強いAI(汎用型、AGI)と弱いAI(特化型)とは?特徴と違い、具体的な事例を紹介
強いAI(汎用型、AGI)と弱いAI(特化型)とは?特徴と違い、具体的な事例を紹介
AI(人工知能)が私たちの生活に急速に浸透している最近、おそらく「強いAI」「弱いAI」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。私たちの身近なAIは、具体的には強いAIなのか、それとも弱いAIなのか、気になるところです。 まず、AIとは一体何なのでしょうか?そして、強いAIと弱いAIの定義や意味は何でしょうか?この記事では、AIに焦点を当てつつ、強いAIと弱いAIについて解説します。
目次
ChatGPT、Bardで注目の集まる生成AI市場
ChatGPTの登場により、ジェネレーティブAI(生成AI)に対する関心が急速に増加しています。Statistaによると、ChatGPTの2022年11月の登場以来、Google検索における「ジェネレーティブAI」に対する関心は着実に高まり、その関心度指数は2023年2月に過去最高に達しました。
現在、ChatGPTはジェネレーティブAIの代表としての地位を築いていますが、ジェネレーティブAI市場にはさまざまなプレーヤーが存在し、ジェネレーティブAIの認知度が高まるにつれて、今後ますます競争が激化することが予想されています。
ChatGPTはチャット、文章生成、翻訳、コーディングなど、さまざまなタスクをこなす多目的なAIツールですが、市場には各タスクに特化したAIツールが多数存在しています。Venturebeatの市場分析によれば、テキストベースのジェネレーティブAI企業だけでも700社以上存在しています。
強いAI(汎用型、AGI)と弱いAI(特化型)の意味
AI(人工知能)とは
AI(人工知能)について説明する前に、まずは「強いAI」「弱いAI」について知る必要があります。AIは「エーアイ」と読み、"artificial intelligence"の略で、日本語では「人工知能」と訳されます。AIは、人間の知的な振る舞いをソフトウェアを使って人工的に再現したシステムです。
強いAI(汎用型AI)(AGI)とは
「強いAI」とは、人間の知能に近い機能またはそれ以上の機能を持ち、自己意識や精神を備えたAIのことを指します。同様の意味で使用される言葉として「汎用型AI」という表現もありますが、これは強いAIと同義です。
AGI(Artificial General Intelligence)という新たな概念
AGI、または「汎用人工知能」は、高度な知性を持つAIの一種です。この技術は、日本を含むIT先進国で急速に発展していますが、現時点ではまだ未来の技術といえます。
AGIの最大の特徴はその「汎用性」であり、人間の生活に密着した既存のAI技術とは一線を画します。もしAGIが実現すれば、SF映画のような未来の世界が現実のものとなる可能性もあると言われています。
「弱いAI」(特化型AI)とは
「弱いAI」とは、人間の知能の一部に特化した機能を持つAIのことを指します。同様の意味で使用される言葉として「特化型AI」という表現もありますが、これは弱いAIと同義です。
強いAI(汎用型、AGI)と弱いAI(特化型)の提唱者ジョン・サール
「強いAI」「弱いAI」という言葉を提唱したのは、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の元名誉教授のジョン・ロジャーズ・サール(John Rogers Searle)という哲学者です。ジョン・サール氏は、学術論文『Minds, brains, and programs』の中でこの「強いAI」「弱いAI」という用語を考案しました。
強いAIのことを英語では、「strong AI」「full AI」「general intelligent action」と呼びます。また、弱いAIのことを英語では、「weak AI」「narrow AI」と呼びます。
(参考)『Minds, brains, and programs』|Cambridge Core
【孫正義の見解】強いAI(汎用型、AGI)の実現は10年以内
「SoftBank World 2023」は、4日間にわたって開催され、今年のテーマは「テクノロジーの新潮流。今、世界が動きだす。」でした。孫正義氏はAGI(Artificial General Intelligence)について語り、その特性や影響について議論しました。
AGI(Artificial General Intelligence)についての重要なポイントは、その汎用性と影響に関連しています。AGIは、高度な知能を持つAIの進化形で、特定のタスクに限定されず、広範な知的活動に適応できる能力を指します。この汎用性は、今までのAIとは異なり、さまざまな産業と個人の生活に大きな影響を与える可能性を秘めています。
AGIの実現時期については様々な予測がありますが、孫正義氏は今後10年以内にAGI時代が到来すると予測しています。この予測は、AI技術の急速な進化に裏打ちされており、その実現は急速に迫っているとされています。
AGIが実現する場合、様々な分野において大きな変革が生じるでしょう。例えば、自動車やモビリティ分野では完全な自動化が進み、小売業や飲食業ではデータの活用による需要と供給の最適化が実現されるでしょう。また、コールセンターでは感情認識技術によりカスタマーサポートが向上し、投資戦略や医療分野においても大きな変化が起こるでしょう。AGIの実現に備え、個人、企業、政府は適切な対策を講じる必要があり、この新しい時代に向けた戦略を検討する重要性が高まっています。
(参考)AIは「AGI」へと進化し、今後10年で全人類の叡智の10倍を超える。孫正義 特別講演レポート|ビジネスブログ|ソフトバンク
強いAI(汎用型、AGI)と弱いAI(特化型)の違い
強いAIはより高度な知能を持ち、広範なタスクや状況に対応できる能力があります。一方、弱いAIは特定の任務に特化しており、限定的な知能しか持っていません。強いAIは人間の知能に近い総合的な能力を追求する一方、弱いAIは特定の問題解決やタスク自動化を目的としています。
機能の範囲
強いAIは、幅広い知的機能を持ち、人間の知能に近いあらゆるタスクを遂行することができます。一方、弱いAIは特定のタスクや領域に特化した限定的な知能を持ちます。
自己学習能力
強いAIは、経験やデータから学習し、新しい知識やスキルを獲得する能力があります。それに対して、弱いAIはあらかじめプログラムされた指示やルールに基づいてタスクを実行しますが、自己学習は行いません。
自己意識の有無
強いAIは自己意識や意識体験を持つ可能性があります。つまり、自己を認識し、感情や意識的な思考を持つことができます。一方、弱いAIはあくまでプログラムによって制御されるため、自己意識はありません。
柔軟性と応用範囲
強いAIは新しい状況や問題に対して柔軟に適応し、応用することができます。一方、弱いAIは特定の任務や目的に限定されており、それ以外の領域では十分な能力を持たない場合があります。
強いAI(汎用型、AGI)と弱いAI(特化型)の具体例
ここでは、強いAI・弱いAIの実際の具体例を紹介します。
意味 | 具体例 | |
---|---|---|
強いAI(汎用型AI) | 「強いAI」とは、人間の知能に近い機能または人間の知能以上の機能をもち、そこに自意識や精神をも備えているAI | ・2001年宇宙の旅「HAL9000」・ブレードランナー「レプリカント」・オートマタ「オートマタ」・ターミネーター「スカイネット」・エクス・マキナ「エヴァ」など |
弱いAI(特化型AI) | 「弱いAI」とは、人間の知能の一部に特化した機能をもつAI | ・囲碁AIプログラム「Alpha Go」・スマートホームアシスタント「Amazon Echo & Alexa」・無人レジ・音声アシスタント「Siri」・自動運転・人型ロボット「Pepper」など |
強いAI(汎用型、AGI)の具体例
2022年現在、強いAIの実現はされていません。
しかしながら、昔から多くのSF映画で「強いAI」を用いた作品があります。強いAIが登場している映画をいくつか紹介します。
強いAIの具体例
・2001年宇宙の旅「HAL9000」
・ブレードランナー「レプリカント」
・オートマタ「オートマタ」
・ターミネーター「スカイネット」
・エクス・マキナ「エヴァ」
など
弱いAI(特化型AI)の具体例
2022年現在、世界中で開発されているAIのすべては、弱いAIに該当します。
弱いAIの具体例
・囲碁AIプログラム「Alpha Go」
・スマートホームアシスタント「Amazon Echo & Alexa」
・無人レジ
・音声アシスタント「Siri」
・自動運転
・人型ロボット「Pepper」
など
強いAIの誕生 = シンギュラリティ
強いAIが語られる際によく使われる言葉が「シンギュラリティ(技術的特異点)」と「2024年問題」です。ここでは、「シンギュラリティ(技術的特異点)」と「2024年問題」について紹介します。
シンギュラリティと2045年問題
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、1980年代からAI研究者の間で使われている言葉で、人間と人工知能の臨界点を指す言葉です。つまり、シンギュラリティとは、AI(人工知能)が人間の脳や知性と同等以上の知能をもつようになるタイミングのことを指しています。言い換えると、強いAIが誕生するタイミングが、シンギュラリティということです。
では、「2045年問題」とは、なんなのでしょうか?
この2045年問題とは、アメリカの発明家兼人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)が1990年ごろに、「シンギュラリティは2045年の到来する」と予測をたてたことからはじまっています。
実際に、2045年にAIが私たち人間の知性を超えた際に、私たち人類の想定をはるかに超えた多くの問題が発生する可能性が高いため、「2045年問題」と呼ばれています。
具体的には、「AI倫理」というカテゴリーでこの問題解決に向けて研究がされていますが、現時点で見えているシンギュラリティと2045年問題についていくつか紹介します。
・AIが起こした事故や事件の責任の所在がわからない問題
通常、人間が事件や事故を起こした場合には、加害者と被害者という関係性が明らかになりますが、仮にAIが事件や事故を起こした場合は、その責任は、AI開発者にあるのか?それともそのAI所有者にあるのか?などの責任の所在が複雑化するという問題があります。
・AIの人権問題
強いAIには、自意識が備わり、私たち人間の知性を超えるとされています。そうなった場合に、AI自らが人権を主張してきたり、人間がAIの人権を主張したりする可能性があります。AIに人権を認めるのか、認めないのかという問題が浮上します。
・AIによる差別や偏見に基づく行動の問題
通常、ほとんどの国で、人種や宗教、肌の色や性別で人を差別してはいけないという倫理観で世界は成り立っていますが、仮にAIがそのような差別を行った場合に、人間がどのようにしてAIに対処しなければいけないのかがわからないという問題があります。
「シンギュラリティ」についてもっと詳しく知りたい場合は、下記記事をご参照ください。
『シンギュラリティ(技術的特異点)とは?意味や社会への影響、2045年問題についてわかりやすく解説』
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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