IoT機器とは?仕組み・メリット、安全な通信環境(SIM・閉域網)まで徹底解説
IoT機器とは?仕組み・メリット、安全な通信環境(SIM・閉域網)まで徹底解説

本記事では、「IoT機器とは何か」という基本定義から、ビジネスにおける具体的な活用事例、導入メリット、そしてIoT機器を安心・安全に運用するための通信環境の選び方までを、詳しく解説します。
目次
IoT機器とは?定義と基本的な構成要素
IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略です。IoT機器とは、文字通り「センサーなどのデバイスとインターネットが繋がり、互いに情報を送受信できるようになったモノ」を指します。
従来の機器が単体で機能していたのに対し、IoT機器はインターネットを通じてデータが共有され、遠隔操作や自動分析が可能になる点が最大の特徴です。経済産業省の資料によれば、世界のIoT機器の数は2024年に399億台、2025年には440億台に達する見込みとされており、その普及スピードは加速し続けています。
国内においても、IoT市場は急拡大を続けています。国内のIoT市場におけるユーザー支出額は2025年には10兆円を超える規模に達すると予測されています。製造業やインフラ分野を中心に、あらゆる産業でIoT活用が進んでいる状況です。
IoTについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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具体的なIoT機器の使い道の例
IoT機器は、私たちの生活の身近な場所から、高度な産業分野まで幅広く活用されています。ビジネスにおいては、特に監視、計測、制御の3つの分野で大きな力を発揮します。
動態監視・映像伝送
遠隔地の建設現場のカメラ、トラック・バスのドライブレコーダー、店舗の防犯カメラなどが代表的な例です。リアルタイムで現場の状況を把握できるため、管理者が現地に赴かなくても適切な判断が下せるようになります。
スマート物流についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。 スマート物流(スマートロジスティクス)とは?意味や定義、メリット、活用事例を紹介
環境/設備計測
工場設備の温度・振動センサー、倉庫の在庫管理センサー、農業用水位センサー、ビルの空調や電力のスマートメーターなどが挙げられます。これらのセンサーは24時間365日休みなく稼働し、人の目が届かない場所のデータも正確に収集します。
スマートメーターについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
スマートメーターとは?特徴やメリット・デメリット、仕組み、見方を解説|IoTBiz
遠隔制御
自動運転車両、遠隔地にある機器の再起動・設定変更、スマートロック、ドローンなどが該当します。物理的に離れた場所からでも機器を操作できるため、緊急時の対応や定期的なメンテナンス作業の効率化に貢献します
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IoT機器を構成する「3つの要素」(デバイス、ネットワーク、クラウド)
IoTシステムは、以下の3つの要素が連携することで成り立っています。それぞれの役割を正しく理解することが、適切なIoT導入の第一歩となります。
デバイス(端末)
現場でデータを収集する「モノ」そのものです。センサー、カメラ、ルーターなどが該当します。デバイスは設置環境に応じて、耐熱性や防水性、耐振動性などの特性が求められることもあります。また、消費電力の少なさも、長期間の稼働が必要なIoT機器では重要な選定ポイントとなります。
ネットワーク(通信)
デバイスが取得したデータをクラウドに送り、クラウドからの制御命令をデバイスに届ける「道」の役割を果たします。Wi-Fi、有線LAN、そして携帯回線(SIM)などが使われます。特に屋外や移動体では、場所を選ばず通信できるモバイル回線(SIM)が重宝されています。通信の安定性と安全性は、IoTシステム全体の品質を左右する重要な要素です。
クラウド(アプリケーション)
収集されたデータを蓄積・分析し、遠隔からの指示を出す「頭脳」としての機能を担います。クラウド上でデータ処理や可視化が行われ、AIによる高度な分析や予測も可能になります。近年はエッジコンピューティングと組み合わせ、現場での一次処理とクラウドでの高度分析を使い分ける構成も増えています。
IoTの具体的な活用事例
IoTは気づかないだけで身近に沢山使われています。ここでは、IoTが実際に活用されている利用シーンを紹介します。
監視カメラ・ドライブレコーダーによる「映像データ」活用
高精細な映像をリアルタイムで遠隔地に送信し、状況把握やセキュリティ強化に役立てる利用法は、IoT活用の代表例といえます。
建設現場
現場の進捗確認や作業員の安全管理に活用されています。管理者が複数の現場を巡回する必要がなくなり、オフィスから一元的に状況を把握できます。危険作業の監視や、事故発生時の原因究明にも映像データは不可欠です。
物流
トラックの運行状況や、配送時の証拠映像の自動アップロードに利用されています。荷物の破損や紛失が発生した際の責任の所在を明確にするだけでなく、ドライバーの安全運転管理にも役立ちます。急ブレーキや危険運転を検知し、即座に管理者へ通知するシステムも普及しています。
店舗・オフィス
高度な入退室管理や、AIによる来店客分析などに活用されています。顔認証技術と組み合わせることで、セキュリティの強化と利便性の向上を両立させている事例も増えています。
映像データは容量が非常に大きいため、安定した大容量の「上り通信(アップロード)」を確保できる通信環境が必須となります。特にフルHDや4K映像を常時伝送する場合、一般的な通信回線では帯域が不足することも多く、専用の通信プランの選定が重要です。
製造業・インフラにおける「稼働状況・予知保全」
工場設備や社会インフラ(ダム、電力施設など)にセンサーを取り付け、常に稼働状況を監視するIoT活用も広がっています。
設備の振動・温度監視
機械設備にセンサーを取り付け、振動や温度の微細な変化を継続的に監視します。異常が発生する前に故障の予兆を検知し、計画的なメンテナンス(予知保全)に繋げることができます。これにより、突発的な設備停止を防ぎ、生産ラインの稼働率を最大化できます。従来の定期点検型のメンテナンスと比較して、保守コストの削減と設備寿命の延長が期待できます。
在庫・資材管理
倉庫内の資材の量を自動計測し、発注タイミングを最適化する活用法も一般的になっています。在庫切れによる生産停止リスクを低減しながら、過剰在庫による保管コストも抑制できます。重量センサーや画像認識技術を組み合わせることで、より精度の高い在庫管理が実現しています。
店舗・施設管理における「遠隔監視・スマート化」
建物や環境に関するデータを収集し、管理コストの最適化を図る取り組みも活発です。
スマートビル
空調、照明、エレベーターなどのエネルギー使用量を最適制御します。人感センサーと連動させることで、使用されていないエリアの空調や照明を自動的にオフにするなど、きめ細かな省エネ対策が可能です。エネルギーコストの削減だけでなく、カーボンニュートラルへの取り組みとしても注目されています。
環境管理
農場やビニールハウスの温度・湿度・土壌データを遠隔監視し、最適な環境を自動で維持します。熟練農家のノウハウをデータ化し、経験の浅い担当者でも高品質な作物を育てられる環境を整備する事例も増えています。畜産分野では、家畜の体調管理にIoTセンサーを活用し、疾病の早期発見に役立てるケースもあります。
IoT導入によるビジネス上のメリット
業務効率化・コスト削減
これまで人が行っていた「巡回」「点検」「記録」といったルーティン作業をIoT機器が代行することで、大幅な人件費の削減と効率化が実現します。例えば、遠隔地にある複数の設備を一人の担当者がオフィスから監視できるようになれば、移動時間や人員配置の最適化につながります。
また、エネルギーの使用状況を細かく把握・制御することで、電力コストの最適化にも貢献します。空調の自動制御だけでも、年間の電気代を10〜20%削減できたという事例は珍しくありません。
さらに、予知保全によるメンテナンスコストの削減効果も見逃せません。突発的な故障による緊急対応は、計画的なメンテナンスと比較して数倍のコストがかかることもあります。IoTによる常時監視で故障を未然に防ぐことで、こうした無駄なコストを削減できます。
データ活用による新たな付加価値創出と競争力強化
単なる効率化だけでなく、収集したデータを分析することで、新たな付加価値を生み出すことが可能です。
例えば、顧客の行動データを分析して新サービスの開発に活かしたり、製品の利用状況から次世代機の改善点を見つけたりすることができます。これまで「勘と経験」に頼っていた意思決定を、データに基づく客観的な判断に置き換えることで、より精度の高い経営判断が可能になります。
また、IoTで収集したデータを顧客に提供すること自体が新たなビジネスモデルになるケースもあります。例えば、農業向けのセンサーメーカーが、収集した気象・土壌データを分析し、最適な栽培方法をアドバイスするサービスを展開するといった事例が挙げられます。
IoT機器導入における主要な課題とリスク
セキュリティリスクの増大
IoT機器はインターネットに接続されるため、サイバー攻撃の対象となります。不審な通信のうちIoT機器を狙った攻撃が3分の1以上を占めるとされており、特に警戒が必要となります。
特に問題となるのが、従来のPCやサーバーと比較してセキュリティ対策が手薄になりがちな点です。IoT機器は設置後に管理が行き届かないケースも多く、ファームウェアのアップデートが放置されることも少なくありません。一度侵入されると、工場が停止したり、自社の機器がサイバー攻撃の「踏み台(ボットネット)」として悪用され、知らぬ間に加害者になってしまうリスクがあります。
通信コストと管理の複雑さ
一台一台は安価でも、数百、数千台の機器を導入した場合、それぞれの機器の通信コストや契約、通信状況の管理が非常に複雑になります。特に課題となりやすいのが、通信プランの最適化です。IoT機器の用途によって必要な通信量は大きく異なります。センサーデータのみを送信する機器と、高画質映像を常時アップロードするカメラでは、必要な通信容量に数百倍の差が生じることもあります。すべての機器に同じプランを適用すると、過剰なコストが発生するか、逆に通信量不足でサービス品質が低下する恐れがあります。
また、SIMカードの在庫管理や故障時の交換対応、各機器の通信状態の監視など、運用面での負荷も無視できません。導入後の運用コストと管理負荷を考慮に入れたソリューション選びが不可欠です。
安全かつ安定的なIoTを実現する通信の仕組みと選び方
デバイス側のセキュリティ対策に加え、安全な「ネットワーク」を選ぶことは、法人IoTの生命線です。適切な通信環境を選択することで、セキュリティリスクを大幅に低減しながら、安定したサービス品質を維持できます。
セキュリティレベルの高い「閉域網」
IoT機器を一般のインターネット回線に直接接続すると、常に世界中からの攻撃やスキャンにさらされることになります。これに対し、「閉域網」は契約者専用のプライベートネットワークであり、公衆インターネットからは隔離されています。
閉域網とは、不特定多数が利用できるインターネットとは物理的・論理的に分離された、特定の利用者のみがアクセスできるネットワークのことです。企業は閉域網を利用することで、第三者からの攻撃から守ることが可能になり、機密性の高いデータも安心して取り扱うことができます。
閉域網を利用することで、外部からの不正アクセス経路を根本から遮断し、セキュリティレベルを飛躍的に向上させることができます。ウイルス感染や不正侵入、情報漏洩といったリスクを回避しやすくなるため、金融機関や医療機関、製造業など、機密性の高いデータを扱う業種で特に重宝されています。
閉域網には「専用線」「IP-VPN」「広域イーサネット」などの種類があり、求めるセキュリティレベルやコスト、拠点数などに応じて最適な方式を選択することが重要です。
閉域網(VPN)について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください
閉域網とは何か?VPN・専用線との違い・使い分けを徹底解説|IoTBiz
IoT向けSIMの特徴
監視カメラやセンサーからデータをクラウドに送る通信(アップロード)は、「上り通信」と呼ばれます。IoT機器の多くは、データを「受信」するよりも「送信」する機会の方が圧倒的に多いという特徴があります。
一般的な利用では「下り通信(ダウンロード)」の方がよく使うため、通常のSIMプランでは下り通信の利用を前提とした料金設計になっています。
だから、ほとんど下り通信が必要ないIoT機器では、上り通信が中心のより安価なプランに軍配が上がるのです。
上り大容量SIMならIoTBiz
IoT機器のためのIoT用SIMなら1回線から始められるIoTBizがおすすめです。4キャリア100以上のプランから最適なプランをお選びいただきます。
特徴
1. 多彩なSIMカードプラン
DXHUBは、高品質な自社のドコモ網回線を中心に、さまざまな用途に合わせて多彩なSIMカードプランを提供しています。また、貴社の特別な要件に応じて、オリジナルプランの作成も可能です。さらに、幅広い特殊なSIMカードもご用意しており、低速のIoT向けSIMカード、高容量の上り専用SIMカード、夜間専用SIMカードなど、様々なニーズに対応いたします。
2. 4キャリアの貸し出しSIMテストサービス
4キャリア(ドコモ・ソフトバンク・KDDI・楽天)のIoT用SIMの貸し出しを行っており、既存の回線との比較検証や、導入前の事前確認が可能です。
3. 1回線からの導入可能
DXHUBでは、最低1回線からの導入に対応しており、他社では回線数の制約から断られることがあるかもしれませんが、当社ではほとんどの場合、1回線からの導入が可能です。お試し利用から始めていただくこともできます。
4. 最短翌日発送
当社の自社ドコモ網を利用する場合、SIMカードの出荷は自社オペレーションで行います。そのため、他社で1週間以上かかる場合でも、最短数営業日以内にスムーズな納品が可能です。ただし、初回の審査に数営業日、上りSIMなどの場合は数週間の納期を頂くことがありますので、ご了承ください。
5. 初回から売掛での支払い対応
DXHUBは決済代行会社と提携し、初回取引から売掛けでのお支払いが可能です。支払い方法も口座振替、銀行振込、コンビニ払いから選択できます。口座振替の場合、手数料は当社が負担するため、余分な費用がかかりません。また、年間払いや一括払いなど、さまざまな支払いオプションをご用意しており、お客様の要望に応じます。
詳細はこちら→IoTBiz
まとめ
IoT機器の導入は、企業の競争力を高めるために不可欠な戦略となっています。業務効率化やコスト削減といった直接的なメリットだけでなく、データ活用による新たな価値創出も期待できます。
一方で、その基盤となる「通信の安定性とセキュリティ」を確保することが成功の絶対条件です。世界中でIoT機器を狙ったサイバー攻撃が増加している現状を踏まえ、適切な対策を講じることが求められます。
特に法人利用においては、以下のポイントを押さえることが重要です。
- パスワードの変更やファームウェアの更新など、基本対策を徹底する。
- 大容量の上り通信を安定して提供できる通信手段を選ぶ。
- セキュリティリスクを低減できる閉域網やIoT SIMを活用する。
- 導入後の運用管理体制を事前に検討し、継続的な監視・保守を行う。
IoT導入を検討している企業は、まず自社の課題と目的を明確にし、それに適した機器と通信環境を選定することから始めてみてはいかがでしょうか。

IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。
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