シンギュラリティ(技術的特異点)とは?意味や社会への影響、2045年問題についてわかりやすく解説
シンギュラリティ(技術的特異点)とは?意味や社会への影響、2045年問題についてわかりやすく解説
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近年、人工知能(AI)の飛躍的な進化により、私たちの生活にも頻繁に関連するニュースが取り上げられるようになりました。将棋や囲碁などの特定の領域でも、人工知能(AI)が人間に勝利するという話題が盛んになりました。また、レイ・カーツワイル氏が提唱した「シンギュラリティ(技術的特異点)」という概念が、いわゆる2045年問題として注目を集めています。 最近、私たちはシンギュラリティ(技術的特異点)という言葉をよく耳にするようになりましたが、実際にその意味や社会への影響について詳しく説明できる人は少ないかもしれません。 この記事では、シンギュラリティ(技術的特異点)の意味や社会への影響などをわかりやすく紹介します。
目次
シンギュラリティ(技術的特異点)とは
ここでは、基本的なシンギュラリティの意味や提唱者、注目されている背景について紹介します。
「強いAI・弱いAI・汎用型AI・特化型AIの違い」についてもっと詳しく知りたい場合は、下記記事をご参照ください。
『強いAI・弱いAI・汎用型AI・特化型AIとは?それぞれ特徴と違いを紹介』
シンギュラリティ(技術的特異点)の意味
シンギュラリティ(singularity / 技術的特異点)とは、人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点のことです。
ただ、シンギュラリティ(singularity)という言葉は、元々「特異点」という意味で、数学や物理学などで用いられてきた専門用語でしたが、人工知能(AI)研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏が人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点のことを「シンギュラリティ(singularity)」と呼んだことで、シンギュラリティ(singularity)という言葉に「技術的特異点」や「人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点のこと」という意味がつきました。
シンギュラリティ(技術的特異点)の提唱者レイ・カーツワイル
シンギュラリティ(技術的特異点)の提唱者レイ・カーツワイル氏の生い立ちやシンギュラリティ(技術的特異点)が広がるきっかけについて紹介します。
レイ・カーツワイル氏は、ニューヨーク市にオーストリアから亡命したユダヤ系移民の子どもとして1948年2月12日にアメリカで生まれました。幼少の頃からコンピューターやプログラミングに触れ、マサチューセッツ工科大学在学中に起業し、その後は会社売却などの経験をしていました。
2005年『The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology』という論文の中で、シンギュラリティ(技術的特異点)という概念について言及したことがきっかけで世間にもこのシンギュラリティ(技術的特異点)という概念が広まるきっかけを作りました。
シンギュラリティ(技術的特異点)に注目が集まる理由
シンギュラリティ(技術的特異点)が、こんなにも世界中で議論されているのでしょうか?
それは、人工知能(AI)に対する「不安(ネガティブ)」と「期待(ポジティブ)」の2つの側面から考えることができます。
人工知能(AI)に対する「不安(ネガティブ)」の側面
不安(ネガティブ)な側面としてよく取り上げられるのが、「人工知能(AI)が人間の仕事を奪う」や「人工知能(AI)が人類を滅ぼす」という声です。
・「人工知能(AI)が人間の仕事を奪う」
・「人工知能(AI)が人類を滅ぼす」
また、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が2018年に行なった若者(高校生や大学・専門学校生)の「人工知能(AI)に対するイメージ調査」によると、約4割の若者が人工知能(AI)に対してネガティブなイメージを持っていることがわかりました。
人工知能(AI)に対する「期待(ポジティブ)」の側面
期待(ポジティブ)な側面としてよく取り上げられるのが、「仕事をする必要がなくなる」や「生活が快適になる」という声です。
・「仕事をする必要がなくなる」
・「生活が快適になる」
また、SMBCコンシューマーファイナンス株式会社が2018年に行なった若者(高校生や大学・専門学校生)の「人工知能(AI)に対するイメージ調査」によると、約6割の若者が人工知能(AI)に対してポジティブなイメージを持っていることがわかりました。
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(参考)【ポジティブorネガティブ?】イマドキ若者の4割がAI(人工知能)に不安を覚える!?|SMBCコンシューマーファイナンス(PRTIMES)
2045年問題とは(いつ起こるのか?いつ来るのか?起きない?来ない?)
シンギュラリティには、「いつ起こるのか?」「いつ来るのか?」という問いと、それに対する答えがいくつも存在します。
2045年問題とは、「シンギュラリティ(技術的特異点)」を提唱したレイ・カーツワイル氏が2045年頃にシンギュラリティ(技術的特異点)が起こると発言したことからシンギュラリティ(技術的特異点)が起こるタイミングのことを「2045年問題」と呼ぶようになりました。
このようにレイ・カーツワイル氏は、シンギュラリティ(技術的特異点)が起きる前提で話をしていますが、人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点であるシンギュラリティ(技術的特異点)がそもそも起きないだろうと考える人々もたくさんいます。
ここでは、代表的なシンギュラリティ肯定派の著名人とシンギュラリティ否定派の著名人を紹介します。
シンギュラリティ肯定派の著名人
レイ・カーツワイル
「シンギュラリティ(技術的特異点)」を提唱したレイ・カーツワイル氏は、2045年頃にシンギュラリティ(技術的特異点)が起こると発言しています。
ヴァーナー・ヴィンジ
アメリカの数学者兼SF作家であるヴァーナー・ヴィンジ氏は、シンギュラリティに関する小説やエッセイを数多く出版しており、『マイクロチップの魔術師(True Names)』はまさにそのシンギュラリティで発生するであろう出来事を数多く描いています。
スティーヴン・ホーキング
2018年に亡くなったイギリスの物理学者スティーヴン・ホーキング氏は「完全な人工知能の開発は、人類の終焉を意味するかもしれない」と、シンギュラリティの到来に対する危機感を示していました。
孫正義
ソフトバンクグループの創業者の孫正義氏は、シンギュラリティは人類史上最大の革命「ビッグバン」になるだろうと予測し、そのシンギュラリティによりすべての産業が新たに再定義されるだろうと主張しています。
シンギュラリティ否定派の著名人
ジェリー・カプラン
人工知能の権威でスタンフォード大学教授のジェリー・カプラン氏は、韓国・KAISTの主催で行われた特別講義「人工知能を再考する」(Artificial Intelligence:Think Again)に登壇し、「シンギュラリティーは来ない」と発言をしています。その中では、「人工知能は人間ではないので、人間と同じようには考えない」と前置きしつつ「ロボットには独立した目標および欲求がない」と指摘しました。つまり、ジェリー・カプラン氏は、人工知能(AI)は、人間のように目標や欲求を持たないので、人間を超えることはないと主張をしています。
マルクス・ガブリエル
ドイツの哲学者でボン大学教授のマルクス・ガブリエル氏は、「知性」は人間の非生物的、感覚的な部分であり、「知性」と人工知能は異なるため、シンギュラリティは到来しないだろうと予測をしています。
プレ・シンギュラリティとは
シンギュラリティ(技術的特異点)が起きる前に起こるとされているプレ・シンギュラリティについて紹介します。
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プレ・シンギュラリティの意味
プレ・シンギュラリティは、社会的特異点または、前特異点と訳されることが多く、シンギュラリティ(技術的特異点)が起きる前の段階で、起きるであろう様々な人間社会のシステム変化の転換点のことを指しています。
つまり、シンギュラリティの焦点は、人工知能(AI)についてですが、プレ・シンギュラリティの焦点は、人間社会についてです。
シンギュラリティ = 人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点
プレ・シンギュラリティ = シンギュラリティ(技術的特異点)が起きる前の段階で、起きるであろう様々な人間社会のシステム変化の転換点
そして、このプレ・シンギュラリティは2030年頃に起きるだろうとスーパーコンピュータ開発者で、次世代の汎用人工知能(AI)の研究者である齊藤元章氏が提唱している概念です。
では、このプレ・シンギュラリティで起きるであろう人間社会の変化とはどのようなものなのでしょうか?次の章で詳しく紹介します。
プレ・シンギュラリティが社会に与える影響
プレ・シンギュラリティで変化する人間社会の特に「人間のあり方や存在価値」「経済や社会」に関して、現在想定されている主な変化を紹介します。
人間のあり方や存在価値
・人間の体内に細菌よりももっと小さなナノボットを注入して健康管理をするようになる
・人間が働かなくても生活できるようになる
・これまで働くことに使っていた時間を好きなことややりたいことに使えるようになる
・人間の不老がなくなり、若返りも可能になる
・仮想現実(VR)世界が発展し、日々の生活が仮想現実(VR)世界中心になる
経済や社会
・物理的な貨幣(お札やコイン)がなくなる
・ベーシックインカムなどで生活に必要な最低限どのお金が政府から配られる
・生活必需品は政府から無償で配られる
・エネルギー問題が解決されて政府から無償で提供される
・世界中の食糧問題が解決する
・最低限度の衣食住は政府から無償で提供される
・戦争が起きないような仕組みができる
今の世界からは想像し難いような話が10年以内には、実現するだろうと、世界中の人々が期待を持っているのがおわかりいただけるのではないでしょうか?
では、実際にシンギュラリティ(技術的特異点)が起きた際に私たちの生活はどのような変化が起きるのでしょうか?次の章では、シンギュラリティが社会に与える影響について詳しく紹介します。
シンギュラリティが社会に与える影響
ここでは、シンギュラリティが社会に与える影響について主な「働き方・雇用の変化」「社会制度の変化」「人体の変化」という3つの変化に関して紹介します。
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働き方・雇用の変化
2030年頃に起こるとされているプレ・シンギュラリティ(社会的特異点)でも述べたように「人間が働かなくても生活できるようになる」というのが大きな変化です。
そして、2014年にイギリスのオックスフォード大学で准教授を務めるマイケル・A・オズボーン氏らが発表した論文した『雇用の未来 コンピューター化によって仕事は失われるのか(The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation?)』にて、米国労働省が定めた702の職業を事細かく分析し、米国の雇用者の47%が10年後には職を失うだろうと結論づけたことで大きな話題を呼んだのは記憶に新しいところです。
その論文の中では、以下のような職業は人工知能(AI)の発達により無くなる職業だと言われています。
・スポーツの審判
・レストラン、ラウンジ、カフェの従業員
・レジ係
・訪問販売員
・テレマーケター
・弁護士助手
・レストラン料理人
・一般的な事務員
・ネイリスト
など
確かに、もうすでに人工知能(AI)やロボットによって自動化されている仕事がいくつもあります。
また、以下のようなクリエイティブ性やホスピタリティ性の高い仕事に関しては、なくならないだろうと想定されています。
・警察
・教師
・栄養士
・歯科医師
・漫画家
・ダンサー
・ミュージシャン
など
(参考)THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?|University of Oxford
社会制度の変化
2030年頃に起こるとされているプレ・シンギュラリティ(社会的特異点)でも述べたように「ベーシックインカムなどで生活に必要な最低限どのお金が政府から配られる」「生活必需品は政府から無償で配られる」というのが大きな変化です。
社会制度が変化する前提として、人工知能(AI)やロボットにより多くの人々が仕事をしなくても良い世界が実現することで、貧富の格差が拡大するだろうという予測が立てられています。その貧富の格差を是正し、人々の平等を担保するために「ベーシックインカム」という制度が導入されるのではないかというのが大きな変化です。
実際に、このベーシックインカム制度は、ヨーロッパの国々を中心に実証実験がされているところです。具体的には、フィンランド、カナダ、スイス、イタリア、オランダ、ドイツが実証実験をしています。
しかし、現在のこの実証実験の結果はあまり役に立たないと言われることが多いです。なぜなら、ベーシックインカム制度の前提となる、人工知能(AI)やロボットが活躍を続け人間よりもよく働ける状況というのが作り出せておらず、実証実験も数ヶ月~数年単位という形で、一生働かなくても良い状況というのが作り出せていないからです。そのため、本当にシンギュラリティ(技術的特異点)が起きた時のデータ結果としては、使えないという見方をする方が多いです。
人体の変化
2030年頃に起こるとされているプレ・シンギュラリティ(社会的特異点)でも述べたように「人間の体内に細菌よりももっと小さなナノボットを注入して健康管理をするようになる」「人間の不老がなくなり、若返りも可能になる」「仮想現実(VR)世界が発展し、日々の生活が仮想現実(VR)世界中心になる」というのが大きな変化です。
さらに、近年では、不老だけではなく、不死を実現できるのではないか?という研究も進んでいます。この不死というのは、「肉体的な不死の実現」ではなく、「意識」を仮想現実(VR)にアップロードすることで不死を実現しようという話です。
「意識」を仮想現実(VR)にアップロードすることで不死を実現した世界を描いた作品がAmazonオリジナル作品の「UPLOAD」というドラマです。
シンギュラリティの実現可能性
最後に、シンギュラリティ(技術的特異点)の実現可能性について、シンギュラリティ提唱者たちが挙げている2つの法則「ムーアの法則」と「収穫加速の法則」を紹介します。
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ムーアの法則
ムーアの法則とは、半導体最大手の米インテルの共同創業者の1人であるゴードン・ムーア氏が1965年米「Electronics」誌で半導体技術の進歩について「半導体回路の集積密度は1年半 ~ 2年で2倍になる」と発表した法則のことです。
この法則が本当に有効であれば、この法則をテクノロジーの進化に応用して考えると、半導体の性能は指数関数的に向上し、近い将来にコンピューターが人類を凌駕する存在に取って代わるタイミングが必ず来るということです。
ただ、この法則の実現は、半導体がこれ以上小さくナノ化できないレベルに達すると、ムーアの法則自体は破綻すると言われています。
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(参考)Transistor-Count-over-time|Our World in Data
収穫加速の法則
前述した、ムーアの法則をテクノロジーの進化に応用して考えたのが、人工知能(AI)研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏です。
収穫加速の法則とは、1つの重要な発明は他の発明と結び付き、次の重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速することにより、科学技術は直線グラフ的ではなく指数関数的に進歩するという法則のことです。
つまり、いくつかのイノベーションが結びつくことで、新たなイノベーション創出スピードが加速し、指数関数的に進歩したその先に、シンギュラリティが実現するだろうと説明しています。
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IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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