・2021年 4,453億ドル(日本円にすると、約50兆円)
・2026年 9,473億ドル(日本円にすると、約100兆円)
Cloud Computing Market Size, Share and Global Market Forecast to 2026|MarketsandMarkets
https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/cloud-computing-market-234.html
クラウドコンピューティングの種類
クラウドコンピューティングには、利用者別に分ける方法と、活用方法別に分ける方法、提供するリソース別に分ける方法の3パターンがあります。ここではそれぞれ詳しく紹介します。
【利用者別】クラウドコンピューティングの種類
誰がクラウドコンピューティングを利用できるかという利用者別に「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」の2種類に分けることができます。
パブリッククラウド | プライベートクラウド | |
---|---|---|
特徴 | ・必要な時に必要な分だけ利用することが可能 ・不特定多数のユーザーがいつでもどこからでも利用でき利便性の高い |
・専用のクラウド環境が構築可能 ・カスタマイズ性の高いクラウド構築、運用が可能 |
メリット | ・導入コスト、運用コストが少ない ・開発スピードの迅速化 |
・自社独自のクラウドサービスが構築可能 ・高度なセキュリティ設定が可能 |
デメリット | ・カスタマイズ性が低い ・システム障害やトラブルの対処ができない ・既存のサービスと互換性がない場合がある |
・導入コスト、運用コストが高い ・柔軟にリソースを追加や変更できない ・経験値の高い専門人材が必要 |
①パブリッククラウド
パブリッククラウドの特徴は、必要な時に必要な分だけ利用することが可能で、不特定多数のユーザーがいつでもどこからでも利用でき利便性の高いという点です。
メリットとしては、比較的に導入コストや運用コストが低く抑えられ、クラウド利用開始までのスピードや開発のスピードが早いというのがポイントです。
デメリットとしては、カスタマイズ性が低く、システム障害やトラブルがあった際には自社で対応することができず、クラウド提供業者に頼るしかないというのがポイントです。さらに、既存でサービスを構築している場合にパブリッククラウドとの互換性がないという場合もあります。
②プライベートクラウド
プライベートクラウドの特徴は、専用のクラウド環境が構築でき、自社の用途に応じたカスタマイズ性の高いクラウドシステムを構築・運用することができます。
メリットとしては、自社独自のクラウドサービスが構築できるという点と、高度なセキュリティ設定が可能な点です。
デメリットとしては、パブリッククラウドと比べて、導入コストや運用コストが高くなってしまい、柔軟にリソースの追加や変更ができないということです。さらに、クラウド構築をするためには、経験値の高い専門人材が何人も必要になります。
「パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『パブリッククラウドとプライベートクラウドの違いやメリット・デメリット、活用事例を徹底解説』
【活用方法別】クラウドコンピューティングの種類
クラウドコンピューティングの活用方法別に「ハイブリッドクラウド」「マルチクラウド」の2種類に分けることができます。
ハイブリッドクラウド | マルチクラウド | |
---|---|---|
特徴 | ・互換性の高く利用することが可能 | ・自社に最適なクラウド環境の構築が可能 |
メリット | ・導入コストや運用コストが少ない ・クラウドの負担を分散可能 ・高度なセキュリティを構築しやすい |
・用途に応じたカスタマイズが可能 ・ベンダー依存度を低減 ・リスクの分散 |
デメリット | ・システム設計と構築が複雑 ・運用ハードルが高い |
・運用コストが高い ・セキュリティリスクが高い |
①ハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドとは、上記で紹介したパブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて運用する活用方法のことです。
メリットとしては、導入コストや運用コストが少なく、クラウドの負担を分散することができ、高度なセキュリティを構築しやすいという点です。
デメリットとしては、パブリッククラウドとプライベートクラウドを併用するため、システム設計と構築が複雑化し、運用ハードルが高くなることです。
②マルチクラウド
ハイブリッドクラウドに似た言葉としてよくマルチクラウドと間違える方がいます。このマルチクラウドとは、複数の異なるクラウドサービス提供業者のクラウドサービスを組み合わせて、自社により最適な運用環境を構築する活用方法のことです。
メリットとしては、用途に応じたカスタマイズが可能となり、ベンダーへの依存度を低減させるため、ベンダーロックインを回避することができ、リスクの分散ができるというのがポイントです。
デメリットとしては、運用コストが上がり、複数社のクラウドサービスを利用することによるセキュリティリスクが高まるという点です。
「ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違いやメリット・デメリット、活用事例を徹底解説』
【提供リソース別】クラウドコンピューティングの種類
提供するリソースの種類によって、「SaaS」「PaaS」「IaaS」の3種類に分けることができます。
①SaaS(Software as a Service)
SaaS(サース / Software as a Service)とは、ソフトウェアやアプリケーションなどの機能をクラウド上で利用できるサービスです。
②PaaS(Platform as a Service)
PaaS(パース / Platform as a Service)とは、アプリケーション開発に必要な実行環境(プラットフォーム)をクラウド上で利用できるサービスです。
③IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaS(イアース / Infrastructure as a Service)とは、CPU、メモリ、ストレージやネットワークといったコンピュートリソースをクラウド上で利用できるサービス。
「SaaS・PaaS・IaaS(HaaS)の違いや関係性」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『「SaaS」「PaaS」「IaaS(HaaS)」の違いや関係性を紹介』
クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの違い
IoTの登場により、注目を集めているのがエッジコンピューティングです。
クラウドコンピューティングとの主な違いは、アーキテクチャ・データ送信・データ処理に違いがあります。
クラウドコンピューティングでは、集中型のアーキテクチャを採用し、データ処理を集中的に行い、データ送信に関しては、全データをクラウドへ送信します。
一方、エッジコンピューティングでは、分散型のアーキテクチャを採用し、データ処理を分散的に行い、データ送信に関しては、必要なデータのみをクラウドへ送信します。
クラウドコンピューティング | エッジコンピューティング | |
---|---|---|
アーキテクチャ | 集中型アーキテクチャ | 分散型アーキテクチャ |
データ処理 | 集中処理型 | 分散処理型 |
クラウドへのデータ送信 | 全データをクラウド送信 | 必要なデータをクラウド送信 |
クラウドコンピューティング:「集中型アーキテクチャ」「集中処理型」「全データをクラウド送信」
エッジコンピューティング:「分散型アーキテクチャ」「分散処理型」「必要なデータをクラウド送信」
「エッジコンピューティング」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『エッジコンピューティングとは?意味や仕組み、メリット、課題を徹底的に紹介!』
クラウドコンピューティングとオンプレミスの違い
クラウドコンピューティングとの比較対象でよく挙げられるのが、自前でサーバーを構築するいわゆる「オンプレミス」です。
クラウドコンピューティングとオンプレミスには、「導入コスト」「導入期間」「拡張性」「運用コスト」に主に違いがあります。
クラウドコンピューティング | オンプレミス | |
---|---|---|
導入コスト | ○ 無料または低コストで導入可能 |
× 自社で設備投資が必要 |
導入期間 | ○ 最短即日で利用開始可能 |
× 設備導入・開発期間を要する |
拡張性 | ○ 様々なアプリケーション、ソフトウェア、APIと連携可能 |
△ 自社で開発・運用が必要 |
運用コスト | ○ 月額利用料 |
△ システム管理費+人件費など |
クラウドコンピューティングの5つのメリット
クラウドコンピューティングの主な5つのメリットを紹介します。
1. 導入期間が短い:即日から利用可能
クラウドコンピューティングの最初のメリットは、導入までの期間が短いことです。オンプレミスのシステムと比較して、自社で物理サーバーを用意し環境構築する必要がなく、クラウドサービス提供業者のウェブサイトにアクセスするだけで即座に利用を開始できます。また、2023年現在、ほとんどの企業がクラウドコンピューティングを利用して自社のサービスを提供しています。
2. 導入コストが安い:無料または低コストで利用可能
クラウドコンピューティングの次のメリットは、導入コストが安いことです。主要なクラウドサービスプロバイダーであるAWSやMicrosoft Azureなどを利用する場合、初期費用や導入費用はかかりません。そのため、導入までのハードルが非常に低くなっています。
3. 拡張性が高い:様々な連携が可能
クラウドコンピューティングの第三のメリットは、高い拡張性です。クラウドコンピューティングでは、さまざまなアプリケーション、ソフトウェア、APIとの連携が可能です。これはクラウドコンピューティングの特徴の一つです。
4. 運用コストが安い:月額利用料のみで利用可能
クラウドコンピューティングの次のメリットは、運用コストが安いことです。AWSやGoogle Cloudなどでは、利用量に応じた従量課金が一般的です。これに対してオンプレミスでは人件費やシステム管理費などが追加でかかるため、クラウドコンピューティングは非常に低コストで利用できる特徴があります。
5. 利便性が高い:いつでもどこでも接続可能
クラウドコンピューティングの最後のメリットは、高い利便性です。インターネットに接続できる環境があれば、いつでもどこからでもアクセスすることができます。
クラウドコンピューティングの1つのデメリット
とても利便性の高いクラウドコンピューティングにも唯一のデメリットが存在します。ここでは、クラウドコンピューティングのデメリットを紹介します。
①【提供終了のリスクがある】突然サービス終了が終了する可能性
クラウドコンピューティングを利用する上で、知っておきたい唯一のリスクは、「クラウドサービス提供の終了のリスクがある」ということです。
現在では、世界中のほとんどのウェブサービスがクラウドサービスを利用しているため、現実的には想像し難いことですが、仮にAWSやGoogle Cloudがクラウドサービス提供を終了することがあれば、世界中で大混乱が起きることでしょう。
ただし、AWSやGoogle Cloudがクラウドサービスの提供が終了しても大丈夫なように、別の手段も考えておくことが必要です。
クラウドコンピューティングの提供企業
ここでは、世界中で利用されているシェアの大きい4社のクラウドコンピューティングの提供企業を紹介します。
シンガポールのCanalys社が発表した世界中のクラウドインフラのシェア率では、1位が33%で「AWS(Amazon Web Sercices)」、2位が22%で「Microsoft Azure」、3位が9%で「Google Cloud」となりました。
(参考)Global cloud services spend exceeds US$50 billion in Q4 2021 |Canalys Newsroom
しかしながら、調査元によっては、世界シェア1位が「AWS(Amazon Web Sercices)」、2位が「Microsoft Azure」、3位が「Alibaba Cloud」、4位が「Google Cloud」という調査結果もあります。
そのため、現在クラウドコンピューティングの世界シェアが多い4社は、「AWS(Amazon Web Sercices)」「Microsoft Azure」「Alibaba Cloud」「Google Cloud」となります。
AWS (Amazon Web Services)
特徴
AWS (Amazon Web Services)は、Amazonのグループ会社であるAWS社が提供するクラウドサービスです。
世界中の大手クラウドサービスの中では最もはじめにサービスを開始しました。2022年現在の世界シェア率は33%で、世界シェアNo.1です。
サービスサイト
https://aws.amazon.com/jp/
Microsoft Azure
特徴
Microsoft Azureは、Microsoft社が提供するクラウドサービスです。
2022年現在の世界シェア率は22%で、世界シェアNo.2です。
サービスサイト
https://azure.microsoft.com/ja-jp/
Google Cloud
特徴
Google Cloudは、アルファベット社のグループ会社であるGoogle社が提供するクラウドサービスです。
2022年現在の世界シェア率は9%で、世界シェアNo.3です。
サービスサイト
https://cloud.google.com/
Alibaba Cloud
特徴
Alibaba Cloudは、Alibaba社が提供するクラウドサービスです。2022年北京オリンピックのコアシステムとしても採用された実績があり、現在では、Google CloudやMicrosoft Azureの世界シェアに匹敵するほどの成長をしています。
サービスサイト
https://www.alibaba.co.jp/service/alibabacloud/
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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