スマートホームの新たな共通規格「Matter」とは?特徴やメリットデメリットを紹介
スマートホームの新たな共通規格「Matter」とは?特徴やメリットデメリットを紹介
新しいスマートホームの共通規格「Matter」が注目を集めています。従来の異なるプラットフォーム間の相互運用性を解決するこの規格は、Google、Amazon、Appleなどの主要テクノロジーカンパニーが参加するCSA(Connectivity Standards Alliance)によって開発されました。Matterは、異なるメーカーやデバイス間での相互運用性を実現し、スマートホームのユーザーエクスペリエンスを向上させることを目指しています。この記事では、Matterの誕生背景や特徴、メリット、デメリットについて詳しく解説していきます。
目次
スマートホームの新たな共通規格「Matter」とは
スマートホームの新たな共通規格「Matter」は、従来の異なるプラットフォーム間での相互運用性を実現するための取り組みです。この規格は、Google、Amazon、Appleなどの主要なテクノロジーカンパニーが参加するCSA(Connectivity Standards Alliance / コネクティビティ・スタンダード・アライアンス)によって開発されました。Matterは、異なるメーカーやデバイス間での相互運用性を実現し、スマートホームのユーザーエクスペリエンスを向上させることを目指しています。
「スマートホームデバイス」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
『【2023年最新】スマートホームデバイスとは?おすすめ製品を紹介』
Matter誕生の背景
Matterの誕生前は、異なるメーカーごとに利用される通信規格が統一されておらず、異なるメーカーのIoTデバイス同士がシームレスに連携することが難しい状況でした。このため、消費者は機能やデザインよりもメーカーを選択する必要があり、スマートホームの普及に制約が生じていました。Matterは、こうした問題を解決するために誕生しました。
スマートホームの新たな共通規格「Matter」の発展についての詳細を補足します。
「Matter1.0」のリリース
2021年5月11日に新たなスマートホームのための通信規格「Matter」が発表され、その後、約1年5ヶ月で「Matter1.0」がリリースされました。この期間中、リリースが何度も延期されたことから、「Matter」が実現するのかについて疑念が広まりましたが、2022年10月4日にCSAはMatter1.0標準と認証プログラムのリリースを発表しました。
CSAの社長兼CEOであるトービン・リチャードソン氏は、「Matter」が複雑な接続性を解明するミッションとして始まり、IoTを根本的に変える単一のグローバルIPベースプロトコルを生み出したと述べ、このリリースがIoTをよりシンプルで、安全で、価値のあるものにするための一歩であると強調しました。さらに、アライアンス理事会議長であるブルーノ・ボルケーノ氏は、何千人ものエンジニアや知的財産、ソフトウェアアクセラレータ、セキュリティプロトコルを提供し、真にグローバルな取り組みの実現に貢献したアライアンスメンバーの力と献身に感謝の意を示しました。
(参考)新時代のIoT規格「Matter1.0」が始動開始|IoTBiz|DXHUB株式会社
CSA(コネクティビティ・スタンダード・アライアンス)について
CSA(Connectivity Standards Alliance / コネクティビティ・スタンダード・アライアンス)は、「Zigbee」の開発および「Matter」規格の維持や公開を行う米国の無線通信規格標準化団体です。会員には、AmazonやGoogle、Apple、HUAWEI、SAMSUNGなど400以上の企業が参加しており、2002年に「Zigbee Alliance」として発足し、2021年5月11日に改名を行いました。
CSAは、世界中に均等に分散したメンバーで構成され、単一の地域や大陸だけでなく、メーカーや顧客、消費者にも利益をもたらす真にグローバルな取り組みを実現しています。
これらの情報は、Matterの発展とその規格を推進する団体であるCSAに関する重要な背景情報を提供しています。
Matterでスマートホームやスマート家電はどう変わる?
Matterのリリースにより、従来はメーカーごとに異なっていた通信方式やIoTデバイスが一貫した規格に統一されます。これにより、消費者や不動産デベロッパーはスマートホーム化をより簡単に実現できるようになります。また、ネットワークセキュリティの強化や信頼性の向上により、スマートホームの利便性と安全性が高まるでしょう。
ただし、Matterはまだ新しい規格であり、すべてのIoTデバイスがすぐに対応するわけではありません。そのため、導入や普及には時間がかかる可能性があります。
Matterの特徴
Matterの特徴は以下の4点に集約されます。
・シンプルさ (Simplicity):消費者は購入してすぐに利用できます。
・相互運用性 (Interoperability):異なるメーカーのIoTデバイス同士がシームレスに連携します。
・信頼性 (Reliability):インターネットが切断されてもローカルで接続できます。
・安全性 (Security):堅牢なセキュリティのもと、開発者・消費者が安心して利用できます。
これらの特徴により、Matterはスマートホームの共通規格としての役割を果たしています。ここからは、Matterの特徴についてより詳しく紹介します。
シンプルさ (Simplicity)
Matterは、シンプルで直感的な操作を提供することを重視しています。消費者は、購入したデバイスをすぐにセットアップし、利用できるように設計されています。これにより、ユーザーは複雑な設定や技術的な知識が不要で、スムーズなスマートホーム体験を享受できます。
相互運用性 (Interoperability)
Matterは、異なるメーカーのIoTデバイス同士がシームレスに連携できるように設計されています。つまり、ユーザーは異なるブランドやプラットフォームのデバイスを組み合わせて利用することができ、スマートホームシステムをより柔軟に構築できます。これにより、ベンダーロックインの問題が解消され、消費者は自由にデバイスを選択できます。
信頼性 (Reliability)
Matterは、インターネット接続が切断されてもローカルネットワーク内での通信を維持できるように設計されています。つまり、デバイス間の通信や操作は、インターネットへの依存度が低く、信頼性が高いという特徴があります。これにより、ユーザーは常にスマートホーム機能を利用できるため、便利さと利便性が向上します。
安全性 (Security)
Matterは、堅牢なセキュリティプロトコルを採用しており、開発者や消費者が安心してデバイスを利用できるように設計されています。これにより、プライバシーや個人情報の保護が強化され、セキュリティリスクが最小限に抑えられます。安全性の高いスマートホーム環境が構築されることで、ユーザーは安心してスマートホームテクノロジーを活用できます。
スマートホームの新たな共通規格「Matter」のメリット
ここからは、スマートホームの新たな共通規格「Matter」のメリットについて、詳しく紹介していきます。
・相互運用性の向上
・ベンダーロックインの解消
・安全性とプライバシーの向上
・製品の信頼性の向上
・既存デバイスへの対応が可能
・デバイス登録が簡単
相互運用性の向上
Matterは、異なるメーカーやプラットフォームが共通の規格に基づいてデバイスを開発できるため、ユーザーは異なるデバイスをシームレスに統合し、一元的に管理することができます。従来のスマートホームの構築では、各メーカーが独自の通信プロトコルを使用していたため、異なるデバイス同士の連携が難しかったのですが、Matterの導入によりこの問題が解消されます。
ベンダーロックインの解消
Matterは、ベンダー固有のプロトコルに依存しないため、ユーザーは自由に異なるメーカーのデバイスを選択できます。従来は特定のメーカーのデバイスを選択することで、そのメーカーのエコシステムに固執せざるを得なかったのですが、Matterの普及により、ユーザーは自由度の高いスマートホームを構築できるようになります。
安全性とプライバシーの向上
Matterはセキュリティとプライバシーに焦点を当てて開発されており、安全で信頼性の高いスマートホームエコシステムを提供します。デバイス間の通信やデータの取り扱いにおいて、堅牢なセキュリティプロトコルが採用されています。これにより、ユーザーはプライバシーやセキュリティリスクを気にすることなく、スマートホームテクノロジーを活用できます。
製品の信頼性の向上
Matterは、Google、Apple、Amazonなどの大手テクノロジーブランドをはじめ、多くのメーカーやプロダクトが参加しているCSAによって推進されています。このような幅広い業界の主要企業のサポートにより、Matterの信頼性と持続的なサポートが期待されます。また、CSAの会員数は400を超えており、多様なブランドやプロダクトの参加によって、Matterの普及が加速されることが期待されます。
既存デバイスへの対応が可能
Matterは、ソフトウェアアップデートを介して既存のスマートホームデバイスに対応できるように設計されています。これにより、ユーザーは新しいデバイスを購入する必要なく、既存のデバイスをMatterに対応させることができます。この特性により、ユーザーはコストを抑えつつスマートホームの機能を拡張することができます。
デバイス登録が簡単
Matterでは、デバイスの登録がQRコードで簡単に行えます。従来のデバイス登録方法に比べて手間がかからず、ユーザーの利便性が向上します。これにより、スマートホームの導入がより容易になり、ユーザーのストレスが軽減されます。
スマートホームの新たな共通規格「Matter」のデメリット
スマートホームの新たな共通規格である「Matter」は、確かに注目されていますが、いくつかのデメリットも存在します。ここからは、デメリットを詳しく紹介します。
・対応デバイスが限定的
・対応家電は一部の操作が未対応
・ペアリングやセットアップの課題
・日本と海外でのニーズの違いによる課題
・価格や開発コストの問題
対応デバイスが限定的
現時点では、Matterに対応するデバイスが限られています。例えば、Matter 1.2までの対応デバイスには冷蔵庫やロボット掃除機などが含まれていますが、まだまだ対応デバイスは限られています。そのため、Matter対応と未対応のデバイスが混在し、利用するアプリも使い分ける必要があります。
対応家電は一部の操作が未対応
Matter対応製品でも、全ての操作をサポートしているわけではありません。例えば、Matter 1.1では音声操作も一部の機能に限定されています。これは、利用者が従来通りの操作を行う際に制限を受ける可能性があることを意味します。
ペアリングやセットアップの課題
Matterのバージョンでは、2.4GHz帯のWi-Fiを前提としているため、5GHzのWi-Fiを使用している場合は2.4GHzに設定を変更する必要があります。これにより、ペアリングや初期設定に苦労するユーザーが出てきます。また、通信速度が求められる今日、2.4GHzへの切り替えが望ましくない場合もあります。
日本と海外でのニーズの違いによる課題
日本と海外でのスマートホーム市場のニーズの差が、Matterに対するユーザーの満足度を低下させる可能性があります。例えば、日本市場ではスマートリモコンのニーズが高い一方で、海外ではそれほど重要視されないことが挙げられます。そのため、日本製のリモコン機能がMatter対応していない場合、ユーザーは不満を抱く可能性があります。
価格や開発コストの問題
Matter対応製品は、Matter認証費用などの追加コストがかかるため、価格が高くなる傾向があります。また、Matter対応のための開発コストも高くなるため、同じ機能を持つ製品でもMatter対応製品は価格が高くなる可能性があります。
これらのデメリットを踏まえると、Matterが普及していく過程で解消される可能性もありますが、現時点ではまだ課題が残っています。
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IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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