AWS IoT Coreとは?仕組みや機能、Azureとの違いを解説
AWS IoT Coreとは?仕組みや機能、Azureとの違いを解説
この記事では、近年注目の集まる「AWS IoT Core」について、AWS IoT Coreの仕組みや機能、サービスをわかりやすく解説します。
目次
AWS IoT Coreとは
IoTは概念で、AWSはアマゾン提供のWebサービスです。AWS IoT Coreは抽象的なIoTを具現化するサービスです。物理的なインターネットにIoTデバイスを接続しメッセージをルーティングできます。
大きな特徴は、最低利用料金の設定や強制的使用料はなく、使ったコンポーネントのみの支払い方式となっている点です。
「AWS料金計算ツール」があり、想定するデバイス状態、ストレージ、レジストリの使用量、ルールエンジンの使用量などを事前にシミュレーションができます。
また、AWS IoT Core「AWS無料利用」枠の設定もあり、12カ月間の試用期間もあります。
(参考)AWS IoT Core の料金| アマゾン ウェブ サービス (AWS)
IoTとは
IoTはInternet of Thingsの頭文字を取ってIoTと呼ばれます。
日本語での直訳は、「物(モノ)のインターネット」となります。Thingsが複数形ですから、多くの「物」と「物事」をインターネットに繋いで何らかのメリットを生み出そうとする、技術概念のことです。
Webサービスでは多くのデバイスをネットワークに接続して、効率よくかつデータ欠損などが起きないように信頼性のあるルーティング(道先案内)が必要です。
「IoT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『IoTとは?Internet of Things(モノのインターネット)の意味や仕組み、事例を解説』
M2Mとは
IoTに似たものとしては、M2M(エムツーエム)と呼ばれる概念があります。Machine to Machineの省略形でM2Mとなっています。to=2に置き換えてM2Mです。
IoTの場合は接続にインターネットを経由しますが、M2Mではマシン間(デバイス間)の直接接続も想定されます。
そのため「閉じたネットワーク」上でセキュアなデータのやり取りも行えます。
自動販売機や自動運転などのインターネット接続が不安定(不要)なシーンでもマシンの効果的制御が可能です。
「M2M」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『M2M(Machine to Machine)とは?意味や仕組み、IoTとの違い、事例を紹介』
AWS IoT Coreの仕組み
AWS IoT Coreとは、クラウド管理のプラットフォーム(マネージドクラウドプラットフォーム)です。
インターネット上のデバイスとデバイスやクラウドアプーリケーションを安全に通信するためのマネジメントシステムで、何十億個のIoTデバイス接続と何兆メッセージをもAWSにルーティングできます。
AWS IoT Coreの機能
IoTの管理・運用には、多くのIoTデバイスの管理とデータの効果的活用は必須です。これを独自に構築するには膨大な時間とコストが発生します。
これらを引き受けてくれるのがAWS IoT Coreです。
基本的な機能は、IoTデバイスの一元管理、データ収集・分析、デバイス制御と管理です。このことにより、ユーザーは複数のIoTデバイスの管理を容易にするだけではなく、デバイス機能をさらに向上させる使用法やセキュリティ向上が可能になります。
Device Advisor
何らかの開発をする時に、途中でテストやパフォーマンスを確かめたいのは開発者の性(サガ)です。
この検証を可能にしてくれるのがDevice Advisorです。このDevice AdvisorはIoTデバイスがなくても検証環境が作成できます。
デバイスソフトウェアの開発中にIoTデバイスのテスト機能を有していますので、本稼働環境に配置する前に信頼性や安全性を検証できます。
まさにデバイスのためのアドバイザーなのです。
AWS IoT Core for LoRaWAN
LoRaWANとは、Long Range Wide Area Networkのことで、省電力長距離通信を実現する仕様です。米半導体メーカーのセムテック社が開発し「LoRa Alliance」(世界のIoT関連企業480社以上の非営利団体)で標準化されたものです。
AWS IoT Core for LoRaWANは、AWS IoT CoreのユーザーがAWS上でLoRaWANを利用できるように、消費電力を抑え長距離の通信を可能にする大規模ネットワーク構築を実現するためのプロトコルです。
AWS IoT Coreサービスの一覧
AWS IoT Coreには幾つかのサービスが存在します。
「デバイスソフトウェア」「接続とコントロールサービス」「分析サービス」です。
それぞれの概要を紹介します。
(参考)AWS IoT の仕組み|AWS
デバイスソフトウェア
IoTデバイスを接続しエッジ側でコントロールします。
FreeRTOS
Freeの名が示すように、オープンソースのMCU(Micro Controller Unit)向けOS(Operating System)です。
MIT(マサチューセッツ工科大学)のオープンソースライセンス下で配布されている高信頼の高速で応答性の高いOSです。シンプルで小さいため、ダウンロード後すぐにコンパイルして即時にテスト、運用ができます。
サポートされているアーキテクチャも多く主なものに、ARM、Atmel AVR、HCS12、TI MSP430、PCIコントローラ各種、ルネサス、インテルx86,8052、NEC V850、富士通FRファミリなどがあります。
AWS IoT ExpressLink
AWS IoT ExpressLinkは、クラウド接続するIoTデバイス用のモジュールと接続用ソフトウェアのセットです。
従来の開発では、物理層とアプリケーションの間に何層ものサービスや認証が必要でしたが、AWS IoT ExpressLinkを使えば、アプリケーション以外の大部分が不要になります。
ただしモジュールのハードウェアはAWSパートナーによって開発・認証されたものです。
パートナーとしては、Espressif社、infineon Technologies社、u-blox社、Realtek社などがあります。
AWS IoT Greengrass
AWS IoT Greengrassは、AWSのIoTプラットフォームの機能をローカルデバイス(エッジ側)に拡張する仕組みです。
IoTシステムではIoTデバイスからいろいろなデータを取得してAIで分析し、その結果でデバイスをコントロールしています。
そのAWS IoTの機能を現場でも使えるようにしたのがGreengrassです。
Greengrassによって、IoTシステムの構築に必要なクラウドの機能がエッジ側に作られて、デバイスから取得したデータをクラウドまで飛ばさずに現場で処理できます。いわゆるエッジコンピューティング環境が作れる訳です
コントロールサービス
IoTソリューション内のデバイスコントロールは各種のAWS IoTサービスに接続します。
AWS IoT Core
AWS IoT Coreは接続されたデバイスが安全に他のデバイスやアプリケーションとやり取りできるようにするための、マネジメントサービスです。
外部デバイスとクラウドを安全に接続してくれます。
デバイスからAWSにアクセスする時のエンドポイント認証処理やイベントの実行などを統合的に管理できます。AWS IoT Core を使用すればアプリケーションは接続されていない場合でも、すべてのデバイスからレスポンスを得られます。
AWS IoT Device Management
接続されたIoTデバイスを一括管理できるのがAWS IoT Device Managementです。IoTデバイスを登録、モニタリング、編成、リモート管理ができます。
デバイスの製造元、シリアルナンバー、ID証明書、セキュリティポリシーなどが入力されたテンプレートを登録する時にも役立ちます。
AWS IoT Device Managementでは階層構造にデバイスをグループ化することが可能です。部屋ごと、フロアごと、建物内の全てなど、デバイスをグループ化できます。
グループ化したものは、アクセスポリシー管理、運用メトリクス表示、グループ全体のデバイスへのアクション実行が可能です。また動的グループを使ってデバイスの組織化を自動化でき、指定された条件のデバイス追加と条件を満たさないデバイスの自動削除を実行します。
AWS IoT Device Defender
AWS IoT Device Defenderはその名の通り、AWSのIoTデバイスを保護するサービスです。
通常とは違ったデバイス動作を検知して必要に応じてレポートしてくれます。
例えば認証に失敗した回数を監視することでイレギュラー動作を検出します。セキュリティ侵害や誤動作検知などのさまざまな兆候を知らせてくれます。
機械学習検出に対応しているので、機械学習モデルによって動作を自動設定することも可能です。機械学習によって履歴データをもとにデバイス動作のモデル化ができます。特定アクションが誤検知を引き起こす場合などには、機械学習検出の動作の更新でアラームの制御も可能です。
AWS IoT FleetWise
車両データの収集、変換、AWSへの送信を簡単に効率良く行えるサービスがAWS IoT FleetWiseです。
自動車メーカーの膨大な車両データを管理する技術面(データフォーマットなど)、経済面(接続コストなど)、組織面(データのサイロ化など)の困難を軽減するソリューションです。
AWS IoT FleetWiseは、車両データへの標準的なアクセスを可能にし、自動車メーカーや車両サービスが複数の車両データソースからのデータを標準的な方法で収集します。収集したデータを専用データベースやオブジェクトストレージに格納後効率的に照会できます。
また、クラウドへ取り込むためのデータ量をインテリジェントのデータフィルタリング機能で削減できます。
AWS IoT RoboRunner
IoTの活躍分野でロボットの制御は欠かせない課題です。このAWS IoT RoboRunnerはロボットが走る(走行)時にぶつからないようにし、違うメーカーや機種の連携を助けるコントロールサービスです。
その特徴は、それぞれのメーカーや機種のロボットデータをゲートウエイ経由でAWS IoT RoboRunnerに連携させることです。
AWS IoT RoboRunnerの中に箱(リポジトリ)を作ってアプリケーションを一括で管理し、Task Managerを使ってロボットの作業内容(タスク)を管理します。
これがあれば、あのアマゾンの倉庫内の整然としたロボットたちの動きが実現できる訳です。
AWS IoT 1-Click
AWS IoT 1-Clickは、ワンクリックでIoTデバイスを制御できるサービスです。
特定のアクションを実行するLambda関数に対応デバイスからトリガーできるようにするサービスです。
AWS IoT 1-Clickを使えばユーザーがシンプルなIoTデバイスをワークフローに簡単に組み込めます。デバイスの製造やファームウェアの制作、セキュアな接続設定は必要ありません。
AWS IoT 1-Clickデバイスをソフトウェアコンポーネントとして表示できるため、他のコンポーネントと同様にアプリケーションを構築できます。
分析サービス
IoTデバイスのデータを最大限に分析、利用するためにAWS IoTでは多くの分析サービスが存在しています。
AWS IoT Analytics
AWS IoT Analyticsは、大量のIoTデバイスのデータ分析に必要なステップを自動化できます。
このサービスは、分析用の時系列データストアに保存する前のデータフィルタリングの変換が行われ、デバイスから必要なデータのみを収集します。
分析ツールでIoTデータを処理し、データの誤差情報や送信元のデバイス状況なども管理できます。
これらによって、デバイスのエラー情報からのアプリ停止、作業の自動化トラブルなどを未然に防ぐ要素が出てくるため生産性が上昇します。
AWS IoT Events
IoTセンサーやアプリケーションで発生したイベントを検出するのがAWS IoT Eventsです。デバイスやデバイスフリートの障害や動作変更をモニタリングして必要なアクションを開始します。
例えば、一定時間にデータが上がってこなかった時にはアラートを出すなどのアクションを実行するような場合です。
無線LANなどで、たまたまネットワークが不安定で、点検・アップデートで一時的に通信が行われない時と区別ができます。
アラート機能の実装などは、AWS IoT Eventsの「アラームモデル」を利用すればノーコードで簡単に実現できます。
AWS IoT SiteWise
AWS IoT SiteWiseは産業機器からのデータの収集、整理、分析、視覚化を簡素化するマネジメントサービスです。
施設全体の機器をモニタリングして、機器やプロセスの障害、生産プロセスの非効率性、製品の欠陥などの問題を特定します。
生産効率を上げ、製造オペレーションを改善できます。履歴データを使用したリモートアセットモニタリングによって、機器の問題の防止・検出・解決が可能です。重大問題のメンテナンスワークロードの対応に優先順位を付けることもできます。
AWS IoT TwinMaker
ここで扱うTwinとは「双子」のことで、デジタル的に現実世界のシステムをモデル化することです。
AWS IoT TwinMakerはIoTセンサー、ビジネスアプリケーション、ビデオフィードなどの複数ソースから既存データを使用してデジタルツインを構築します。あらゆる物理環境の仮想表現に適した、既存の3Dモデルと実世界のデータを組み合わせるツールの提供もします。
AWS IoT TwinMakerのデジタルツインの作成によって、オペレーションの全体像を迅速かつ少ない労力で把握できます。
Amazon Kinesis Video Streams
Amazon Kinesis Video StreamsはAWSによるストリーミング動画の解析、再生のためのサービスです。ビデオストリーミングから画像を抽出するAPI(Application Programming Interface)とSDK(Software Development Kit)を提供します。
デバイスからAWSへビデオのライブ配信やリアルタイムのビデオ処理、ビデオ分析のためのアプリケーションも構築できます。
このサービスを使えば誰でもスマートホーム、セキュリティモニタリング、産業オートメーション、スマートシティに関わるアプリケーションを作れます。
Amazon Kinesis Video Streamsに用意されているSDKを利用するとデバイスのメディアソースを安全にAWSにストリーミングして、再生、分析、機械学習などの処理も行えます。
次のようなデバイスやデータソースからデータ取得が可能です。
スマートフォン、セキュリティカメラ、レーダー、ドローン、車載カメラ、衛星、深度センサーなどなど。
AWS IoT CoreとAzure IoT Hubの違い
最後にMicrosoft社の同様のIoTクラウドサービス、Azure IoT Hubについて触れておきましょう。
一番気になる料金ですが、Aws IoT Coreは従量課金制です。Azure IoT Hubは従量課金ではなく「Azure IoTHub料金プラン」が用意されています。
先発のAWSは情報量も多く、柔軟性と拡張性に優れているので、新規事業の立ち上げや事業の拡大縮小が未定の場合には適しています。
機能的には、両方ともIoTクラウド環境構築の機能は備えており開発者側のスキル(好み?)と規模による費用対効果で決まります。
(参考)AWS サービスと Azure サービスの比較|Microsoft
「Azure IoT Hub」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『Microsoft Azure IoT Hubとは?仕組みや機能、料金、AWSとの違いを解説』
まとめ
IoTの利用にクラウドはなくてはならない存在です。どのプラットフォームを選定するか(併用するか)は、ユーザー環境と最終的に目指すもので変わってきます。
クラウドのプラットフォームのシェアではAmazonの AWSがMicrosoftのAzureに僅差でトップに立っています。けれどもAzureのエンドユーザーコンピューティングの圧倒的な強さを誇るWindowsとの親和性は無視できないでしょう。
ただし、エンドユーザーのデバイスのプラットフォームがPCからスマートフォンや他のデバイスに移行しつつある現在、その前提を見直す時期に突入しています。
既に「一強」の時代は終焉を迎え、ユーザーオリエンテッドの分散環境で最適なソリューションを選択する時代と言えます。
そのような中でAWS IoT Coreは、IoTクラウド環境構築に最適なツールの豊富さに特徴が表れています。
AWS IoT Coreは「最低利用料金の設定や強制的使用料はなく、使ったコンポーネントのみの支払い方式」「想定するデバイス状態、ストレージ、レジストリの使用量、ルールエンジンの使用量などを事前にシミュレーション」が可能な選択肢となっています。
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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