LoRaWAN(ローラワン)とは? IoT向け無線通信規格の特徴、LoRaとの違い、技術、活用事例
LoRaWAN(ローラワン)とは? IoT向け無線通信規格の特徴、LoRaとの違い、技術、活用事例
IoTデバイスが無線通信を行う際に活用されるのがLPWAという技術です。LPWAには、「低消費電力」「長距離通信」という特徴があり、その中でも世界中で高い注目を集めているのが「LoRaWAN(ローラワン)」です。 本記事では、LoRaWAN(ローラワン)の特徴やLoRaとの違い、技術、活用事例などを紹介します。
目次
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LoRa(ローラ)とLoRaWAN(ローラワン)の違い
LoRa(ローラ)
LoRaとは、「Long Range」の略称で、フランスのサイクロ社(Cycleo)が開発した無線の周波数変調方式(データ↔︎電波への変換方式)のことです。文字通り、長距離での通信が可能で、自前で基地局が設置できる方式です。
※2012年にサイクロ社(Cycleo)は、米国セムテック社(Semtech)により買収されました。
LoRaWAN(ローラワン)
LoRaWANとは、この「LoRa」の変調方式を採用したネットワーク規格で、デバイスからゲートウェイまでの通信方式や制御方式を定めた仕様(プロトコル)のことをいいます。
LoRaWANの「WAN」とは、「Wide Area Network」を意味し、LoRaWANを繋げると「Long Range Wide Area Network」となります。日本語に直訳すると「長距離広域ネットワーク」という意味です。
また、このLoRaWANは、「LoRa Alliance」というオープンな非営利団体で仕様が策定され、オープンソースとして公開されています。このLoRa Allianceは、2015年に設立されてから、テクノロジー分野において最大級で最も急速に成長しているアライアンスの1つになっています。
※LoRa Alliance会員の日本企業一例
Sponsor(スポンサー)
・Actility S.A.
・STマイクロエレクトロニクス株式会社
・カーリンクジャパン株式会社
・シスコシステムズ合同会社
・セムテック ジャパン合同会社
Contributor(コントリビュータ)
・センスウェイ株式会社
・ネクストフィールド株式会社
・株式会社村田製作所
・日本電気株式会社
・日本電信電話株式会社
Adopter(アダプター)
・Automagi株式会社
・SMK株式会社
・TDK株式会社
・横河電機株式会社
・沖電気工業株式会社
・株式会社ACCESS
・株式会社グリーンハウス
・株式会社マクニカ
・菱電商事株式会社
LoRa・LoRaWAN以外のLPWA(LPWAN)
LPWA(LPWAN)とは、"Low Power Wide Area(Low Power Wide Area Network)"の略であり、低消費電力で遠距離通信を実現するデータ通信方式または無線通信技術のことです。LoRa・LoRaWANもLPWA(LPWAN)の1つです。
LPWA(LPWAN)は、主に5つの特徴があります。
1つ目の特徴は、広範囲・遠距離通信です。LPWAは全国的及び国際的な広範囲に通信を提供することができ、10km以上の長距離通信も実現可能です。この特性は都市や地下など多様なユースケースをサポートするのに役立ちます。
2つ目の特徴は、低消費電力です。従来の通信方式よりもIoTデバイスの消費電力を大幅に削減し、長時間の稼働を可能にしました。特にLPWAを採用し、小型フォームファクタバッテリーを使用すると、複数年間の連続動作が実現できる場合もあります。
3つ目の特徴は、低速度の通信です。LPWAは、3G・4G・5GやWi-Fiに比べて通信速度が低いため、大容量データの高速伝送には適していません。しかし、IoTデバイスが小さなデータのやり取りに適しているため、これらの制約は問題とされません。
4つ目の特徴は、低コストです。消費電力や通信容量が制約されているため、IoTデバイス自体の機能を簡略化できます。これにより、IoTデバイスの製造コストが低く抑えられ、大規模なデプロイメントにも費用対効果が高まります。
最後の5つ目の特徴は、複数デバイスの同時接続性が優れていることです。LPWAは大量のIoTデバイスやM2Mデバイスを同時に接続しても、安定性を損なうことなく接続が続けられるため、スケーラビリティに優れています。これは、IoTの成長に伴ってますます重要な特性となっています。
LoRa・LoRaWAN以外の主要なLPWA(LPWAN)は以下です。
・LTE-M(LTE Cat.M1)
・NB-IoT
・ZETA
・Sigfox
・ELTRES
・Wi-SUN
「LPWA(LPWAN)」について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
『LPWA(LPWAN)とは?特徴や種類ごとの比較、周波数、メリット・デメリットを紹介』
LoRaWANの3つの特徴
①消費電力が少ない
LoRaWANの1つ目の特徴は、「消費電力が少ない」という点です。
LoRaWANは、エンドデバイスにより消費電力が多少異なりますが、送受信速度が早く、ほかの通信規格に比べて消費電力が少ないため、メンテナンス回数も抑えることができます。また、ボタン電池1つの電力で双方向通信ができるほど消費電力が少なく、そのバッテリーは、連続稼働をしても10年間以上は稼働することができるとも言われています。
②長距離通信ができる
LoRaWANの2つ目の特徴は、「長距離通信ができる」という点です。
スマートフォン(3G以降)などで利用されている800MHz帯で届く距離は、約2~5kmと言われますが、LoRaWANでは、約10kmと倍以上の距離に通信することが可能です。
また、センスウェイ株式会社が行なった性能実証実験では、富士山の五合目から千葉県柏市の柏の葉キャンパスの基地局まで約123.43kmのデータ送信に成功しています。
(参考)性能実証 | センスウェイ株式会社
このように、障害物がほとんどないような場所では、10km以上の通信をすることが可能ですが、業務に利用する場合、市街地であれば約3〜5km、障害物がある屋内などの場合であれば、約1kmと想定しておくと良いでしょう。
③ノイズに強く通信が安定する
LoRaWANの3つ目の特徴は、「ノイズに強く通信が安定する」という点です。
LoRaWANが利用している920MHz帯は、他の無線ネットワークが存在している環境下でも、電波同時の干渉が起きにくく、通信の遅延時間(レイテンシ)を抑え、安定的に通信を行なうことが可能です。そのため、工場施設内や屋内でも、安心して活用することができます。
LoRaWANの技術
LoRaWANの周波数帯・通信速度
日本では、920MHz帯(920MHz-928MHz)の周波数帯を使用しています。また、LoRaWANは、アンライセンスバンド(アンライセンス系)のため、基地局の設置を自由に行うことができます。
LoRaWANの通信速度は、250bps〜50kbps程度と言われています。
LoRaWANに必要な機器と導入手順
LoRaWANを導入するには、「IoTデバイス(エンドデバイス)」「IoTゲートウェイ」「ネットワークサーバー」「アプリケーションシステム」の4つを準備し、システムを構築する必要があります。
<必要な機器>
・IoTデバイス(エンドデバイス)
・IoTゲートウェイ
・ネットワークサーバー
・アプリケーションシステム
LoRaWANを導入し、ビジネスに活用するためには下記3つのような手順が必要になります。
<導入手順>
①LoRaWANに対応したIoTデバイスを準備
②IoTゲートウェイの設置
③ネットワークサーバとアプリケーションシステムを連携
LoRaWANの活用事例
スマートシティ|LoRaWAN × NTTビジネスソリューションズ × 福岡県福岡市
福岡県福岡市による施策のもと、大規模なIoTネットワーク環境を構築する構想「Fukuoka City LoRaWAN®」にもLoRaWAN回線が利用されています。
(参考)Fukuoka City LoRaWAN®|NTTビジネスソリューションズ
熱中症リスク管理|LoRaWAN × センスウェイ × ESR
施設で働く人の熱中症リスクを可視化する「ESR環境モニタリングシステム」の中でもLoRaWANを活用しています。
(参考)【ESR株式会社】「人」を中心に考えた熱中症リスク管理システム~100個以上のLoRaWANセンサーで物流施設の温度湿度管理を実現|センスウェイ株式会社
スマートシティ|LoRaWAN × 日本電気株式会社 × 富山県富山市
富山県富山市は、人口減少と高齢化社会への対応をするため持続可能なコンパクトシティ形成を推進していますが、このコンパクトシティ戦略・スマートシティ戦略にもLoRaWANが活用されています。
(参考)富山市のコンパクトシティと戦略とは? ~人口減少時代の優等生のスマートシティ戦略~|wisdom
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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