生成AIによる橋梁診断支援、長崎県での実証実験で57%の作業時間削減を確認
生成AIによる橋梁診断支援、長崎県での実証実験で57%の作業時間削減を確認

この記事では、NTTコムウェア株式会社は、国立大学法人長崎大学、株式会社溝田設計事務所、公益財団法人長崎県建設技術研究センターが連携し実施した橋梁診断支援の実証実験について紹介しています。
目次
NTTコムウェア株式会社は、国立大学法人長崎大学、株式会社溝田設計事務所、公益財団法人長崎県建設技術研究センターと連携し、生成AIを活用した橋梁診断支援の実証実験を実施しました。本取り組みは、長崎県内の13橋梁を対象に、2025年4月から5月にかけて行われ、AIエージェントによる診断案の自動作成を通じて、診断作業の効率化と技術継承の有効性が確認されました。
背景:橋梁インフラの老朽化と人材不足の深刻化
国内では、全国に約73万ある橋梁のうち、2032年度までに約59%が建設後50年を超えるとされており、老朽化が深刻な課題となっています。5年ごとの定期点検が義務付けられている中、年間およそ15万橋に及ぶ診断作業には多数の技術者が必要とされます。
さらに、2024年に改訂された「道路橋定期点検要領」により、診断品質の均質化や根拠記録の詳細化が求められるようになり、技術者の負荷は一層増加しています。そうした背景から、AIによる支援を活用した業務効率化のニーズが高まっています。

技術概要:生成AIエージェントによる診断案の自動作成
実証で導入されたのは、NTTドコモが開発した生成AIベースのAIエージェントです。このエージェントは、橋梁点検調書に記載された構造情報、損傷種別、損傷程度、位置情報などの非構造化データを入力し、国交省の点検要領や実務における診断ノウハウを参照情報として学習済みです。
AIはこれらの情報をもとに、診断の要件を満たす調書フォーマットに沿って健全性評価と所見文のドラフト(診断案)を自動的に生成します。AIが生成する文面は、専門家が監修したデータセットに基づき評価・チューニングされており、定量的な損傷指標に加えて、表現の妥当性も高い水準で保たれています。

実証成果:診断時間57%削減と均質化によるコスト最適化の可能性
実証実験では、13橋梁に対してAIエージェントを適用し、1橋あたりの診断作業に要する時間が従来比で約57%削減されたことが確認されました。
さらに、生成された診断案と過去の調書とを比較した結果、診断のばらつきが抑えられたことから、診断品質の均質化にも効果があることが示唆されています。これにより、橋梁の補修判断における意思決定の一貫性が高まり、結果的に修繕コストの最適化につながる可能性が高いと評価されました。
また、技術者のスキルに依存せず一定水準の診断を可能にすることで、熟練技術者の知見を組織内に形式知化しやすくなり、技術継承と人材育成の側面でも有効性が認められました。
この実証は、橋梁診断の標準化・効率化に対するAI技術の具体的な有効性を実証した先進的な取り組みであり、今後の自治体や民間インフラ管理者によるAI活用の促進にも大きな影響を与えると見られます。
(参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000126160.html

IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。
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