IoTスマートゴミ箱とは?特徴やメリット、仕組み、事例などを紹介
IoTスマートゴミ箱とは?特徴やメリット、仕組み、事例などを紹介
日本では、「少子高齢化」「労働人口減少」といった課題に直面しており、これらを解決する手段として「IoT(Internet of Things)」が急速に普及しています。IoTは、仕事や家庭においてさまざまなモノをインターネットに接続することで利便性を向上させる技術です。近年、外出先でも「IoT製品」を目にすることが増え、特に「IoTスマートゴミ箱」が注目を集めています。この記事では、そんな「IoTスマートゴミ箱」の概要や特徴、さらにメリットとデメリットについて詳しく解説します。また、現在の活用事例についても総合的に取り上げます。
目次
IoTスマートゴミ箱とは
「街中」「公共施設内」などに設置しているゴミ箱にIoT技術を取り入れることで、効率化を図った製品が「IoTスマートゴミ箱」です。
環境省の発表によると、2025年の一般廃棄処分量を1,300万トンにすることを目標にしており、2000年度の約5,600万トンからおおむね8割以上減を目指しています。
2018年度の最終処分量は、約1,310万トンのため目標を達成できそうですが、「人手不足」「少子高齢化」などもあり、より廃棄量を減らすために「IoTスマートゴミ箱」が広がっています。
(参考)環境省 第一節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状
IoTスマートゴミ箱の特徴
日本ではフォーステック社が展開しているIoTスマートゴミ箱「SmaGo」の場合、米国のニューヨーク、フランスなど世界50カ国以上の自治体で導入されており、日本にも2020年に上陸しました。
しかし、「ゴミ箱」に「IoT」を組み合わせたことでどのような特徴が生まれるのかイメージできない方も多いのではないでしょうか?
次に、IoTスマートゴミ箱の特徴を見ていきましょう。
環境に配慮した電力で動作する
「SmaGo」の場合、ゴミ箱の上部に設置されているソーラーパネルで発電して、電力を自給自足で賄います。環境のことを最優先に考えられた設計となっており、注目を集めています。
ゴミを自動で圧縮する
実際にゴミ箱内にゴミが蓄積されていくと、内部のセンサーが容量を感知して、いっぱいになると自動的にゴミを圧縮する機能を備えています。
「SmaGo」のゴミ箱容量は約125Lですが、圧縮後は約600Lまで回収が可能になり、回収頻度を軽減する効果を生み出すのです。
通信機能でゴミの量を管理・分析できる
クラウドと連携することで、設置されているゴミ箱の現在の容量、統計などを情報としてリアルタイムに管理・分析が可能です。
情報を収集することで最適な収集ルートを自動で算出することも可能になり、ゴミ回収業者の負担も軽減されます。
IoTスマートゴミ箱の仕組み
IoTスマートゴミ箱は以下のような仕組みで運用されています。
(1)スマートゴミ箱にゴミが捨てられる
※蓄積状況をセンサーで管理しており、一定容量を超えると圧縮する
※常時ソーラー発電して、電力を自給自足で賄う
(2)ゴミ箱の状況をクラウドに送信
(現在のゴミ容量・扉の開閉回数などの統計情報)
(3)ゴミ箱側の情報を活用して管理・分析
※ゴミ回収状況をチェックしながら、最適な回収ルートを決める
※「日別」「曜日別」「月別」でのゴミ蓄積状況レポートを確認して、ゴミが多い地域への設置案策定に役立つ
(4)本部からの指示で「ごみ回収車」が「ごみ回収」する
IoTスマートゴミ箱のメリット・デメリット
ゴミ箱にIoTを導入することで、どのようなメリット・デメリットが生まれるのでしょうか?
以下で具体的に解説します。
メリット
スペイン バルセロナの例では、日本と違って巨大なゴミ箱が道路に設置されており、定期的に大型トラックが回収している状況でした。
ただ、回収作業中に道路を塞いでしまうことと、多くのゴミ箱を回る必要がある収集業務負荷の高さも問題だったのです。
ゴミ箱センサーを搭載することで、ゴミが溜まったものに絞って回収が可能になるため、回収業務負荷の軽減に繋がっています。
デメリット
一般的なゴミ箱に「通信機能」を搭載していることから、導入する上での初期費用は高額になります。「IoTスマートゴミ箱」から送信される統計データを参考にしながら、需要の高い場所への設置を行いながら、効果的に広げていく必要があるのです。
IoTスマートゴミ箱とこれまでのゴミ箱の違い
「IoTスマートゴミ箱」と「一般的なゴミ箱」ではどのような違いがあるのでしょうか?
いくつかある中で、より代表的なものを3つ取り上げて解説します。
人員コストの削減
アメリカ・フィラデルフィア市の例では導入前、市内のゴミ箱700個の回収を33人が持ち回り、週単位で17回の回収を実施していました。
全体の500個を「IoTスマートゴミ箱」に置き換えた結果、以下のようなコスト削減に繋がりました。
・ゴミを回収する回数:週17回→週3回
・ゴミ収集を行う人数:33人→9人
・ゴミ収集のシフト数:3シフト→1シフト
・年間コスト:230万ドル→72万ドル
上記のように、「IoTスマートゴミ箱」を導入することで人員コストの削減が期待できます。
導入費用の違い
一般的なゴミ箱と比較しても、通信機能・自家発電機能を備えている「IoTスマートゴミ箱」の費用が割高になります。
初期費用の兼ね合いで大量導入ができないことから、多くのゴミが捨てられるエリアには、一般的なゴミ箱を並行して置くなどの対応も必要です。
メンテナンスの必要性
通信機能を兼ね備えている「IoTスマートゴミ箱」はシステム的なメンテナンスも必要になります。
一般的なゴミ箱はシステムメンテナンスが不要であるため、ゴミ箱利用が多いエリアでは上手く使い分けることが必要です。
IoTスマートゴミ箱と自治体・企業の取り組み
最後にIoTスマートゴミ箱に関連した自治体・企業の取り組みを紹介します。
表参道
「森永製菓株式会社」「商店街振興組合原宿表参道襷会」「株式会社フォーステック」の3社が協力して、2022年10月8日より、表参道沿いに34台の「IoTスマートゴミ箱」を設置して、日本で初めて正式運用がスタートしました。
日本で初めての「IoTスマートゴミ箱」導入であり、日本でも多くの人が集まる表参道で導入されたことで、ここでの結果が今後の日本での「IoTスマートゴミ箱」の広がりに関わってきます。
神戸市
「株式会社フォーステック」「神戸市」が協働して、「IoTスマートごみ箱」を三宮フラワーロードに設置している一般ゴミ箱と入れ替えて、ポイ捨て防止に向けた実証実験を令和4年10月からスタートさせました。
スマートごみ箱本体を広告スペースとして活用して、広告収入をスマートゴミ箱の設置費用・維持管理費に充当する仕組みを取り入れることで、費用負担を軽減しています。
(参考)神戸市が、IoTスマートゴミ箱「SmaGO(スマゴ)」を活用し、ごみの「ぽい捨て防止」に向けた実証実験を10月7日より開始!|株式会社フォーステックのプレスリリース
広島県
2022年10月25日から「カルビー株式会社」「広島市」「尾道市」「広島電鉄株式会社」「株式会社KDDI総合研究所」の協力で県内4地点・計12台の「IoTスマートゴミ箱」を設置しました。
広島県とカルビーでは、2022年5月に包括連携協定を締結して、環境対策等の地域課題解決に向けた取り組みを進めており、その一環として「IoTスマートゴミ箱」が採用されています。
(参考)中四国初!海洋プラごみ削減に向けた新プロジェクト始動!IoT 技術を活用した「スマートごみ箱“SmaGO”」運用開始!|株式会社フォーステックのプレスリリース
まとめ
今回は、「IoTスマートゴミ箱」を取り上げて、概要から仕組み、具体的な導入事例などを解説してきました。
「IoTスマートごみ箱」を利用することで、ごみ回収の統計をクラウド上に蓄積することで最適な回収ルートを決定し、人的コストの削減にも貢献します。
その反面、初期費用の高さなども導入に向けた大きな壁になっているため、全体を把握した上で、導入を検討することが必要です。
IoTBiz編集部
2015年から通信・SIM・IoT関連の事業を手掛けるDXHUB株式会社のビジネスを加速させるIoTメディア「IoTBiz」編集部です。 DXHUB株式会社 https://dxhub.co.jp/ 京都本社 〒600-8815 京都府京都市下京区中堂寺粟田町93番地KRP6号館2F 東京オフィス 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-25-5 BIZ SMART代々木 307号室
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