スマートメーターとは?特徴やメリット・デメリット、仕組み、見方を解説
スマートメーターとは?特徴やメリット・デメリット、仕組み、見方を解説
日本において、人手不足や少子高齢化が進む中で、あらゆるモノがインターネットに接続されることで利便性が向上する「IoT」という考え方が急速に普及しています。「IoT化」は、仕事や生活においてよく触れる機器の注目の的ですが、気づかないうちに使用されている「電力メーター」も「スマートメーター」というIoT技術が導入されています。この記事では、電力会社が順次導入している「スマートメーター」の概要と特徴、そしてスマートメーターで使用されている通信の仕組みについて解説します。さらに、メリット・デメリットも含めて総合的にお伝えします。もしも「企業や家庭内で電力をリアルタイムに管理したい」と考えている方は、ぜひこの記事をご覧ください。
目次
スマートメーターとは
スマートメーターとは、電力使用量をデジタルで計測する電力量計を指します。
従来のアナログ型メーターとは異なり、デジタルで電力消費量(KWh)を測定してデータを管理することが可能です。
2016年4月1日以降から電力会社を自由に選択できる「電力自由化」がスタートしていますが、「電力自由化」になる前から大手電力会社が無料で順次、スマートメーターへの取り換えを進めています。
自身の家庭で契約した電力会社の電気代がどの程度掛かるのかをチェックする上でも、スマートメーターが活躍するのです。
スマートメーターの3つの特徴
アナログの電力メーターから、通信機能を兼ね備えた「スマートメーター」に切り替わることでどのような変化があるのでしょうか?
具体的に見ていきましょう。
データを遠隔地に送れるため、検診員が不要
スマートメーターに切り替えることで、電気利用状況を電子通信で送信することが可能になります。
アナログの電力メーターの際には、毎月決まったタイミングで検針員が自宅の電力メーターを確認して毎月の電気代請求が決まっていました。
スマートメーターに切り替えると、検針員が不要になるため人員コストの大幅な削減に繋がります。また、削減した人員を別の業務に割り当てるなど人材の流動性も生み出すのです。
スマート家電と連動させて、電気利用料を「見える化」できる
電気利用料を「見える化」するためには、「HEMS」という仕組みが大きく関わっています。
HEMSとは「Home Energy Management System」の略であり、「エアコン」「テレビ」「冷蔵庫」などの家電類はもちろんのこと、「電気・ガスメーター」「ヒートポンプ式給湯器」「蓄電池・燃料電池」「電気自動車」「太陽光発電システム」などあらゆるものを有線・無線でネットワーク化します。
ネットワーク化した機器を「HEMS」に接続することで、在宅時でなくても「スマートフォン」「パソコン」を介してエネルギー消費状況を管理できるのです。
家電などをインターネットに接続して「スマートハウス」にしていれば、遠隔で家電のON/OFFを切り替えるなど必要に応じた指示を出すこともできます。
近年は、国からも「電力利用量を抑える」呼びかけも行われており、HEMSの普及によってより効率的に電力を管理することが可能です。
細かい時間単位で、電力使用量を把握可能
前述したような「エネルギーの見える化」によって、機器ごとの省エネ指示を出すこと以外にも、電気を利用する細かな時間単位でも電力消費量の把握ができます。
電気料金は「深夜に家電を動かすと電気代が高い」など時間帯によって料金設定が変化するものです。
「スマートメーター」と「HEMS」を連携させることで、「料金単価の高い時間帯は家電の利用をセーブする」「料金単価の高い時間帯についてはエアコンの設定温度を調整する」などのコントロールを自動的に行うこともできます。
スマートメーターの通信の仕組み
「スマートメーター」導入によって、電子通信が可能となり、電力使用量データを集めることが容易になりました。しかし、実際に「スマートメーター」がどのような仕組みで通信しているのか知らない方は多いのではないでしょうか?
スマートメーターの通信で利用されている「マルチホップ通信方式」「携帯通信方式」「PLC通信方式」を取り上げて解説します。
マルチホップ通信方式の特徴
マルチホップ通信方式とは、隣接したスマートメーター同士がデータをバケツリレーしてコンセントレーターと呼ばれる集約装置までデータを運ぶ方式です。
コンセントレーター1台あたり、最大で1000台のスマートメーターを収容可能であり、高密度な住宅地では効率的な通信手段として採用されています。
もし、遮蔽物など物理的原因で通信不調を検知した場合には、最適な伝送経路を選択する機能も備えているのです。
コンセントレーターが故障した場合には、配下に設置されているスマートメーターは、近隣のコンセントレーターまでの経路を再構築することで通信途絶を回避するなど、トラブルが起きても柔軟に対応できます。
携帯通信方式の特徴
各スマートメーターが携帯基地局と直接データを通信する方式です。通信不調が発生した場合、常に最善の伝送経路を選択する仕組みについてはマルチホップ通信方式と変わりません。
通信事業者のサービスエリア内であれば、通信可能であるため、郊外・山間地などの居住エリアで採用される傾向が高いです。
回線速度・通信頻度は通信業者の契約形態に依存します。
PLC方式の特徴
PLC方式とは、マンション内の低圧電力線を使用して通信する方式です。
各戸の変圧器にPLCの親機を設置することで、検針データをクラウドに送信します。メーター内に実装されたPLC通信ユニットが各戸に設置されている機器とマルチホップ方式で通信を行うことで、ビルの高さに関係なく安定した伝送品質を保つことが可能です。
スマートメーターデータの流れ
具体的には、以下の流れでスマートメーターデータが伝送されていきます。
(1)Bルート(建物内→スマートメーター)
建物内に設置された機器とスマートメーターを結ぶ通信経路です。
建物内で利用した電気使用量などがスマートメーターに電子データとして送信されます。
(2)Aルート(スマートメーター→電力会社)
スマートメーターと電力会社を結んだ通信経路です。
前述した「マルチホップ通信方式」「携帯通信方式」「PLC方式」が通信方式として採用されており、電力会社がこの経路を活用して検針した値の情報取得から、スマートメーター本体の設定なども行います。
30分間隔で計測された積算電力測定値を利用して、電気代の料金計算にも活用されているのです。
(3)Cルート(電力会社→小売事業者・民間事業者)
Aルートを利用して電力会社が取得したデータを、第三者に提供するための通信経路です。
主に、2016年から電力小売に参入した小売電気事業者がこのルートを利用して、料金計算業務などを行います。
(参考)経済産業省 スマートメーターの導入促進に伴う課題と対応について
スマートメーターの2つのメリット
使用電力量をデジタル化して、電力会社と相互通信できるようになる「スマートメーター」導入によって、具体的に得られるメリットを紹介します。
アンペア数の変更がスムーズになる
電気代の料金構成は、10A〜60Aの契約アンペアによって設定される「基本料金」と、実際に使用した電力量に合わせた「利用料金」で構成されています。
「アンペア」とは、同時に利用できる電気量を表す単位を指しており、アンペアが大きいほど「ドライヤー」「電子ケトル」「電子レンジ」などを同時に利用してもブレーカーが落ちることなく利用可能になるのです。
従来のアナログ式電力メーターの場合は、電気使用量に変更があり、契約アンペア数を変えたい場合にはブレーカーボックス内のアンペアブレーカーの交換工事が必須でした。
スマートメーターのある住宅で契約アンペア数を変更する場合にはこの工事が不要。申込みするだけで電力会社が遠隔操作で契約アンペアを変更できるため、工事立ち会いなどの手間を省くことが可能です。
停電時の復旧が早い
従来は停電が発生した場合には、ブレーカーボックス内のアンペアブレーカーを上げる作業が必要でした。スマートメーターの場合は、アンペアブレーカーが内蔵されており、電力会社が遠隔で操作可能なため、ブレーカーを上げる作業が不要になります。
その他、ブレーカーが落ちた場合には、約10秒後に自動復旧する仕組みも備わっていることから操作の手間がありません。
スマートメーターの2つのデメリット
電力に関連する情報をデジタル化したことによって、デメリットもあります。
代表的なものを取り上げて見ていきましょう。
各家庭の生活パターンが想定しやすくなる
電力使用状況が電力会社に記録されるため、家族構成・生活パターンなどを推測されやすく、プライバシー侵害の危険性を感じる方も多いです。
その他、このような情報が漏れることで「自宅にいない時間」を統計的に割り出されることで、自宅への空き巣などに利用される可能性も十分に考えられます。
データ送受信におけるセキュリティ対策が必要
経済産業省が発表した「スマートメーター制度検討会 セキュリティ検討ワーキンググループ」の報告書では、「通信機能を用いて遠隔での検針や遠隔での供給開始・停止業務を行うことが可能となることに伴い、サイバー攻撃等を通じた、安定供給への支障(大規模停電のおそれ)、情報漏洩、料金誤請求、料金請求不能などのリスクがある」と記載しています。
(参考)経済産業省 「スマートメーター制度検討会 セキュリティ検討ワーキンググループ」報告書
データを送受信する上でのセキュリティ対策は、今以上に求められます。
スマートメーターの見方(読み方)
スマートメーターは、電力量がデジタル表示されており、これにより従来のアナログ式電力メーターに比べて非常にわかりやすくなっています。表示される数値の単位はkWhで、これはアナログメーターと同じ単位です。
さらに、スマートメーターには2つの電力量が表示されます。1つは電力の消費量を示し、もう1つは太陽光発電などで発電した余剰電力の売電量です。売電量を示す表示には液晶の右側に矢印があり、電力の使用量と売電量の表示が自動的に切り替わります。
スマートフォンなどとの連携がなくても、スマートメーターだけを使用して月ごとの電力消費量を簡単に把握することができます。矢印の表示がない数字から、前回のメーター検針時の数値を引くだけで簡単に確認できます。
自宅にスマートメーターが設置されているか確認する方法
スマートメーターの設置場所は、従来の電力メーターと同じです。異なるデザインの製品もいくつかありますが、スマートメーターは外観がすっきりとしており、数字がデジタル表示されているため、簡単に確認できます。
特にマンションなどの集合住宅では、電力会社が通知なしに交換する場合もあるので、自宅の電力メーターを確認してみることをおすすめします。
スマートメーターに切り替える方法
スマートメーターへの切り替えは、電力会社によって段階的に進行しています。通常、電力会社からの交換作業の通知を待つことになり、特別な手続きや費用はかかりません。ただし、電力会社からの通知を待つ前に優先的に交換を依頼できる場合もあるため、必要に応じて条件を確認することをお勧めします。
優先的に交換が行われるケースは、新築時、メーターの有効期限切れ、または電力会社の切り替え時などです。ほとんどの場合、立ち会いが不要で、通常は停電も発生しません。
まとめ
今回は「スマートメーター」に焦点を当てて、概要から特徴、通信方式の解説からメリット・デメリットまで総合的に解説しました。
「スマートメーター」導入によって、電力使用量を時系列でデータ化して「省エネ」に対する意識を高めながら、コスト削減にも繋がります。
その反面でデメリットもあるため、全体像を明確に理解した上で、効率的に「スマートメーター」を利用することが必要です。
(参考)【必見】スマートメーターとアナログメーターの違いを簡単解説
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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